年長社員の常識・若手社員の困惑…「日本的経営」の本質って?

軽妙なコラムで多数のファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、経済初心者のための超入門講座を開講! 今回は「日本的経営」にまつわる用語を解説します。「日本的経営」とは、日本の経営慣行を指す言葉です。古臭い過去のものといったイメージですが、実はいまだに日本の会社に残っている慣習もありますから、理解しておいて損はありませんよ。

経営者=株主の利益のための労働を運命づけられた人

株式会社に関する法律は、日本も米国もそれほど変わりません。法律上は株主が金儲けのために作ったのが株式会社であり、経営者は株主の利益のために働くことになっています。

 

米国企業は、法律どおりに株主の利益を最大化することを目指しています。最近になって、「従業員等々の利益も重要だ」といった宣言をする経営者が出てきましたが、これは逆にいえば、宣言しなければいけないほど株主の利益だけを追求している、ということですね。

 

日本でも、中小企業のオーナー社長のなかには自分の利益の追求を最大の目的としている人も多いようですが、多くの大企業はそうではありません。

グローバルスタンダード=「米国的やり方にならえ!」

「従業員主権」という言葉があります。会社は従業員のためのものだ、という考え方です。具体的には、従業員が集まって、その代表が会社を経営し、従業員に仕事を確保して給料を確実に払うこと会社の最大の目的だ、ということです。

 

バブルのころまでは、日本の大企業の経営者で「株主のために」と考えていた人はまれだったと思います。「株主というのは、会社を作ったときに金を出してくれた人だから、感謝の気持ちを込めて、出してくれた金額の数%の御礼、じゃなかった、配当を毎年払ってあげよう」といった感じだったと思います。

 

その後、バブルが崩壊して日本経済が低迷する一方で、米国経済は元気がよかったため、日本企業も米国的なやり方をまねるべきだ、という考え方(グローバル・スタンダードと呼びます)が広がりました。

 

その影響で、最近では「儲かったら株主への配当を増やそう」と考える企業が増えましたが、それでも日本的経営の本質は変わっていません。

 

日本企業の特徴としては、「終身雇用」「年功序列賃金」「企業別組合」という日本的雇用慣行が挙げられます。

正社員=犯罪でもやらかさない限り解雇できない存在

終身雇用というのは、学校を卒業して会社(役所等を含む。以下同様)に就職すると、原則として定年まで同じ会社に勤める、という制度です。会社は、原則として中途採用はせず、新卒採用者だけで構成されています。

 

そして正社員については「よほどの事情」がない限り、解雇してはならないのです。よほどの事情とは、従業員が罪を犯した場合や、会社が倒産寸前の場合などですね。

 

もっとも、パートアルバイト等については、まったく終身雇用とは異なっています。会社が雇いたいときだけ雇う、働くほうも働きたいときだけ働く、というわけですね。

 

ちなみに中小企業については、それほどしっかり終身雇用が守られているわけでもないようですが、それでも米国等とくらべると、はるかに終身雇用に近いといっていいでしょう。

 

卒業後、新卒として入社したら定年まで勤務
能力や仕事の成果に基づいた給料は、インセンティブが高いものの…

 

「年功序列賃金」とは、社員の能力等による給料の差は小さくして、勤続年数が長くなると給料が上がっていくようにする、ということです。能力や仕事の成果に基づいて給料を決める制度のほうが、人々が真面目に働くインセンティブになるわけですが、一方で社内の協力関係が築きにくく、社内の雰囲気がギスギスする、といったデメリットもあるようです。

 

「企業別労働組合」というのは、会社ごとに労働組合があり、各社ごとに賃金等の交渉をする、ということです。そうなると、無理な賃上げを要求しすぎて会社が傾いてしまう心配がないので、会社が発展し、長い目でみれば従業員のメリットにもなる、ということですね。

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

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