ライフスタイルに合わせたレンズが選べる「多焦点白内障手術」

白内障手術には、眼科医が手動で行う手術と、レーザーによる手術の2種類が存在します。今回は、『「見える」を取り戻す白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、なぜ高齢者の方の手術には「多焦点レンズ」がオススメだといえるのか、その理由を解説します。

「多焦点レンズ」は、目の若返りを実現できる

白内障手術におけるレンズ選択の際、「年配になってからの手術なら、もともと目の機能は低下しているわけだし、単焦点眼内レンズでもいいのでは」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません(参照記事:白内障手術…多焦点レンズと単焦点レンズ、それぞれの特徴)。

 

たしかに「毎日を室内で過ごすことが多く手元だけにピントが合えば十分」、あるいは「手元を見るときには今まで通り老眼鏡を使うので、遠くだけクリアに見えるようになればいい」と考えるのであれば単焦点眼内レンズでもいいかもしれません。ただ、眼科医が、高齢なんだから生活に困らないくらい見えれば良いのだから単焦点眼内レンズで十分だとひとくくりに考える風潮があるのは残念です。

 

最近のシニア世代の方は非常にアクティブです。これからも思いっきりスポーツを楽しみたい、国内外の旅行へ出かけたい、年齢を重ねるにつれ諦めていた趣味を復活させたい、などとお考えの方も多いのではないでしょうか。特に白内障になる前は、非常にアクティブに過ごされていた方にとって、以前のような生活をまた楽しみたいと考えることは当たり前のことだと思います。

 

そうしたアクティブに、やりたいことに挑戦したいとお考えの方こそ多焦点眼内レンズをお選びいただきたいと思います。

 

多焦点眼内レンズは、遠方、中間距離、近方という広い範囲にピントが合い、メガネのかけ外しや、コンタクトレンズの煩わしさからも解放されます。そう、近視、乱視はもちろん、老眼まで治し、快適なメガネ無しの見え方を追求するのが多焦点眼内レンズを用いた白内障手術なのです。

 

2020年4月から多焦点眼内レンズが先進医療から選定療養に移行します。これにより、白内障手術を受ける患者さんは、誰もが単焦点にするか多焦点にするか一度は考えて選択する時代に入ります。入院で大部屋にしますか、個室にしますかと問われるのと同じです。医師の側も多焦点眼内レンズという選択肢があることをきちんと説明する義務が生じてきます。

 

眼内レンズを選択することは、これからの人生を、どのように生きたいのか、楽しみたいかを選ぶことと同意義です。ぜひ、主治医から十分な情報を得て、ご自分の今後に合った眼内レンズをお選びください。

車を運転するなら多焦点レンズがオススメ

車の運転では基本遠くを見ていますが、スピードメーター、ガソリン残量表示計などのパネルを時々チラ見します。慣れない行き先ではナビにお世話になります。これらは50〜80センチくらいにありますので、中間距離ということになります。

 

運転中にパネルやナビを見るときだけメガネをかけるのは危険です。車の外を見ているとき、道路標識はさまざまな距離に存在しますし、横断歩道を歩く子供は2〜5メートルくらいです。すなわち、安全な運転のためには50センチから遠方が、どこもはっきりと見えることが重要なのです。

 

「私は特に、スポーツも旅行も好きじゃないけど……」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、毎日の生活では、スーパーにお買い物に出かけたり、バスに乗ったりというシーンがあります。

 

散歩に出かけたとき、遠くのものを見ながら近くの障害物などを確認するようなシーンはとても多いと思います。そんなとき多焦点眼内レンズでしたら、近くの自転車など障害物もよく見えますし、少し前の方を歩いている人も、遠くの建物もくっきり見ることができます。わざわざ遠くや手元を見るために、眼鏡を取り出す必要がなくなるのです。

 

[図表]眼内レンズによる見え方の違い

 

バスの経路図を確認したり、時刻表を見たりということは日常生活では頻繁にありますが、多焦点眼内レンズでしたら経路図もしっかり見ることができ、遠くからバスが来ているかどうかもクリアに視認することができます。バスの乗り降りの段差もよく見えますので安全に乗り降りできます。

 

日常生活でも、遠方、中間距離、近方の3距離の焦点を、瞬時にいったり来たりしながらものを見ていることがわかります。お掃除の時は、手元を拭きながら、離れたところが汚れていないか見ますよね。多焦点眼内レンズなら、メガネの付け外しをしなくても、こうした瞬時の、いったり来たりが楽々できてしまうのです。

 

白内障や老眼、近視、乱視などで低下していたものを見る力を取り戻すことは、人が人らしく生きるためのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)をよみがえらせることでもあるのです。

 

遠方、中間距離、近方の3距離の焦点を、瞬時にいったり来たりしながらものを見ている
日常生活では遠方、中間距離、近方の3距離の焦点を、瞬時にいったり来たりしてものを見ている

高齢になるほど「足元の安全」が重要に

実は高齢になるほど、明視域が広い方が生活を送る上で安全なのです。明視域とははっきり見える奥行きの広さのことです。

 

まず大切なのは足元がよく見えることです。特に、段差のあるところ、バスの乗り降りのステップ、駅の階段などです。徐々に見えにくくなっても、これまでの経験と勘で、なんとなくうまくやっているのですが、体調が悪くなったり、筋力の衰えで思うように手足が動かなかったりしたときに、足元の見えにくさが重なって不用意な転倒が起きてしまいます。転倒はねたきりの最大の原因です。

 

転倒を防ぐには、「足元がはっきり見えること」と「手足が思うように動く筋肉を維持すること」が大事です。最近では高齢の方が自宅でできる筋力トレーニングが推奨されています。目も白内障という障害を手術で治してよく見えて安全なお暮らしをお願いしたいと思います。

 

その際に、明視域の広い多焦点眼内レンズを選び中間距離から遠くがはっきり見えるようにすることをお勧めしています。駅で階段を降りるとき足元と階段の下の方を交互に見ます。歩道を歩くとき足元と向こうから来る自転車など障害物がよく見える必要があります。逆に、自転車に乗る高齢の方もいらっしゃいますが、足元と向こうの歩行者や自動車がよく見える必要があります。

 

運転する際は、いろんな距離をはっきり見えるようにしておく必要がある
安全運転の基本は「明視域が広い視界」

 

さらには、地域によっては高齢でも生活に自動車が欠かせないことが多く、その場合安全運転の基本は明視域が広い視界なのです。広く見えると言うことが安全の基本だということを強調したいです。

 

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
▼多焦点白内障手術 無料個別相談会 開催中!▼
https://hangai.org/cataract-seminar/

著者紹介

連載近くも、遠くも、快適に…「見える」を取り戻す白内障手術

「見える」を取り戻す白内障手術

「見える」を取り戻す白内障手術

板谷 正紀

幻冬舎

レーザー白内障手術は、安全・快適・短時間に「見えない」という病気状態を解決し、「見える」を取り戻し、さらに快適に見えるを手に入れるまでに進化しました。この本では、進化した多焦点レンズ、レーザー白内障手術の最新情…