白内障手術…「多焦点レンズ」と「単焦点レンズ」の違いは?

白内障手術には、眼科医が手動で行う手術と、レーザーによる手術の2種類が存在します。今回は、『「見える」を取り戻す白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、白内障手術における「単焦点レンズ」と「多焦点レンズ」の違いを解説します。

人は遠方、中間、近方に焦点を合わせて生活している

眼内レンズをどう選ぶべきなのか説明する前に、人は生活のなかでどのようにものを見ているかということをお話ししたいと思います。

 

人は、遠方、中間、近方(手元)の3つに焦点を合わせて生活しています。遠方とは3メートルより遠くにある景色など、中間距離は50センチ〜1メートルくらいのところにあるパソコンなど、近方とは30〜40センチくらいのところにある本や書類などをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。

 

[図表1]遠方、中間、近方

 

この3つは、目のピントにとっては全くの別世界で、3つの世界を自由自在にピントを合わせられるというのは、人体の神秘以外のなにものでもありません。

 

水晶体はグミのような弾力性があり、水晶体の厚みを変えるための筋肉(毛様体筋)が元気な若い頃は、こつの世界のどこでも瞬時にピントを合わせることができます。柔軟な調節力があるからです。

 

[図表2]目の調整のしくみ

調節力が低下すると「できないこと」が増えてしまう

しかし中高年になると、そうはいきません。毛様体筋が衰え、水晶体が硬くなってしまいます。3つの世界のうち1つにしかピントが合わなくなっていき、例えば遠くがよく見えるときには、老眼鏡や遠近両用メガネがないと手元のものがはっきりと見えなくなります。

 

「メガネをかければ、なんとかなるのでしょ?」と思う人がいるでしょうが、実生活では「遠くと手元」「遠くと中間距離」「中間距離と手元」を、ほとんど同時に見ないと困ることが多いのです。

 

たとえば車の運転では、中間距離にあるカーナビや計器類をチェックしながら、すぐに遠方にもピントが合わせられないと安全に運転ができません。講演会なども前方に映し出されるスライドを見ながら、手元に配られた小さな字で書かれた資料に目を通すスタイルが多いので、目の調節力が落ちてくると前方のスライドと手元の資料を交互に見ることが難しくなります。ゴルフやテニスなどの球技、写真撮影や風景画の描写などの芸術なども同様です。こうした例を挙げたらきりがありません。

 

人は年を重ねて目の調節力を失うと、若い頃なら当たり前にできていたことを「年だから仕方ない……」とあきらめてしまいます。しかし医学は進歩しており、あなたのお好きなこと、挑戦したいことをずっと続けられる眼内レンズが開発されています。年を重ねても、やりたいことをあきらめる必要はありません。白内障の手術で、「視力」と「新しい人生」を取り戻していきましょう。

眼内レンズには「単焦点」と「多焦点」がある

白内障の手術は、濁って硬くなった水晶体(目のレンズ)の中味を取り除き、人工の眼内レンズに置き換えるというものです。

 

その際、どのような眼内レンズを入れるかで見え方が異なってきます。眼内レンズには大きく分けて、「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」があります。それぞれの特徴を簡単にご説明します。

 

●単焦点眼内レンズ

単焦点眼内レンズは、遠方、中距離、近方(手元)のどこか一つのみ焦点が合うものです。ピントが合う距離はとてもクリアに見えますが、その他の距離はぼやけてしまうためメガネが必要になります。たとえば手元にピントが合う眼内レンズを選べば遠方を見るためのメガネが必要になり、遠方にピントが合うものを選べば、手元を見るときには老眼鏡が必要になります。

 

●多焦点眼内レンズ

多焦点眼内レンズはすべて明視域が広く、「遠方・近方」または「遠方・中間距離」にピントの合う2焦点眼内レンズと、「遠方・中間距離・近方」という3つの距離すべてにピントが合う、3焦点眼内レンズがあります。

 

[図表3]3焦点レンズの見え方

 

多焦点眼内レンズは、レンズの傾きや偏心の影響で性能が十分に発揮されないリスクのため正確で精緻な手術が求められます。レーザーによる白内障手術を行った方が、確実性が高いと考えられます。

 

[図表4]単焦点と多焦点の見え方比較

白内障の手術は、基本的に「生涯一度きり」のもの

眼内レンズは、一度入れたら基本的に交換はしません。人の目の中は安定した環境ですので、眼内レンズの寿命は人間の寿命よりも長いと考えられます。正式に認可された眼内レンズであれば、その耐久性試験をパスしていますので安心です。保険診療または先進医療(2020年4月からは選定療養)の対象となる眼内レンズはすべて認可されています。

 

一方、自費診療の手術の場合には、国内認可のものという制限がなくなり、世界中の多焦点眼内レンズが選択肢になります。多くは、国内未認可のヨーロッパの眼内レンズを選びます。その理由は、ヨーロッパには国内認可のものより性能の優れた多焦点眼内レンズや個性的な性能を持つ多焦点眼内レンズがあるからです。

 

安全性に関しては、多くは問題ないのですが、一部、支持部が弱かったり、低頻度ながら濁ったりした経歴を持つ眼内レンズもありますので、主治医からよく説明を受けて選ぶようにしましょう。ヨーロッパのレンズが未承認なのは、ヨーロッパのレンズメーカーは日本で治験をしてくれないからです。

 

眼内レンズの交換は技術的には可能ですが、視機能に関わる理由が無い限り、気軽に入れ替えを行うことはありません。ご自分のライフスタイルや趣味、仕事の内容などを勘案し、主治医の先生と相談して慎重に適切な眼内レンズを選ぶことが大切です。

 

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
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著者紹介

連載近くも、遠くも、快適に…「見える」を取り戻す白内障手術

「見える」を取り戻す白内障手術

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板谷 正紀

幻冬舎

レーザー白内障手術は、安全・快適・短時間に「見えない」という病気状態を解決し、「見える」を取り戻し、さらに快適に見えるを手に入れるまでに進化しました。この本では、進化した多焦点レンズ、レーザー白内障手術の最新情…