近年、うつ病の患者が増えています。それと同時に抗うつ剤が効かない患者も急増していることをご存知でしょうか。実はうつ病の診断はとても難しく、本当は身体の問題であるにもかかわらず、心理的な症状が目立つためにうつ病と誤診されるケースが多発しているのです。※本連載は、千代田国際クリニックの院長である永田勝太郎氏の著書『「血糖値スパイク」が万病をつくる!』(ビジネス社)より一部を抜粋・編集し、医師さえ知らない「低血糖」の危険性を科学的に解説します。

3倍もの抗うつ剤を飲んでも改善せず、ひたすら重症化

【事例】うつと誤診された雪絵さん

 

雪絵さんは、ある大きな病院の付属看護専門学校に通う20歳の看護学生です。学校の寮に入っています。青春まっただなかで、授業の後、カフェでおしゃべりをしたり、友人とウインドウショッピングをしたり、楽しい学生生活を送っていました。

 

地方で育った雪絵さんは都会のきらびやかさに目もくらむ思いでした。授業も楽しく、高校と違う専門教育は面白く、熱い砂に水が染み込むようにどんどん吸収していきました。

 

そんな雪絵さんにとって悩みといえば、ときどき頭痛が起こることと、月経前症候群があり、生理が近くなると頭痛やイライラがきつくなることくらいでした。

 

ある日、精神科の授業でうつ病の講義を聞きました。先生(精神科の医師)は、学生達に実習として、自らのSDS(Zungの自己表記式うつ病スケール)を書かせ、自己採点させました。

 

すると、なんと雪絵さんは70点! これは、うつ病傾向がかなり強いことを意味します。びっくりした雪絵さんは、授業が終わるとすぐに先生のところに行き、尋ねました。

 

「先生、私、70点だったんですが、うつ病でしょうか!?」

 

先生は、彼女の顔をじろりと一瞥(いちべつ)して言いました。

 

「うん? 70点か。重症だね。すぐ外来に来なさい」

 

雪絵さんはやせぎすで色白です。声も小さく、控えめです。ですので、見た目にはうつ的に見えます。

 

雪絵さんは早速外来に行きました。医師は抗うつ剤を処方し、まじめな雪絵さんは、それをしっかり飲みました。

 

1週、2週…と、飲んでいるうちに、朝起きるのがきつくなりました。めまいや立ちくらみが起こるようになりました。頭がふらふらします。

 

授業中によく居眠りをするようになり、「ねえ、起きなさいよ!」と友人に突つかれます。雪絵さんは自分でも何かへンだなぁ…と思うようになりました。

 

ふたたび外来に行き、精神科の先生に最近の状況を話すと、

 

「ふうん、そうか。それはクスリが足らないからだね。それじゃあ、クスリを増やしましょう」と医師は言って、クスリの量が倍になりました。

 

クスリの量は徐々に増えて、ついに常用量(一般に使われる量)の3倍になり、さらに抗不安剤も加わりました。

 

雪絵さんはついに授業についていけなくなりました。頭がぼんやりし、座っているのがやっとです。あの快活な雪絵さんは、いったいどこに行ってしまったのでしょう?

 

その年の期末試験は散々でした。雪絵さんは何単位も落としてしまいました。勉強に身が入らないのです。机に向かうと眠くなり、教科書を読んでも頭に入りません。

 

困り果てた雪絵さんは教務主任に相談しました。教務主任は精神科の医師と相談し、雪絵さんの保護者(両親)を呼び出して宣告しました。

 

「お宅のお嬢さんはうつ病です。長期の治療が必要です。休学させて自宅で静養させたらどうですか。自宅の近くの精神科病院宛ての紹介状を書きます。残念ながら、雪絵さんは看護師には向かないのかもしれません。今後、学校を続けるかどうかは、ご両親と本人でよく考えてください」

 

両親はびっくりです! 教務主任の言葉にも驚きましたが、久しぶりに会う娘の変わり果てた姿にも驚きました。雪絵さんはボーッとして反応がない。両親は、雪絵は本当にうつ病になってしまったんだと思い、心から悲しみました。

 

休学した雪絵さんは、自宅に帰ってきました。紹介状にあった近所の精神科病院を受診しました。しかし、医師は首をかしげました。この頃の雪絵さんは、動悸、息切れがひどく、ときどき不整脈も出ていました。

 

「この娘は何か、身体の病気があるのではないだろうか。何か様子がへんだ」

 

そう思った医師は、当時、大学病院の心療内科に勤務していた私を、雪絵さんに紹介しました。そうして、私は雪絵さんを診察することになったのです。

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