経営者にとって「節税」は最も重要な課題のひとつです。しかし実際には「税金弱者」ともいうべき、税知識に乏しい経営者も少なくありません。ここでは、税理士YouTuberとして多くの節税動画を公開している田淵宏明氏が、中小企業経営者やひとり社長に向けた節税の基本を解説します。※本記事は『日本一わかりやすいひとり社長の節税』(ぱる出版刊行)より抜粋・再編集したものです。

「節税・申告漏れ・脱税・租税回避行為 」4つの違い

「何が経費に落ちて、何が落ちないのか」は、何となくご理解いただけたかと思う。次に、「何が『節税』で何が『脱税』になるのか?」この境界線について解説をしよう。

 

似たような意味として、世間でよく使われる「申告漏れ」や「租税回避行為」の意味についても解説をする(図表2)。

 

[図表2]節税と脱税・申告漏れ等の違い

①節税…各種税法に則る合法的なもの、完全ホワイト

節税とは、「各種の所得控除や非課税制度を活用して、税金の軽減をはかること」と「広辞苑」で定義されている。つまり、節税とは、法人税法や消費税法等、各種税法に則(のっと)った合法的なもの。「合法的に税金を減らすこと」を意味するのだ。

 

セツ子★「色でいえば完全ホワイト・純白なものね」

 

そう。とはいえ、合法だからといって「節税をいくらでもすればいい」というものではない。一見合法でも次に解説する「租税回避行為」として否認される場合もある。また、節税をやり過ぎて、資金繰りが悪化したり、財務体質低下につながることもある。

 

このような「節税の弊害」に注意しながら、実施すべきだ。

②申告漏れ…売上や経費計上のミス、計算誤りなど

「申告漏れ」とはどんな行為を意味するのだろうか? それは、売上や経費の計上ミス、計算誤りや、申告書記載のケアレスミスが原因で、申告書を提出し直したり、税法の解釈の相違等により修正申告をしたりすること等を意味する。

 

セツ子★「つまり、故意ではなく「ミス」なのね」

 

その意味合いが強い。ミスの原因は、大手企業の場合、経理担当者にあるかもしれない。一方、零細企業の場合、会計事務所担当者や税理士であるかもしれない。ケースにより様々だ。

 

修正申告に関するペナルティーは発生するものの、そこまで重たい負担がかかるものではない。

 

では、「脱税」とはどのような行為なのか? 『広辞苑』では「納税義務者が義務の履行を怠り、納税額の一部または全部を逃れる行為」と定義されている。

 

具体的には、二重帳簿による取引の仮装や隠蔽、意図的な売上除外や、架空経費の計上が、よくある脱税行為だ。

 

セツ子★「『故意』『意図的』。色でいえば完全ブラック・暗黒色ね」

 

だから税務調査において脱税が発覚すると、通常のペナルティーに代えて、「重加算税」という非常に重たいペナルティーが課せられる(だからといって、即逮捕、となるわけではないが)。

③租税回避行為…一応合法だが「グレー」との認識も

「租税回避行為」という言葉を、耳にされたことはあるだろうか? 一見、脱税のように聞こえるが実はそうではない。以前、「Wikipedia」では、次のように説明されていた。

 

脱税、節税と似ているが異なるものに、租税回避がある。これは、私法の形成可能性を利用した行為であり、一般的に次のような要件を満たす行為と説明される。

 

●通常の取引では用いないような異常な取引形態を使う。

●その異常な取引形態によっても通常の取引と同様な経済的効果が得られる。

●その異常な取引により税負担を減少させることができる。

 

つまり、租税回避行為は違法なものではない。合法は合法なのだが、“通常ビジネスを営んでいくうえではあり得ないような経済取引”を行い、その結果、“税金が減少するようなもの”を意味するのだ。税務調査にてこれが発覚すると、否認されることも多々あるので、要注意だ。

 

セツ子★「脱税ではないけど、「普通に計算した税金を払えや」となるのね」

 

中には、某大手携帯電話会社が得意とするような、法の網の目をくぐるような、非常によく練られた高度なものもある。色でいえばグレー。グレーゾーンに、この租税回避行為は位置する。

④脱税…明らかな違法、会社へのダメージも甚大

私は税の専門家として、必要な節税はオススメするが、脱税はそうはいかない。安易な気持ちで脱税をしてはいけない! 次のような様々な大きなデメリットがあることを、肝に銘じておいていただきたい。

 

●3つの大きな罰則あり。延滞税+加算税+刑事罰(10年以下の懲役・1,000万円以下の罰金)

●会社やお店、社長自身のイメージや好感度ダウン

●それに伴う売上減少

 

「申告漏れ」で税務調査時に指摘を受けて修正申告した場合、「延滞税」という延滞利息のような税金と合わせて、「過少申告加算税」というペナルティーが課せられる。これが、追加徴収の税額本体の10~15%相当になる。

 

脱税行為の場合、この過少申告加算税の代わりに、「重加算税」というペナルティーが課せられる。税率は35~45%まで跳ね上がり、非常に負担が重たくなるのだ。

 

図表3は国税庁公式ホームページの資料。脱税事件として刑事告発される基準は、脱税額にして大体1億円程。

 

(単位:百万円) ※脱税額には加算税額を含む。
[図表3]国税庁HP・平成30 年度査察の概要より (単位:百万円)
※脱税額には加算税額を含む。

 

ひとり会社の利益率等を考えると、あり得ない数字かもしれないが、安心してはいけない。告発に至らなくとも、重加算税等の課税により当初納付すべきであった税額が、1.5倍近くに膨らむ。

 

また、運営する店舗や会社、商品、そして社長自身のイメージまで大きく低下することになる。その影響で仕事が減少して売上減、利益減、資金繰り悪化へとつながる場合もある。国税という組織をナメてはいけない。彼らは、1つの会社なんてカンタンに潰してしまう程の力と権利があるのだ。読者の皆様は脱税に手を染めることなく、上手に節税対策することをオススメしたい。

 

 

田淵 宏明 

ヒロ☆総合会計事務所 代表税理士

株式会社ヒロ経営研究所 代表取締役

税理士YouTuber

 

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