近年では相続税の課税はますます重く、また、これまで許容されていた対策にも規制がかかるなど、非常に厳しいものとなっています。大切な資産を減らすことなく無事に相続を乗り切るには、どのような手段があるのでしょうか。「相続実務士」のもとに寄せられた相談実例をもとにプロフェッショナルが解説します。※本記事は株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

姉主導での手続きの流れを、各所で軌道修正

●遺産分割協議前に法定割合で登記された売却地…登記をやり直す

 

納税資金にあてる予定の土地は、売却を急ぐため、姉の指示で遺産分割協議前に法定割合で登記されていました。仲介に入った親戚や税理士は「納税でお金は残らないから、分割協議書の割合と違っても差し支えない」と説明していましたが、分割協議はこれから行うわけですから、「錯誤」として真の割合に戻し、登記をやり直しました。結果、法定割合を主張した分を調整し、姉12%、兄24%、相談者姉妹それぞれ32%の割合となりました。

 

 

●正確な土地売却代金を算出…筆者立ち合いのもと、各自の口座に振り込み

 

仲介する親戚や税理士は、相続税を払ったら残らないという説明していましたが、こちらが詳細に調べると、納税後もかなり手もとに残る計算となりました。そのため、きちんと各自の明細を作成してもらい、筆者が立ち会ったうえで各自の口座に振り込み、そこから各自が納税するようにしました。

 

●遺産分割の実行を確認

 

ほかの財産分与の預金はすべて姉が管理しているため、日時を決めて明細を送付してもらうよう話をしました。筆者が間に入り、いろいろな交換条件をつけて交渉しないと、現実の財産分与が行われない不安もあるためです。かなり大変ではありましたが、それにより、預金の分割やほかの土地の登記も実行されたことが確認ができ、遺産分割は完了しました。

 

 相続実務士の視点 

 

O山さんの父親は、代々の地主で事業も成功させた名士ですが、配偶者を早く亡くされたことが影響したのか、4人の子どもを手放すことなく、ずっと自分のそばへ置いておきたいと考えられたようです。いずれは自分の子どもたちが資産を分け、仲よく寄り添って暮らすことを思い描かれていたのかもしれません。

 

しかし現実の相続では、きょうだいの関係はすでに修復不可能なほど悪化しており、これならいっそ他人同士のほうがましではないかと思えるくらい、壮絶なものとなりました。それなりの財産があると、実のきょうだいでも不協和音が起こりやすいのですが、今回のケースでは、筆者がコーディネートに入った段階で、すでに直接会話ができないほどでした。

 

依頼者のO山さん姉妹には、ほぼ法定割合の財産分与で分割協議を終えることができ、「今後の生活不安がなくなりました」と大変喜んでいただきました。また、父親の相続手続きも納税も、問題なくすませることができました。

 

とはいえ、財産は相続したものの、きょうだいの絆は失われてしまい、非常に考えさせられる結果となりました。
 

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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