『Amazon Prime Video(アマゾンプライム・ビデオ)』『Netflix(ネットフリックス)』をはじめとしたサブスクリプション(=サブスク)を活用している人は多いことだろう。有料動画配信サービスに倣い、自動車産業や食品メーカーをはじめ、大手企業がこぞってサブスクを始めているが、解約率の高さに頭を抱えるケースも少なくない。そんなときに活躍するのが、チャットボットを解約ページに置き、その原因をヒアリングするシステムだ。本記事では、株式会社Macbee Planetエヴァンジェリスト・佐野敏哉氏の書籍『解約新書 マーケッターに捧げる解約の真実と処方箋』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、解説していく。

高額すぎる「バンダイチャンネル」なぜ巻き返した?

◆会員増加に転じたバンダイチャンネル

 

バンダイチャンネルの解約ページにチャットボットが置かれたのは2019年8月です。それまで入会者の4分の1が1カ月以内にやめていき、販促とともに解約防止が検討課題に挙がっていました。事前アンケートを取ったり継続してもらうためのインセンティブを付けたりしてはどうかという案が出ましたが、これといった解決策にならず、なぜやめるのか、ユーザーは何を求めているのかをヒアリングしてみようということでチャットボットの導入が決まりました。

 

事前の調査では、利用料金への不満が多いということが分かっていました。月額1000円はアマゾンプライム・ビデオの2倍以上で、ほかの動画コンテンツサービスと比べても確かに高い部類に入ります。

 

[PR]サブスクで利益を出せていますか?成功の鍵は「解約防止」です。
【解約防止ノウハウを今すぐダウンロード】

 

チャットボットの最初のシナリオでは、解約の理由を聞くときにあえて月額料金には触れていませんでした。「高いから」と言われると反論できないという理由でしたが、途中から臭いものに蓋をせずに回答の選択肢に「高いから」を入れました。

 

さらに「いくらならいいと思いますか?」とも尋ねてみました。一番安い選択肢の「300円以下」という答えに集中するという予想だったのですが、蓋を開けてみると一番多かったのは「500円以下」で、続いて「300円以下」と「800円以下」が同じでした。「安い方がいいに決まっているじゃないか」といった単純な反応ではなかったのです。

 

さらに、バンダイチャンネルはなぜ月額1000円という料金になっているかをチャットボットが説明するシナリオを加えました。一般的に消費者は「どうせ企業はいいことしか言わないだろう」と思っています。マイナス要因になりそうなことでもあえてオープンにすると、納得できる理由であれば多くの人は受け入れてくれます。理由をきちんと説明すればむしろ解約防止につながりそうだという傾向が分かりました。

次ページ 解約間際の「水際対策」がここまで効果をもたらした