官僚も残業激減?オンライン国会なら「想定問答不要」の現実味

これからの時代を経済的に困窮することなく生きるには、「経済センス」を磨くことが不可欠です。経済コラムで多くのファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、身近なテーマを読み解きます。第24回は、コロナ禍によって進展が見られた「働き方改革」を国会へ本格導入するメリットについて解説します。

社会に改革をもたらした「新型コロナウイルス」

新型コロナウイルスの流行は大変な災難でしたが、不幸中の幸いというべきこともありました。人々がしっかりと手を洗うようになったため、コロナ以外の感染症が減ったといわれていますし、従来まで当然と考えられていた業務など、省略しても困らないと判明したものも多くあります。

 

筆者が大いに期待しているのは、在宅勤務・押印の省略・インターネット会議・オンライン診療等々の定着です。これらによる効率化は未来永劫の効果があるでしょうから、このまま根付けば、メリットは非常に大きいと期待しています。

 

本稿で主張したいのは、範を示すという意味を込め、「国会審議をインターネットで行う」ということです。これは、単に会議の効率化のみならず、大臣や官僚の働き方を大きく改善するものとして、非常に期待できると考えています。

国会審議はメールで根回し、会議は短時間で解決

国会の審議では、

 

あらかじめ議員が質問を通告

それに対して官僚が答弁案を作成

それを大臣が了承して議場で読み上げる

 

ということが広く行われています。

 

重要な政策方針についてはもちろんですが、数多く寄せられる細かい事実関係の問い合わせ等々についても、官僚の準備した答弁案が必要だからです。

 

これをインターネットで行うことにすればいいでしょう。

 

議員がネットに質問を書き込み、それに官僚が回答案を用意し、大臣の了承を得てアップすればいいわけです。そうすれば、「金帰火来」などといわれるように、議員が東京と地元を往復する必要がなくなります。

 

それから、都合のいい時間にインターネットで国会審議の様子を知ることができるので、「決められた時間に議場にいなければならない」ということがなくなります。

 

筆者がこれを痛感したのが、総理大臣や外務大臣等が外交日程よりも国会審議を優先せざるを得ない場合がある、と聞いたときです。そのようなことがあっては、国益が損なわれる可能性があるでしょう。

 

国会審議がインターネットで行われるのなら、総理等が外遊していても、空いている時間帯に審議に参加すればいいので、しっかり外交日程をこなすことができるようになるはずです。

 

あああ
「決められた時間に議場にいなければならない」ということもなくなるでしょう。

官僚の働き方改革にも効果があるはず

議員が質問を通告してから質問するまでの日程に余裕がないと、官僚が深夜残業を強いられることになります。議員が質問に立つ日時が決まっていて、その前日まで質問を考えていたりすると、官僚が質問を知るのが前日になり、それから答弁案を作成する必要があるからです。

 

これを逆転の発想で「議員が質問を思いついたときに質問する。回答は3日以内で」というルールに変えればいいのです。それにより、官僚の深夜残業が大いに減ると期待されます。

 

締切までに時間の余裕ができるから深夜残業が減るというのが理由ですが、もうひとつ大きいのは「想定問答」が不要になるという点です。

 

現在のシステムでは「答弁に対して、さらにこう聞かれた場合の答弁案」といったものを用意する必要がありますが、新システムでは「さらに伺います」といわれてから作業すればいいので、無駄な作業がなくなります。

 

もっとも、議員の質問時間が決まっている現状からすれば、質問数を限定する、といったことは必要でしょうね。議員が無限に質問を思いついたら、官僚は忙しくて仕方ありませんから。

ときには国会議事堂への集合も必要だが…

そうはいっても、たとえば党首討論のように丁々発止のやりとりをするのは、テレビ電話会議方式ではむずかしいかもしれません。

 

それだけではありません。議員相互の信頼関係を構築するためにも、時々は議場で議論をしたり、議場外で打ち合わせをしたりする必要もあるでしょう。

 

せっかく国会議事堂という立派な建物があるのですから、時々は使わないともったいない、ということもあるでしょうし、開会式のような儀式も必要でしょう。

 

というわけで、落とし所としては「事実確認のような国会質問等はインターネットで行うが、政策決定を議論するのは議場で」といったあたりなのかもしれませんね。

 

国会が「働き方改革」としてインターネット審議を導入することで民間部門の働き方改革の模範となってくれるなら、それは素晴らしいことだと思います。期待しています。

 

末筆ながら、新型コロナで亡くなられた方の御冥福をお祈りするとともに、罹患された方に御見舞申し上げます。また、自粛等により経済的な困難や精神的なストレス等々に見舞われた方々にも御見舞申し上げます。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密には正確でない場合があり得ます。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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