マスク暑くない…?「感染予防、漏れ率100%」の今更衝撃告白

コロナ感染拡大「第2波」が懸念されるなか、じりじりと近づく夏の季節。30度を超える日々も増え「もうマスクは勘弁してくれ…」と思っている人も多いのでは? 感染予防という大義名分はありますが、実際のところ効果はあるのでしょうか。 ※本記事は聖路加国際大学大学院公衆衛生学研究科・准教授である大西一成氏の書籍『マスクの品格』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

「ウイルスから身を守る」というデカすぎる大義名分

1 マスクの漏れを知ろう

 

人それぞれにマスクの着用目的があるかとは思いますが、まずはマスク本来の機能について考えてみましょう。皆さんはマスクの漏れと聞いて、何かピンとくるでしょうか。

 

マスクフィルターの穴の大きさによって、外部からの粒子が通る通らない、マスクと顔に隙間があるかないか、または、マスクの布地に厚みがあればよい、などといった誤った解釈も含め、一般的にはこういったことが思い浮かびますが、そもそもマスクの漏れということを気にしてマスクを使用する人は、ほとんどいないのが実情です。

 

最近暑すぎる
最近暑すぎる

 

本記事では、大気汚染物質(PM2.5や花粉を含む)や、風邪やインフルエンザの原因となる菌やウイルスなどから身を守ること、すなわち自己防護を目的としたマスクの着用に主眼を置いて解説をしていきます。

 

本記事でいうマスクの漏れとは、外(本記事では空気中のこと)の粒子がマスクの内側に入り込んでいる状態を指し、それを数値化することによって、より明確に、マスクの着用法とその正誤性を皆さんに理解していただければと思います。

 

風邪の予防や、花粉や粒子の取り込みを防ぐことを期待してマスクを着用する場合は、当然のことながら、外の粒子をいかにマスクの内側に入れないかが重要になります。

 

ゆえに、現状を把握するため、マスクの外に浮遊している粒子の数と、着用したマスク内の粒子の数をそれぞれ計測し、どれだけ外の粒子がマスクの内側に入り込んでいるのかを統計解析してみました(本記事ではこれを数値で表したものを漏れ率といい、その計測方法は書籍『マスクの品格』で解説しています)。

 

グラフ(図1)は、ドラッグストアやコンビニなどで購入した『衛生マスク』を着用した、225人のマスクの漏れ率の調査結果です。

 

(調査場所:鳥取県米子市・鳥取市/2014年、使用機材:MT-03/SIBATA)
図1:衛生マスクの漏れ率調査(指導前) (調査場所:鳥取県米子市・鳥取市/2014年、使用機材:MT-03/SIBATA)

 

漏れ率の平均は86.3%で、全員が外の粒子をマスクの内側に取り込んでしまっている現状がよくわかります。特に、漏れ率100%(全く防ぐことができていない)の人が126人いました。ここで問題となるのは、マスクのフィルターの性能と、着用時のマスクと顔との隙間です。

「感染を防ぐものではありません!」え、何のために…

続いて、マスクの周りを押さえるという指導をした後に計測をしてみました。すると、平均して約20%の漏れ率を下げることができるという結果が出ました。顔とマスクの隙間を意識するだけで、いくらか外部粒子の取り込みを防ぐことができたのです。しかしながら、それでも合格ラインには程遠いという結果でした(図2)。

 

(調査場所:鳥取県米子市・鳥取市/2014年、使用機材:MT-03/SIBATA)
図2:衛生マスクのつけ方の指導前と、マスクの周りを押さえた場合の漏れ率の違い (調査場所:鳥取県米子市・鳥取市/2014年、使用機材:MT-03/SIBATA)

 

市販されているマスクについて見てみると、パッケージには「黄砂や花粉、PM2.5から身を守る」と記載されており、店頭にも感染予防と堂々とうたって置いてあります。

 

しかしながら、「これは、侵入を防ぐものではありません」「感染を防ぐものではありません」とも記載してあります。このように、着用効果に矛盾が生じる記載に気づいた方もいらっしゃるでしょう。

 

日本衛生材料工業連合会の『表示・広告自主基準』には、家庭用マスクについて「マスクは感染を完全に防ぐものではありません」と、8ポイント以上の大きさの文字で記載するようルールが定められています。

 

製造者側もこういった漏れ率の結果に対し、今後どういった対応を取っていくのでしょうか。マスクを買う側は、身を守れることを期待して購入しています。マスクはフィルターの性能だけではなく、着用目的と着用方法を明示して販売する必要があると考えるのです。

 

マスクについての正しい知識と理解を持ち合わせていない社会が、その機能を十分に発揮させていないともいえるのではないでしょうか。

アベノマスクは本来の目的にそぐわない形をしていた?

2 マスクをつける目的は?

 

専門的なものも含めると、マスクには数え切れないほどの種類があります。その中からひとつのマスクを選ぶ動機は何なのでしょうか?

 

まずは、その動機(目的)によってマスクを使い分ける必要があるのですが、今では家庭用・工業用・医療用のマスクが兼用して使用されている場合が多くなっています。

 

では、マスク着用の目的を『CASE(ケース)』と称して、大きく4つに分類し、それぞれを詳しく解説していきます。自分がマスクを着用する目的は何なのかを、改めて意識してみましょう。

 

CASE1 空気中の粒子やガスを取り込まないためには?(ケース1)

 

ウイルス・微小粒子やガスなどの体内への取り込みを防ぐ、あるいは、有病者が症状の悪化を防ぐというように、予防のためのマスクの着用について詳しく述べていきます。マスクを着用している人の多くが、これを目的としているのではないでしょうか。

 

●身を守るための大切な目的

 

空気中の細菌・ウイルスや大気汚染物質(PM2.5を含む)や、黄砂、花粉、ほこりなどを口や鼻から体内に入れないようにすることで、自分の命を自分で守るという、大切な防護行動です。

 

●マスクのチェック項目

 

特に、このケース1を目的としてマスクを着用する場合には、次の項目をチェックする必要があります。

 

① マスクのフィルターが粒子を通さないか(どれくらいの大きさの粒子、そしてどのような成分をカットできるマスクなのか)

市販の衛生マスクでは、フィルター性能はパッケージなどを参考にするほかないですが、できればガーゼマスクは避けたほうがよいです。

 

② 自分の顔にフィットしており、隙間なく装着できているか(ワイヤー入りであれば自分の鼻の高さに合わせて形をつくる)

言うまでもありませんが、子ども用と大人用では明らかにマスク自体のサイズが違うため、着用者に合ったものを選ぶことが大事です。

 

●通常のマスクではケース1の目的は達成しにくい

 

マスクを着用したとしても、外の粒子の取り込みを防ぐマスクは『防じんマスク』以外にはありません。市販の衛生マスクでも、ある程度目的は達成できるものはありますが、「しないよりはマシ」といった具合なのです。衛生マスクは、主にこの後のケース2の説明で述べる、エチケットを目的としたマスクです。

 

工事現場などでは、まだマスクの機能が認識されていないために、ただマスクを着用しているにすぎず、大部分が粉じんなどを体内に取り込んでしまっているというのが現状です。(2019年2月現在)

 

外の粒子の取り込みを防ぐマスクは?

大変今更だがマスクでウイルスシャットアウトは困難

●一般的な衛生マスクで、粉じんやウイルスの侵入を完全に防ぐのは困難

 

風邪はウイルス感染によって起こる病気ですが、そのウイルスは非常に小さく、衛生マスクの繊維の隙間を通り抜けて体内に侵入してしまうこともあります。また、ドラッグストアなどで購入できるプリーツ型のマスクなどでは、鼻とマスクの間からのウイルスの侵入を防ぐことはできません。

 

しかし、衛生マスクであっても、マスクをしていればウイルスがたくさん存在している唾液を周囲に撒(ま)き散らさずに済むので、感染拡大を予防するのには役に立つのです。

 

●乗り物に乗っているときに臭いが気になる場合

 

乗り物の中でマスクをしている人をよく見かけます。人混みの中で粉じんなどを吸い込みたくないからという人もいると思いますが、ほかには、飛行機エンジンの排ガスの臭(にお)いや汽車のディーゼル燃料を燃やした臭い、喫煙者の衣類についたタバコの臭い(三次喫煙)、車内トイレの臭いなどを嗅(か)ぐことで気分が悪くなり、酔ってしまうから、などという人もいるのではないでしょうか。

 

臭いの原因は有機物のガス(気体)であるため、臭いを100%カットするには、防毒マスクや活性炭入りの防じんマスクといった、有機物を吸着できる特別なマスクを着用しなければなりません(とは言っても、衛生マスクで少しでも緩和されれば楽にはなります)。

 

一般的ではありませんが、微小粒子(個体)や液体を防ぎたい場合は『防じんマスク』を選択し、臭い(ガス・気体)を防ぎたい場合は『防毒マスク』を選択しなければならないのです。

 

特殊な成分の場合は、その成分をきちんと捕集できるフィルター(粉じん〈粒子〉をろ過して、清浄空気にするもの)や、吸収缶(環境中の有害ガス〈気体〉を吸着して、清浄空気にするもの)を用いる必要があります。

コロナ予防に適したマスクは結局何だったのか?

●マスクの選択方法の例

 

マスクの用途はケースバイケースであり、その都度判断し選択する必要があるのですが、以下の場合では、自己判断は非常に困難となります。

 

・大気汚染の濃度がひどい地域(日常・専門) → 粉体なので防じんマスク → 漏れを考えるとブロワーマスクが適切である。

 

・ 黄砂発生源での研究調査(日常・専門)→ 粉体なので防じんマスク → 漏れを考えるとブロワーマスクが適切である。

 

・ 放射性物質の場合(日常・専門) → テロ対策製品 → ほとんどの放射性物質は粉体であるため、漏れを考えるとブロワーマスクが適切である。

 

・セレンの場合(専門) → セレン化水素は空気呼吸器、粉体のセレンは防じんマスク(SDS〈Safety Data Sheet 〉による判断が必要)

 

・サリンの場合(専門) → テロ対策製品の防毒マスク

 

・アスベスト〈石綿〉の場合(専門) → 防じんマスク(ただし、石綿除去工法と除去対象材料に応じて、マスク(呼吸用保護具)の種類(区分1〜区分4)を選定しなければならない)

 

・炭疽菌(たんそきん)の場合(専門) → 炭疽(症)の病原体となる炭疽菌(細菌)は粉体なので、防じんマスク → 漏れを考えるとブロワーマスクが適切である。

 

・エボラ出血熱の感染地帯で作業の場合(専門) → エボラ出血熱の病原体であるエボラウイルスは粉体なので、防じんマスク → 漏れを考えるとブロワーマスクが適切である。

 

・救急隊員が患者と接触する場合(専門) → 飛沫感染を防ぐため、粉体なので防じんマスク → 漏れを考えるとブロワーマスクが適切である。

 

一般的な取り扱いや規則を定めたものには、例えば、エボラ出血熱などは防じんマスクの『N95』の着用と記載されていますが、実際は、マスクフィットを考慮し『フィルター取り替え式のマスク』を、漏れの危険性が高ければ『ブロワーマスク』を選択するのがよいでしょう。

 

我々の日常生活におけるマスク着用効果への期待は、環境汚染、異常気象、新興感染症などが複雑に絡み合う現代社会では大きくなります。今や、身近な持ち物になっているマスクを普段から適切に装着することで、少しでも自己防衛につなげていけたら、と思うのです。

 

ケース2 「感染者や結核の患者は…」

ケース3 「ちょっとだけ風邪を引いたときは…」

ケース4 「表情を見られたくないときは…」

 

※本記事は連載『マスクの品格』を再構成したものです。

 

 

大西 一成

聖路加国際大学大学院公衆衛生学研究科 准教授 医学博士

 

聖路加国際大学大学院公衆衛生学研究科 准教授 医学博士 

専門は、環境疫学・公衆衛生学・健康影響評価・環境計測。気候変動や大気浮遊粒子状物質(黄砂、汚染物質、PM 2.5など)の人体への健康影響について、発生源の現地調査、環境計測、気象/環境学と医学を融合し、多角的にアプローチした研究を行っている。観測データを予防医学へ応用した健康予報構築の研究は気象庁気象研究所と共同で行い、マスクの着用時期についての行政サービスへの展開を考察している。

著者紹介

連載マスクの品格~誰もしらない本当の話を医学博士が大解説

マスクの品格

マスクの品格

大西 一成

幻冬舎MC

あなたはなぜ、マスクをつけますか? ウイルスを予防したいから。もしくはひいているから。それとも顔を隠したいから? 「実は効果が期待できないマスク」「自分に合ったマスクの選び方」「病気を予防するマスクの付け方」 …

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