縮小する国内市場…「リサイクル業」は海外に成長の余地あり!?

知名度の高い企業のなかには、業種の異なる複数の事業を展開したうえで、それぞれを法人化していることがあります。グループの力をまとめることで勢力を増大させ、大企業としての存在感を確かなものにしているのです。しかし、大企業でなくとも他業種で新規事業を検討する価値は十分にあります。リスク分散や節税に繋がることはもちろん、ビジネスチャンスの増大という相乗効果も期待できるからです。今回は「リサイクル業」に焦点を当てていきましょう。

現在のリサイクル業を取り巻く状況

リサイクル業は、いったん不要と判断された廃棄物の再利用を試みる業種です。環境や社会への貢献度が高いため、企業価値の向上にもひと役買ってくれます。

 

環境産業市場規模検討会が2017年に発表した「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」によると、国内の廃棄物処理・リサイクル市場は2015年時点で約4兆円でした。

 

日本は、2007年に超高齢社会に突入しています。総人口は2012年をピークに減少傾向に転じ、2050年には1億人以下となる見通しであると言われています。人口減少に伴い、国内で排出される廃棄物も減少していくため、リサイクル業界の市場規模も縮小していくでしょう。しかしこの傾向は、どの業界にも同じことが言えます。

 

出所:経済産業省・環境省「リサイクル分野の海外展開戦略」資料(本文)3ぺージを基に株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が作成
[図表1]日本国内及び海外の廃棄物処理・リサイクル分野の市場規模 出所:経済産業省・環境省「リサイクル分野の海外展開戦略」資料(本文)3ぺージを基に株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が作成

 

対してアジアやアフリカなどの国々は、今後の発展に伴い、人口が増加していくと予想されています。そのため日本のリサイクル業を行う企業は、国内だけでなく、海外展開を検討する企業が増えています。このような海外への展開が進むことで、2015年に約8.5兆円だった国内の「リサイクル素材」の市場規模は、2050年には約15兆円にまで成長していくと考えられています。

 

リサイクル業の種類とそれぞれの展開法

さて、ひと口に「リサイクル業」と言っても、数多くのバリエーションがあります。人々が生活や産業の中から排出する廃棄物は、多種多様だからです。

 

以下にその一例を紹介していきます。実際に新規事業として展開していくには、どうすべきなのかを考えていきましょう。

 

■素材リサイクル

素材として注目度が高いのは、メタルです。自動車や家電などの製品は、本体が不用品として処分されても、内部にまだ多くの『リサイクル可能なメタル素材』が含まれています。それらを抽出して再商品化すれば、利益を得られる事業となります。

日本はメタルリサイクルの技術に秀でています。リサイクルのプロセスに含まれる「物理選別技術」と「科学分離技術」に関しては、パナソニックや住友金属鉱山など、多くの大企業が複数の特許を取得済です。すでにお手本があることは心強く、今後の日本ではメタルリサイクル産業がさらに発展していくでしょう。またプラスチックやガラス、そして木などの素材は、それぞれのカテゴリ内にある種類を細分化したうえで適切に処理すると、安定的な利益を生む可能性を秘めています。

その一方で、素材リサイクルには専用設備が必要となります。また産業廃棄物から素材を求める場合、処理業の許可を取得する必要も出てきます。さらに将来、海外からリサイクル素材を輸入するとなると、各国の法制度を踏まえて許認可を取る必要が出てくるなど、複雑なスキームを構築しなくてはなりません。

そのため、素材リサイクルに関しては、全くの異業種からの参入はハードルが高いかもしれません。工場を所有している中小製造企業などであれば検討の余地はありそうですが、その際にも独自で進めるのではなく、すでにビジネスフローを確立している企業との提携などを模索する方が早道と言えそうです。


■不用品回収

都心の中小企業ではなかなか難しいかもしれませんが、地方都市で車両と倉庫スペースを所有する中小企業であれば、一考の価値があります。

特に注目したい不用品は、家電製品です。故障して使い物にならなくなった家電は、一般家庭では無用の長物となってしまいますが、フィリピンやアフリカなどには高い修理技術を持ち、再販を可能とする人材が存在しています。現地では日本のリユース家電が人気を博し、高値で取引されているのです。

とはいえ、自力で海外ネットワークを構築し、輸出の手続きを進めるのはかなり困難です。すでにルートを確立している業者を探し、取引を提案するのが良いでしょう。

なお、不用品回収業を始めるためには、所在地管轄の警察署にある生活安全課へ『古物商許可』を申請する必要があります。法人の場合は役員全員が審査の対象となりますので、要件を確認し取得するようにしましょう。

また、一般家庭から出る不用品を対象とする回収業には、『一般廃棄物収集運搬業許可』の取得が原則必要となります。しかし、その収集運搬許可はかなり取得が難しくなっています。


■リサイクルショップ

リサイクルショップは「古物商許可」を取得できれば、誰にでも始めることができますが、店舗自体を軌道に乗せ、きちんと利益を回収していくためにはには、それなりの対策が必要です。一般的な店舗開店と同じように、エリア調査や取扱品目/仕入れルートの絞り込み、そして広告宣伝などの準備を時間をかけて進めなくてはなりません。近年、リユース市場はオンライン化が進んでいますので、ネットオークションとの同時販売なども検討すると良いでしょう。

さらに不用品回収業とセットで展開すると、メリットは大きくなります。先述のように「一般廃棄物収集運搬業許可」は取得が難しいのですが、「産業廃棄物収集運版業許可」を取得すれば、小売店と連携して家電リサイクル法に基づく家電4品目(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機)の運搬が、特例として認められます。安定的な仕入れルートの確保、取扱品の強化につなげることができるでしょう。


■太陽光発電

不用品を再利用するのもリサイクルですが、自然エネルギーを再利用するのも、ひとつのリサイクル業とみなされています。
自社不動産の屋根や壁面、購入した専用の土地などにパネルを設置することで、売電収入を得ることができる太陽光発電は、人件費が不要という点からも会社の副業に適しています。初期費用が嵩むため、償却年数は約10年程度必要となりますが、メンテナンス費などを差し引いても、高い利回りを実現する可能性があるのです。

ただし、発電量は日照条件など天候に大きく左右されるので、設置場所の検討は最も重要です。システムを提供する専門業者に「概算利回りシミュレーション」を依頼し、将来的に確実な利益を見込めるか、算出してもらうようにしてください。

 

人口減少が進む国内市場では、ほかの内需産業同様、リサイクル業も縮小傾向が予測されています。しかし人口増加が見込まれる海外に活路を見出せば成長の余地は十分にあります。またリサイクル業といっても、素材リサイクルから、再生エネルギーまで種類は豊富です。参入のしやすさも異なるため、綿密な事業戦略を練るところから始めましょう。

 

100年企業戦略研究所は、「“経営の新常識”を作り、日本の未来を切り拓く」という株式会社ボルテックスのミッションを推進し体現していくことを目的に2018年に設置された社内シンクタンク。日本に数多く存在する長寿企業の事業継続の秘訣を研究・分析し、100年続く企業づくりに寄与する優れた知慧や叡智を多くの企業経営者の方々に広くご提供することを使命としている。
https://100years-company.jp/

著者紹介

連載中小企業経営者におくる「100年企業」を目指すためのノウハウ

※本連載は、株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が運営するウェブサイト「100年企業戦略ONLINE」の記事を転載・再編集したものです。