アメリカで人気の「中古住宅」…日本で市場規模が小さいワケ

アメリカでは、物件の価値が年々上昇していく風潮があるが、日本において、不動産の価値が最も高いのは「新築」の状態である。なぜ、日本とアメリカでこのような差が生まれたのだろうか。今回は「アメリカの不動産流通システム」について解説する。※「不動産投資ガイドBOOK」を無料プレゼント中!詳しくはコチラ

日本の既存住宅流通を促進するためには?

自分が住んでいる家を売却することができない場合、自分だけで「その住宅を使い切る」という居住スタイルがもたらされることになる。

 

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住宅という財は、技術的には世代を超えて存続させることができる。しかし、既存住宅市場が発達していないことから、日本の住宅の寿命は欧米よりも、非常に短いものとなっている。滅失住宅の平均寿命を国際比較すると、日本は27年(「住宅土地統計調査」(2003、2008))、米国は64年(”American Housing Survey”(2003,2007))、英国は84年(”Housing and Construction Statistics”(2003,2008))だ。

 

このように、日本において既存住宅の流通が阻害されていることは、人々に様々な悪影響を与えている。問題を解決するためには、どのような対応が図られるべきであろうか。次に、既存住宅流通に大きな役割を果たすであろう不動産業者の役割を考察してみた。

 

既存住宅は新築時の図面がなかったり、備えていた性能が不明であるケースがたくさんある。前提として、住宅購入後の維持管理状態が現在の建物の品質を大きく左右している。

 

既存住宅流通にあたって必要な情報は、新築住宅に比べて種類も量も飛躍的に増大するため、必要な情報がやりとりできない場合は、買い手は既存住宅の品質及び価格の妥当性を判断することができず、売買は成立しない。つまり、既存住宅流通を促進するためには、質の良い十分な情報のやりとりが行われる環境が必要だ。

 

しかし不動産市場とは、不動産の売買を行ったことのない売り手と買い手が、非常に高額な取引を行う場所である。このような専門知識も経験もない主体同士が相手をサーチするような場合、そのコストが非常に大きなものとなり、自分の好みにあった住宅を取得できない、思ったような価格で売れないなどの結果がもたらされることだろう。

 

このため、一定の資格を認定された専門家がそのやりとりを仲介する仕組みが、どの国においても発達している。不動産業者とは売り手と買い手のサーチコストの削減を通じて、不動産売買を促進する役割を果たしてきた。

 

つまり不動産業者は、売り手と買い手を引き合わせるマッチング、売り手と買い手に取引を完遂させるバーゲニングの支援を行うという役割を果たしているのだ。

 

不動産業者が
不動産業者が「売り手と買い手の取引を完遂させている」といえる

 

当記事では、特に「不動産業者のマッチング機能」に着目する。不動産業者は売り手が提供する物件のリストを買い手に開示することで、売り手と「物件が自らのニーズに合致していると考える買い手」のマッチングを実現する。

 

物件の情報提供サービスは、リストを作り上げるまでは大きな費用が必要だが、情報提供するコストは非常に低いという「情報財」としての特性をもち、自然に独占が生じる。また、このリストはネットワーク外部性として知られる性質がある。

 

古い例えだが、「世界で1台しかないファクシミリ機」に価値がなく、ファクシミリ機の価値は「他の人たちもそれを持っていて、あなたとファックスのやりとりができる」点にある。持っている人の数が多ければ多いほど価値が大きくなる、ファクシミリ器のような性質を「ネットワーク外部性」という。不動産業者が持っているリストはまさにそのような性質を持つと考えられよう。

 

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リスティングされる売り手にとっては、リストを利用する他の売り手が多ければ多いほどリスト自体の価値があがる。買い手に対して高いサービスもたらすため、多くの買い手を引き付けるからである。このため、地域不動産市場ごとに、サービスが独占的に供給されることが効率的だ。

米国「不動産マッチングシステム」の実態

米国における実態をみてみよう。米国では、民間会社が登記情報、住環境に関する情報などの基礎データを一元的に収集管理している。地域の不動産市場ごとに設立されているMLSは、地域のほとんどの不動産業者が持つ物件リストを、基礎データと併せて提供することで、マッチングを効率的に進めている。

 

MLSは中小事業者だけではなく大手不動産業者も参加しており、彼らによる囲い込みもおこらないよう管理されている(囲い込みの禁止等適切な管理を行うインセンティブや、契約を完遂するために仮契約時の情報の信頼性を確認するエスクローという制度が存在する。)。これには、MLSが地域独占の仕組みであるという性格付けが影響している。つまり、地域不動産市場の独占を可能にしている仕組みだからこそ、構成不動産業者はMLSの効率性に重大な関心を寄せるのだ。

 

我が国でマッチング機能を果たしているのは「レインズ」だ。レインズは全国で4つあり、地域不動産市場を超えた地域を対象としている。米国のMLSが自然発生的に誕生した仕組みであるのに対して、レインズは政府が人為的に誕生させたことに起因するのかもしれない。

 

レインズによって、我が国の不動産流通市場における情報提供の一定の効率性が確保されている。しかし、現在のレインズは地域不動産市場としては過大な規模で運営されているため、情報の管理を適切に行うインセンティブがない。近年是正する試みが行われたものの、囲い込みを可能とする情報の操作も可能な状況となっていた。

「買い手の立場に立ったコンサルティング」が重要に

米国ではどの不動産業者もMLSという大きな情報基盤にアクセスできるため、不動産業者の競争力は、「どれだけ買い手の立場に立ったコンサルティングができるか」にかかってくるといわれている。それならば、提供される情報も伝統的な不動産業者が提供したものを深化拡大する必要があろう。つまり、住宅性能表示、建物履歴、マンション管理組合などの管理体制に関する建物情報を豊富に含むものが、情報として提供される必要がある。

 

既に、国が推進する「いえかるて」などにおいて、これらの情報の蓄積が進みつつある。前述のようにこのようなデータベースにはネットワーク外部性が存在するため、それぞれのデータベースが一元化、またはデータベース間の接続が行われることで、その機能は大きく向上する。

 

そもそも、住宅履歴情報やマンションの管理体制にかかる情報などは、不動産売買のデータベースにアクセス可能となることで、管理状況と売買価格、売買確率の関係が明らかになり、本来のねらいが実現されるのではないだろうか。

 

前述のとおり、米国ではリアリストという単一のデータベースにより、不動産の周辺環境、過去の成約価格などの情報が集約されている。MLSがそこから情報を引き出すことで、リスティングの依頼のあった不動産に関する詳細な情報が作り上げられる。我が国においても同様の情報提供体制が整備されることが必要だろう。

 

今後は、マンション管理に関する情報開示や、政府が進めている情報ストック構想の進展やその効果を注視していきたい。

 

 

 

中川 雅之

日本大学経済学部 教授

東証一部に上場しているオープンハウスでは、自社グループが一環となり、物件の見極め、融資・購入から管理まで、オープンハウスにしかできないワンストップサービスをご提供いたします。

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著者紹介

連載「勝つ」ために知っておくべき「アメリカ不動産投資」の基礎知識

※本記事は、オープンハウスのアメリカ不動産投資 海外不動産コラムで2020年1月17日に公開されたものです。