新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

池袋が渋谷、新宿になれない理由

「民」の動きも活発だ。2019年4月に駅南口で西武ホールディングスが、新本社ビル「ダイヤゲート池袋」をオープン。西武線の線路をまたぐビルとして鉄道ファンの目線をくぎ付けにしている。7月には東池袋1丁目で、東急不動産が建設運営する12スクリーン2500席のシネマコンプレックス「キュープラザ池袋」もオープン。ハレザタワーにできるTOHOシネマズと並んで、池袋は映画村の様相を見せ始めている。ハレザタワーの開発運営には東京建物、日本土地建物が参画する。

 

駅西口で開発準備が進む「池袋駅西口地区市街地再開発準備組合」には三菱地所、三菱地所レジデンスの2社が事業協力者として選定されている。この計画は駅西口の東武百貨店を含め開発面積4.5 ha にも及ぶ大規模再開発で、高層ビル3棟や駅前広場の整備が掲げられている。

 

また西池袋1丁目では、ロサ会館を含めたエリアの再開発事業のための準備組合も設立。開発予定地の北側を文化娯楽ゾーン、南側を国際ビジネス交流拠点と位置づけ、2020年春の都市計画決定を目指している。

 

官民挙げての再開発機運で盛り上がる池袋だが、いっぽうでどうしても池袋が渋谷や新宿のような街にはならないような気がしてしまうのは、私だけだろうか。区が掲げるアートもカルチャーも池袋に持ち込むとなると、どこか猥雑なイメージを想起してしまう。せっかくオープンしたHareza池袋周辺を歩き、中池袋公園を訪れても、公園の周辺はラブホテルや風俗店の看板が目につく。

 

渋谷にオープンした高層ビルにはグーグルやミクシィ、サイバーエージェントなどの高感度テナントの名が並ぶが、ハレザタワーは開業が2020年7月に迫る中、いまだに数フロアの床を募集している。今後駅西口に高層ビルが建設されるというが、テナント像がイメージしづらいのが実感だ。

 

「翔んで埼玉」の植民地、池袋がどのようにして羽ばたくのか目が離せない。

 

牧野 知弘

オラガ総研 代表取締役

 

不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

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