「クラウドキッチン」がコロナに倒れた日本の飲食業を救う

新型コロナウイルスの感染拡大、営業自粛で大打撃を受けた飲食業界。そうした飲食店のオーナー、そこで働くシェフを救うべく、OUR KITCHEN株式会社は東京・白金にデリバリーに特化したクラウドキッチン「Our Kitchen」1号店をオープンさせる。クラウドキッチンとは、一般のレストランのように客席を持たず、キッチンだけの店舗を指します。販売の手段はネットによる注文、オンライン決済、そして家庭や会社へ配達するオンラインデリバリーです。しかも、このネット注文によるクラウドキッチンは非接触型ビジネスとしても、今後の成長が期待されている。クラウドキッチン「Our Kitchen」の可能性、その成長性について、OUR KITCHEN株式会社の代表取締役の須藤真希氏が語る。

そもそも「クラウドキッチン」とは何か

OUR KITCHEN株式会社は、2020年8月、東京・白金にデリバリーに特化したクラウドキッチン「Our Kitchen」1号店をオープンします。空き家・空きビル再生の実績が300件以上ある私たちにとって、外食産業への展開は大きな挑戦となりますが、始めるなら今しかありません。新型コロナウイルス感染拡大の影響でお店を閉鎖に追い込まれたり、働く場を失ったりした飲食業関係者の方たちと一緒に、是非この新しいビジネスを成功させたいと考えています。

 

まずは「クラウドキッチン」という聞きなれない言葉からご説明しましょう。

 

クラウドキッチンとは、一般のレストランのように客席を持たず、キッチンだけの店舗を指します。販売の手段はネットよる注文、オンライン決済、そして家庭や会社へ配達するオンラインデリバリーです。都心ではここ1~2年で、Uber Eatsや出前館などの配達員をよく目にするようになりました。彼らのようなデリバリーサイトの普及により、調理だけに専念する飲食業態が日本でも可能になってきました。お客様のいないキッチンだけの店舗なので「ゴーストキッチン」とも呼ばれたりもします。

 

新型コロナの感染拡大によって自宅で楽しめる料理のデリバリーに注目が集まっています。ネット注文によるオンラインデリバリーは「非接触」型ビジネスとしても成長が期待されています。今後もリモートワークや外出自粛は続くと予想され、外出における感染リスクを避け、家庭で食事をするのが大きなトレンドとなっていくのは間違いないでしょう。

 

新規開店に必要な高額の開業資金を必要とせず、初期投資を最低限に抑えられる。
新規開店に必要な高額の開業資金を必要とせず、初期投資を最低限に抑えられる。

 

クラウドキッチンの最大の利点は、新規開店に必要な高額の開業資金を必要とせず、初期投資を最低限に抑えられることです。

 

飲食店をイチから開業しようとすると、賃貸契約料や厨房工事、内装工事などで1000万~2000万円のお金がかかります。そのため、景気が低迷し売り上げが下がると借り入れの返済が滞ります。飲食店の5年生存率は1割、正確にいえば1年で半分の店が閉店に追い込まれるといわれています。これが日本の飲食業の実態です。

 

クラウドキッチンの場合、開業初期コストの中で大きなウェイトを占める場所の確保、店舗設計や内装施工、開業認可や消防法関連の手続きなどはすべて私たちが行ないます。オーナーや料理人は、いい食材を仕入れておいしい料理を提供することに専念できるのです。

 

具体的には、私たちが港区、渋谷区、新宿区などの一等地に、6~10に分けた3坪程度のブースにプロユースのキッチン設備を用意します。かつて放映されていたテレビ番組の『料理の鉄人』のキッチンスタジアムをイメージしていただくといいと思います。本格的な和・洋・中華・フレンチから、ハンバーガーまで何でもつくれるキッチンです。そのブースを月単位でシェフの方や飲食店オーナー、これから飲食店をやりたい人などにお貸しします。つくった料理はネットで注文を取り、デリバリー業者がお客様まで配達するシステムです。

 

クラウドキッチンは日本ではまだなじみのない業態ですが、アメリカではUber元創業者が参入していることは有名で、アメリカをはじめ全世界で、新しい飲食業の業態として認知度を高めています。新型コロナウイルスによって存亡の危機にさらされている世界中の飲食店にとって、このクラウドキッチンは新しい飲食業のインフラとしても注目を集めています。モルガン・スタンレーの調査によると、2017年時点に世界で6%ほどだったフードデリバリー率は、2022年までに11%にまで拡大すると予測されており、新型コロナウイルスの影響もあり、デリバリー市場は今後もさらに成長していくと見込まれています。

 

ちなみに、日本のデリバリー市場規模は、現在、4000億円とも5000億円ともいわれます。飲食業が22兆円もの巨大産業であることを考えればまだまだ未成熟で、クラウドキッチンが大きな将来性を秘めていることは間違いありません。

 

シェフや料理人の再起の場になる

飲食店舗の設計・施工の経験はあるものの、私たちにとっても飲食業におけるビジネススモデルの開発は未知への挑戦となります。しかしながら、クラウドキッチンという新事業への違和感は全くありません。

 

もともと当社のミッションは、「増え続ける空き家・空きビルの再生」にあります。日本に約1000万戸あるとされる空き家・空きビル。少子高齢化、人口減少に拍車がかかっているにも関わらず、この国では今も年間80~90万戸の新築を造り続けています。今後、ますます大きな社会問題となる空き家・空きビル問題を解決しようと、私たちはそれらを住宅にリフォームしたり、店舗やオフィスに改造したりしてきました。

 

そういう意味で、今はクラウドキッチンです。当初計画では2021年以降と考えていましたが、今年に入ってのんびりしていられない状況が生まれました。そう、新型コロナウイルスの感染拡大です。

 

OurKitchenはシェフや料理人の再起の場を提供する。
OurKitchenはシェフや料理人の再起の場を提供する。

 

創業から150年間も続いた東京・歌舞伎座前の老舗弁当屋が倒産しました。新型コロナウイルス感染予防のための興行自粛が長引いたことが原因です。これは象徴的な一例にすぎず、日本の飲食業は今、かつて経験したことのない危機的状況にあります。売り上げがなく、家賃が払えなくなった店、先が見えず廃業を検討する店主、人員削減のため解雇された料理人など、パニックに等しい状況が起きています。ミシュランの三つ星をとっていたシェフでさえ職を失う時代となりました。

 

誰かが今、行動を起こさないと飲食店は立ち行かなくなり、腕のいいシェフや料理人が路頭に迷うことになりかねません。

 

「このままではいけない」というのが私の正直な思いです。

 

飲食は日本の文化です。これだけ安くて、たくさんの料理を楽しめる国は日本しかありません。ミシュランの星の数が一番多いのは東京です。幸いなことに私たちが始めるクラウドキッチンは最小限の初期投資で開業することができます。クラウドキッチンを再起の場として活用してほしい、という思いから、私はこのプロジェクトを1年前倒ししてスタートさせました。

 

OUR KITCHEN株式会社 代表取締役

高校卒業後、イタリアミラノに留学しプロダクトデザインを学ぶ。6年半の留学を終え帰国後、デザイン事務所、建築事務所で経験を積む。趣味はゴルフ。

著者紹介

連載OUR KITCHEN株式会社が挑む「社会貢献」という不動産投資の新境地

取材・構成/平尾 俊郎
※本インタビューは、2020年5月14日に収録したものです。

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。