新人眼科医でも「安全な白内障手術」が可能になった理由とは?

いまや白内障手術は「安全であること」が当たり前になっていますが、実は約30年前までは、白内障手術は今よりはるかに困難で、非常に原始的で危険な方法がとられていました。今回は、『「見える」を取り戻す白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、眼科手術が近代的進歩を遂げた理由について解説します。

手術顕微鏡の登場は、眼科手術の近代的進歩の始まり

「目」はとても小さな器官であるため、手術には顕微鏡の助けが不可欠です。現在では当たり前のように使われている眼科用手術顕微鏡ですが、顕微鏡がなかった時代は肉眼で見るしか方法がなく、できることに限りがありました。

 

顕微鏡が眼科手術の分野で使われるようになったことは、眼科手術の近代的進歩の始まりといっても過言ではありません。

 

眼科領域における顕微鏡下の手術(マイクロサージャリー)の歴史は、1966年に西ドイツのチュービンゲン大学で幕を開けました。

 

我が国では、独自に顕微鏡手術を始めていた奈良県天理市の永田誠先生、愛知県名古屋市の杉田慎一郎先生が中心となり、眼科顕微鏡手術の研究会を発足することになりました。第1回の眼科顕微鏡手術の会は1970年2月に天理病院で行われました。眼科医、光学メーカー、機器メーカーなどが参集し、52名の参加者があったようです。

 

こうした産学協同での熱心な取り組みが、現在行われているマイクロサージャリーの礎となりました。

 

現在の眼科手術では、拡大して大きく見えることが手術の大前提です。どんな名人でも、見えなければ下手な手術しかできません。人の脳は大きく見えると細かい操作が正確にできるようになっているようです。また、小さいとはっきりしない立体感が大きく見えるとはっきりしてきます。

 

さらには、眼科手術に顕微鏡が導入されたことで、権威のあるドクターだけでなく、すべての医師に手術がうまくなるチャンスが与えられました。肉眼で手術を行っていたときには、経験値のみが頼りで、経験を積んでいても思うような結果が得られないことは多々ありました。そのため経験の少ない未熟な医師すべてに執刀を任せることができなかったのです。

 

不思議なもので、顕微鏡で術野を拡大することで、誰でも緻密に手を動かすことができます。見えるようになったからこそ、すべての医師が、自身の技術を高めるために研鑽を積むことができるようになったともいえます。同時に、顕微鏡により見えるようになったからこそ、手術道具も工夫できるようになり進歩を遂げました。

光学顕微鏡に加え「デジタル手術」も登場!

このように発展を遂げてきた顕微鏡ですが、従来の光学顕微鏡による手術に加え、デジタル手術も登場しています。

 

光学顕微鏡による手術

対象となるものをレンズで拡大し、それを接眼レンズを通して観察しながら手術を行います。光学顕微鏡は学校の理科室で覗いたことがある方も多いかもしれません。原理は同じです。立体的に見えます。

 

デジタル手術

光学顕微鏡にある接眼レンズがなく、その代わりにカメラが付いています。モニターで3D映像として観察します。モニターを大きくすると立体感の優れた映像を見ることができます。執刀医だけではなく、手術室にいるスタッフ全員が執刀医と同じ立体感のある手術映像を見ることができ、手術教育にも優れています。

 

また撮影した映像は3Dで保存することができ、症例検討会や勉強会などで3D映像を用いて臨場感のある教育が可能となります。

 

現在は、デジタル技術が進歩したことから、患部を見やすいように色彩やコントラストを加味したり、ガイダンス情報を映像の中に入れ込んだりと、便利な機能が付加されています。顕微鏡の光量を落としても画像処理により明るく表示できるため、少ない光量で手術を行うことができ、患者さんのまぶしさが減り、網膜への光毒性を減らすことができます。

 

はんがい眼科の手術室です。すべて最新式の機器を取りそろえており、患者さんの負担の軽減と、安心・安全な手術を実現しています。
はんがい眼科の手術室です。すべて最新式の機器を取りそろえており、患者さんの負担の軽減と、安心・安全な手術を実現しています。

 

 

また執刀医は、接眼レンズを長時間同じ姿勢でのぞき続けなければいけないという重労働から解放されるようにもなりました。実際に、腰痛が治ったという話も聞きます。

 

今後は、4K〜8K映像が標準規格となり、さらに画質の良いモニターが開発されるでしょう。さらには、今後ヴァーチャルリアリティ映像など映像技術の進歩は進んでいくと考えられます。今はまだ広くは普及していないデジタル手術ですが、技術の進歩が重なって主流となっていく可能性を秘めています。

 

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
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https://hangai.org/cataract-seminar/

著者紹介

連載近くも、遠くも、快適に…「見える」を取り戻す白内障手術

「見える」を取り戻す白内障手術

「見える」を取り戻す白内障手術

板谷 正紀

幻冬舎

レーザー白内障手術は、安全・快適・短時間に「見えない」という病気状態を解決し、「見える」を取り戻し、さらに快適に見えるを手に入れるまでに進化しました。この本では、進化した多焦点レンズ、レーザー白内障手術の最新情…