中小企業800社を調査「理念」と「売上」に関係はあったか?

社内は既存事業で手一杯なのに、なかなか業績が上がらない、と悩んでいる中小企業は少なくありません。「伸び悩む企業」の経営者がいますぐ実践すべきポイントとは、一体何なのでしょうか。本連載は原田将司氏の著書『スモールカンパニー 本気の経営加速ノート』より一部を抜粋し、大きな利益を生む小さな経営のヒントをご紹介します。

「がんばってもいっこうに業績が伸びない」原因は?

多くの会社では理念が全社員の共通の思考に至らず、額縁に飾られた単なる“インテリア”となり、形骸化してしまっています。こういう会社は意外に多いものです。

 

理念は会社が進むべき方向を指し示し、選択の迷いをなくし、全社員の志向を一致させてくれる大切なものです。

 

しかし、ここが曖昧だと、会社を伸ばすための根源になる社長の思考力・意思決定力が完全にブレてしまい、場当たり的なその場しのぎの判断によって社員たちは大混乱になります。こうなると、もう何をどうしてもうまくいきません。まるで、くるくると回転し、足元がぐらつきながら弓を射るようなもので、なかなか的に命中しないのです。

 

混乱した部下は思考を停止させ、保身のため、ミスを恐れて自発的な活動をストップするようになります。

 

そして、社長のほうも、自分の思考が部下たちにまったく理解されないので社内で孤立し、周囲のサポートをうまく引き出せず、迷走することになります。こうした状況が目先の収益維持で忙殺され、がんばってもいっこうに業績が伸びない大きな理由の一つになっています。

目的を見失った企業は「成長」や「存続」は不可能

では一体、経営の目的とは何でしょうか。

 

かの有名な経営学の世界的権威ピーター・F・ドラッカー博士は「企業(経営)の目的は顧客を創造すること」だと説いています。顧客の集合体としての市場を創り出すことが企業の目的だという意味だそうですが、なんだか究極的過ぎてピンと来ない方も多いのではないでしょうか。

 

皆さんが社長になったキッカケはさまざまだと思います。しかし「経営」そのものを目的として社長になる人はいないでしょう。経営はあなたの目的ではありません。「“顧客を創造したくて”社長になりました」という人を私は見たことがありません。事業活動を通して“何かやりたいこと”があって、それを実現するために企業を経営しているはずです。その社長がやりたいことの延長線上に顧客の創造があるとドラッカー博士は説いているのです。

 

しかし、伸び悩んでいる多くの会社では、もともと社長の中に漠然とした“何かやりたいこと”が、うっすらとあるけども、それらをより具体的に煮詰めて言語化できていないので、理念と目標が結びついていないという曖昧な状態でいます。

 

これは創業者でも2代目、3代目以降の後継社長でも同じことです。

 

例えば、「親の後を継がなければならなかったので社長になった」という人であっても、事業を継続していく中で“何かやりたいこと、実現したいこと”が生まれているはずです。それが社長の目的になり、経営の目的になります。

 

目的を明確にし、言語化したものが理念であり、社員と共有することで共通の目的になり、その結果、社員や周囲の協力を得て達成に向かうわけですが、ここを疎かにして、努力が実を結ばないまま苦しんでいる会社が多いのです。

 

目的が曖昧なまま業務に埋没する日々を過ごす中で、いつの間にか「事業存続」や「雇用維持」が目的になってしまっている会社もたくさんありますが、それらは大きな間違いです。必要要件であっても決して「目的」ではないはずです。目的を見失った企業には、成長も存続もありません。

 

実際に多くの伸び悩む企業では、目的の言語化、理念について、「ちゃんとしたものがあるといいね、でもなくても大丈夫」と思っているようです。実務に埋没しているうちに後回しになってしまっているのではないでしょうか。

言語化された理念を「大義」として掲げよ!

かつて経営破たんした日本航空(JAL)を再生した京セラ創業者の稲盛元会長も、着任早々にJALの理念を見直して『全社員の物心両面の幸福』という文言を新たに追加して、実現のプロセスを事業計画化し具体的な数値目標に結びつけて、全社員に浸透させたことで、見事に再生を成し遂げました。

 

JALのような経営資源が有り余る大企業ですら、組織全体で志向を一致させようとがんばっているのです。

 

ましてや、スモールカンパニーが大きな価値を生み、大きく成長するためには、なおのことではないでしょうか。

 

スモールカンパニーが勝つために必要な周囲の協力を得るためには、言語化された理念を「大義」として掲げ、そしてそれを実現する道程を具体的な目標として示す必要があるのです。

 

時々、突然流星のごとく現れて、急成長を遂げたあと、すぐに消えて行く会社もありますが、こういう会社は目的を言語化できず、理念を後回しにしたり、または、よく考えずにとってつけたような浅い理念を「大義」として掲げたことで、敗北に追い込まれた典型的な例だといえます。

 

 

原田 将司
リソースアクティベーション株式会社 代表取締役
株式会社ことぷろ 代表取締役

加速経営専門コンサルタント
リソースアクティベーション株式会社 代表取締役
株式会社ことぷろ 代表取締役

2006年、経営コンサルティングの「リソースアクティベーション株式会社」を設立。本業を強くする「経営資源の再起動。」をコンセプトとし、数々の営業支援、経営改革プロジェクトを成功させている。M&Aや事業承継支援プロジェクトにも積極的に貢献し、2016年、事業承継型M&Aにて「株式会社ことぷろ」代表取締役に就任。後継者不足に悩む事業会社を直接承継し、次世代型の経営変革を担うビジネスモデル構築に挑戦中。

いまや、日本の企業総数は400万を超えているといわれている。その97%を占める中小企業の社長に向けて「社員が活躍して、充実したワークライフを実現する。そして、社長は“やりたいこと"を実現する。」という熱いメッセージを発信し、様々な経営課題の解決にあたる。

著者紹介

連載目から鱗の中小企業マネジメント!スモールカンパニー 本気の経営加速ノート

  • 【新連載】 中小企業800社を調査「理念」と「売上」に関係はあったか?
スモールカンパニー 本気の経営加速ノート

スモールカンパニー 本気の経営加速ノート

原田 将司

クロスメディア・パブリッシング

2006年5月の新会社法施行により多くの会社が誕生しました。かく言う著者もその一人。 あれから10年、9割以上の会社が事実上の休眠・廃業に追い込まれています。当時スタートした起業家の多くが、これを証明するかの如くいつ…

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