年々増加する「うつ病」。なかでも40代~60代が総患者数の多くを占める事実をご存知でしょうか。「50代になれば、定年までの期間はもはや消化試合」と自分に言い聞かせ、だましだまし働きつつも、ようやく定年を迎えたころには人生を楽しむ気力さえ残っていなかったという場合は珍しくないのです。※本連載は、脳科学・心の問題の専門家である高田明和氏の著書『定年を病にしない』(ウェッジ)より一部を抜粋し、定年をきっかけとする深刻な問題を抱えた人々の事例をもとに、第二の人生を明るく歩むための「定年後の自分を育てる」ヒントを紹介します。

「出世より健康」社畜やめた結果、私生活まで無気力に

【事例2】

自動車会社に勤務する高雄(52歳)は子どもの頃から努力家で、激務にも愚痴をこぼすことなく働いてきた。ところが50歳のとき、すい臓を悪くして入院した。ちょうどそのとき、出世頭の同期がうつで休職。優秀でも健康を害してしまえばおしまいだと思った高雄の緊張感は切れ、虚しさとともに、このままでは命を落としかねないと思った。人間関係にも嫌気がさしていた。そのため、これからは出世をあきらめ、心身ともに健康に気をつけ、プライベートを充実させようと固く心に誓った。不思議なことに高雄は、清々しさすら感じていた。

 

それからは心穏やかに過ごせているが、仕事だけでなく、家族とともに過ごす時間にも興味がなくなってしまった。高雄のいまの目標は、とにかく定年まで自分を誤魔化しながら勤め上げ、定年後は孤高の日々を目指すことだった。

充実した人生には「意欲」が不可欠

ゆとり世代(1987~2004年生まれ)とバブル世代(1965~69年生まれ)の問題として取り上げられることで多いのが、意欲がないことです。もちろんすべての人がそうではありませんが、30代くらいから会社に尽くして働くことに疑問をもち、40代で出世という点では先が見えてしまう人は少なくありません。

 

そして、50代になれば消化試合をこなすように、定年まで会社にしがみつく人はめずらしくはありません。そのため近年では、バブル世代からさらに下の45歳以上の社員を対象にリストラを進める会社も増えましたが、バブル期に入社したベテラン社員の意識改革に取り組む会社も増えています。この年代の社員が新たなチャレンジをしなくなれば、会社にとってお荷物になるだけなのは目に見えています。

 

高雄さんの場合は、入院が意欲をなくす引き金となりましたが、それまではストイックでタフだったといえるでしょう。ただ、病気にならなくても、出世頭の同期がうつで休職しなくても、近い将来、意欲をなくしていた可能性は高かったでしょう。

 

病気になったことで出世をあきらめ、心穏やかに過ごせているのなら、ある意味、高雄さんにとってはいいとも考えられるのですが、家族に興味がなくなったのは大きな問題です。このままでは定年後に充実した日々が訪れることはないでしょう。

 

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定年を病にしない

定年を病にしない

高田 明和

ウェッジ

すべては50代でのマインドセット次第! 定年後の男性を待ち受ける悩みは様々です。「意欲がわかない」「出不精になる」「自分を責める」「暴言を吐く」「焦燥感にかられる」「居場所がなく孤独を感じる」「人付き合いがうま…

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