「黒字倒産」する仕組み、あなたは正しく答えられますか?

もしお子さんに「黒字倒産ってなに?」と質問されたら、あなたは答えられるでしょうか。もしかしたら「知っているつもり」になっているだけで、正しく理解できていないかもしれませんよ。軽妙なコラムで多数のファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、経済初心者のための超入門講座を開講! 第9回は「会社の黒字倒産」について解説します。

会社の諸活動により「現金」「利益」の動きは変化する

会社のお金としていちばん重要なのは「利益」であると考えている人は多いと思います。しかし、利益と同じくらい重要なのは「現金(預金等、すぐに現金になるものを含む、以下同様)の残高」かもしれません。

 

儲かっている会社でも、現金が足りずに倒産してしまうことがあります。これが「黒字倒産」です。反対に、赤字が続いている会社でも、現金がある間は倒産せずにすみます。そこで本記事では、会社の利益とキャッシュフロー(現金の出入り)について考えてみましょう。

 

利益と現金の違いというと、まず思いつくのは「銀行借入」です。

 

会社が黒字でも、銀行が「金を返してくれ」といってくれば、現金が足りなくて倒産するかもしれません。赤字が続いていても、銀行が金を貸してくれるならば、給料も払えるし、原材料も仕入れることができるし、営業活動も続けることができるでしょう。

 

それ以外にも「利益」と「現金残高」の動きが違うということは頻繁に起こります。まずは、会社の諸活動によって現金と利益がどう変化するか見ていきましょう。

儲かっているのに「現金が急速に減っていく」ケース

1万円で材料を仕入れ、労働者を雇って賃金を1万円払い、製品を作ります。費用として材料費と給料分だけ現金が出て行きます。製品は2万円の価値があるので、利益はゼロですが、現金は2万円減っています。

 

この製品を3万円で買ってくれた客がいたとします。1万円の利益ですね。でも、「代金はあとで払うから、少し待ってほしい」といわれたら、「利益は出ているのに現金は減っている」ということになります。

 

そうした客が大勢いると、儲かっているのに現金は急速に減っていきます。下手をすると、材料を仕入れる金がない、社員の給料日に給料が払えない、といったことが起こります。銀行に返済する金が用意できなければ、倒産してしまう可能性すらあります。これが黒字倒産です。

 

次の月に、会社はなにも作らずなにもしませんでしたが、客が代金を払ってきました。そうなると、利益はゼロですが、現金が3万円増えることになります。

 

そうしたやりとりを決算書に記入するときは、

 

「3万円で売ったが、その買い手に3万円貸した(バランスシートの資産の部に貸付金を記載します)」

 

「客が3万円を返して来た(バランスシートの資産の部の貸付金を減らし、現金を増やします)」

 

という形にします。なお、考え方は上記の通りですが、実務では貸付金ではなく売掛金と書くようです。

 

商品が売れたからといって、すぐに現金が増えるわけではなく…
商品が売れたからといって、すぐに現金が増えるわけではなく…

資金の増減を記載する「キャッシュフロー計算書」

上記の取引について、利益と現金の関係を考えてみましょう。

 

最初の月には、利益が1万円ありましたが、貸付金が3万円増えただけで、現金は2万円減っています。

 

利益は現金を増やす要因ですが、だれかに金を貸すのは現金を減らす要因なので、「利益で現金が1万円増えたが、貸付金の増加で現金が3万円減ったので、差し引き2万円の減少だった」という書類を作ります。

 

次の月には、「利益はゼロだったが貸付金が返って来たので現金が3万円増えた」という書類を作るわけですね。

 

この書類のことを「キャッシュフロー計算書」と呼びます。

 

キャッシュフロー計算書には、製品を作って売るといった行為だけでなく、銀行から借りた、銀行に返した、工場を建てるために現金を支払った、土地を売って現金を受け取った、土地を売っても現金を受け取らずに買い手に対する貸付金が増えるだけだった、といった会社の資金の増減のすべてを記載します。

 

これを見ると、「儲かっているのに現金が減っているから危険だ。現金が減っている理由を見つけて対策を取ろう」といったことが可能になるわけです。

利益と現金の違いに注意…「減価償却」という考え方

利益と現金の違いについて考えるとき、少しわかりにくいのが減価償却です。

 

100万円の機械を買って、製品を作っている企業があるとします。機械は、100万個の製品を作ると寿命で壊れてしまいます。その場合、「製品を1個作るために機械が1円分だけ擦り減る」と考えて、利益から1円を差し引くのです。それが減価償却です。

 

10円の材料費で機械を使って15円の製品を作って売ると、利益は5円のように見えますが、減価償却分を加味して、「機械が1円分だけ擦り減っているから、利益は4円」という計算をします。

 

この場合、「現金は5円増えているけれども、1円の減価償却をしたから利益は4円しかない」ということになりますが、これを逆さから読むと「利益は4円しかないけれど、減価償却分を戻してやると現金が5円増えていることがわかる」ということになります。したがって、キャッシュフロー計算書にはその旨を記載します。

 

本稿は、以上です。なお、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。

 

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義

経済評論家

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済初心者のための「超入門」講座

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧