新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

越後湯沢リゾートマンションを買う中国人

だが、この世の中、「捨てる神あれば拾う神あり」とも言われる。まさに、今回ダイレクトメールを送り付けてきた業者は、「拾う神」というよりも、負動産になるどころか、ほとんど腐りかけている「腐動産」に群がるバクテリアのような存在ともいえるだろう。

 

バクテリアは腐乱死体を食べてしまうので、死体は自然に還っていくはずだ。では、彼らの狙いはなんだろう。

 

おそらく、購入当初より30年以上がたち、すでに厄介者となっているリゾートマンションに困惑する(おそらく)高齢者と思われる所有者の弱みにつけこんで、カネを払わせて物件を取得する。そしてこれをリフォームして、スキーに興味を持ち始めた中国人にでも高値で売りつける作戦だと思われる。

 

オーストラリアや欧米からニセコや白馬にやってくる外国人富裕層のスキーヤー は、越後湯沢には興味を示さない。越後湯沢は雪質が重く、彼らの「いいね」は得られないからだ。いっぽう最近スキーを始めた中国や香港のスキーヤーは、東京から新幹線でアクセスできる越後湯沢なら、ただスキーをやりたいだけだから買ってしまう。平成バブル時の日本人と同じ思考回路だ。ここにつけこもうというわけだ。

 

実際に最近では、越後湯沢のマンションを買いたいという中国などのアジア人が出始めているという噂も聞こえ始めた。

 

さて、実はこの話にはオチがある。業者が一生懸命送り付けてくるダイレクトメールは、ターゲットとするリゾートマンションの登記簿謄本を閲覧して、所有者として登記されている所有者宛に送られてきていると思われる。

 

ところが、最近では所有者の一部に相続が発生している。30年も前のバブル時代に買った中高年の所有者の中には、すでに亡くなっている人も多いのだ。相続人は、親が残したこんな出血続きのマンションなんて相続したくない。それでも相続はされてしまう。

 

結果、何をするか。登記をせずに放置しているのだ。相続登記をしなければ、相続したことを表明していないことになるので、外部からは雲隠れできる。最近は多くの「負動産」が相続登記されずに、「所有者不明」状態に陥っている。マンションの場合は、管理組合に相続をした旨の連絡もしないので、管理費や修繕積立金が未納になっても管理組合は請求先がわからずに困惑しているのが実態だ。だからせっかくのダイレクトメールも現在の相続人の手元には届いていないケースが多いのだ。

 

買い手側も「半分騙し」だが、売り手側も「半分隠蔽」の構図にあるのが、この話の裏側なのだ。ついに始まった不動産の「腐動産」化。そこで登場するのが腐動産を喰いつくした挙句に、何も知らない新たな客に高値で売りつけるバクテリアたちだ。

 

その先に買った中国人がどうなろうと知ったことではない。不動産屋という商売、楽しくて仕方がないのだ。

 

牧野 知弘

オラガ総研 代表取締役

 

不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

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