コロナの爪痕「深刻な不況」の収束は早い…経済評論家が解説

これからの時代を経済的に困窮することなく生きるには、「経済センス」を磨くことが不可欠です。経済コラムで多くのファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、身近なテーマを読み解きます。第21回は、戦後最悪の落ち込みが予想されるコロナ不況も、回復にはさほど時間がかからない理由を解説します。

落ち込みは戦後最悪でも、深刻な不況は「短期終了」

今回の「コロナ不況」はきわめて深刻です。4月分、5月分の経済統計は、おそらく壊滅的な数字が並ぶことでしょう。石油ショック当時、バブル崩壊時、リーマン・ショック当時の落ち込みをはるかに上回る、戦後最悪の落ち込みであることは疑いないでしょう。しかし、回復は早いはずです。

 

バブル崩壊時は、バブルの余熱が残っていたため、全面的な落ち込みとはならず、ダラダラとした悪化でした。バブル崩壊後の金融危機時は、公的資金の注入により金融仲介機能が回復するまで貸し渋り等が続き、回復には時間がかかりました。リーマン・ショック時も、米国の景気回復に時間を要したため、日本の景気回復にも時間がかかりました。

 

これらの不況は「金がないから買えない」という需要そのものの落ち込みでした。失業したから金がない、という人も多かったですし、銀行が貸し渋りをしているから買いたいものが買えない、という企業も多かったわけです。

 

それらと比較すると、今回は「買いたいけれども、外出できないから買えない」という表面的な落ち込みなので、自粛が解ければ消費の回復は早そうです。

 

ちなみに石油ショック時は、インフレを止めるために厳しい財政金融政策による需要の押さえ込みがなされたものでしたから、異質な不況だったといえるでしょう。今回はインフレ抑制の必要もなさそうですから、政府日銀が需要の回復を邪魔することもないでしょう。

 

もっとも、インフレについては、可能性が皆無ではないと筆者は思っていますが、リスクシナリオなので今回は考えないことにしましょう。

 

自粛緩和後についても、感染を怖がりながら、三密を避けながらの外出でしょうから、需要がどこまで戻るかは、わかりません。その後も感染が再拡大して自粛が要請され、行きつ戻りつ回復が続くのかもしれません。

 

しかしそれでも、「深刻な不況」は短期間で終わるはずです。そして多くの企業は、資金繰りが保てているうちに売上が回復し、倒産の危機は免れることになるでしょう。その後も、景気回復が本格的ではない分だけ売上不振には悩みながらも、倒産はせずに生き延びる企業が多いでしょう。

 

企業が「倒産する」のと「倒産しそう」なのとでは大違いです。たとえるなら、嵐で傾いた船が「転覆する」「転覆しない」という違いですから、この差は重要です。

 

あああ
「深刻な不況」は短期間で終了。多くの企業は倒産の危機を免れる

「少子高齢化」が失業率増加のブレーキに

倒産が限定的だとすると、失業率はそれほど上昇しないと期待されます。短期的には摩擦的な失業が増加するかもしれませんが、早期に減少するでしょう。そう考える理由のひとつは、少子高齢化が労働力不足をもたらすからです。

 

少子高齢化は、現役世代の人数を減らしますが、総人口は減らさないので、使う人は減らずに作る人だけが減り、もの(財およびサービス、以下同様)が不足します。すると、「現役世代は失業等していないでしっかり働いてものを作れ」といわれるわけです。

 

それだけではありません。若者の需要は自動車等、全自動ロボットが作るものも多い一方で、高齢者の需要は医療や介護といった労働集約的なものが多いのです。したがって、若者が減って自動車が売れなくなり、高齢者が増えて医療介護サービスが増えると、GDPは変化しなくても労働力が不足する、というわけです。

 

失業率がそれほど高まらないと考えるもうひとつの理由は、そもそも景気の波が少子高齢化によって小さくなっているからです。高齢者は所得も消費も安定していますから、経済に占める高齢者の比率が高まると景気が安定するのです。

 

加えて、高齢者向けのサービスに従事している現役世代も所得が安定しているので消費も安定しています。

 

極端な場合、現役世代が全員で高齢者の介護をしている経済には、景気変動はありません。もちろん、実際にはそんなことはありえませんが、そちらの方向に経済が近づきつつある、ということは疑いありませんから。

コロナ騒動が収束すれば「黄金時代」が来る

筆者はコロナの前、「少子高齢化による労働力不足で失業のない黄金時代が来る」と予想していました。結果としては外れたわけですが、考え方が間違えていたわけではないと思っていますし、「コロナ騒動が収束すれば黄金時代が来る」といまでも思っています。ちなみに、筆者が最初に「少子高齢化で黄金時代が来る」といいはじめたのは、リーマン・ショックの直前でした。

 

結果としては完璧に外れたわけですが、筆者はむしろ自信を深めました。あれだけ深刻な不況であったにもかかわらず、失業率はITバブル崩壊のときと同じだったからです。

 

したがって今回も、リーマン・ショックよりはるかに深刻な不況であるにもかかわらず、リーマン・ショック程度の失業率に止まり、しかも比較的短期間で低下すると期待しています。もちろん、新型コロナの今後の感染再拡大の状況次第ではありますが。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。

 

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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