相続税の税務調査の実地調査件数は年間1万2,000件以上。申告漏れのなかでは「現金や預貯金」が最も多く、全体の3割を占めるといわれています。なぜ税務署は、未申告の現金や預貯金を見つけることができるのでしょうか。相続税申告200件以上を経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士が、実例をもとに、税務調査の実態と調査を見越した相続税対策について解説していきます。

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身に覚えがない…「預金口座の申告漏れ」

以前相続税申告後に行われた税務調査の立ち合った際に、こんなことがありました。

 

調査対象者は関東近郊在住で、遺産総額が約1億5千万円位の方でした。通常、相続税の税務調査に入られる方の遺産規模は3億円を超えることがほとんどですので、一般的な水準よりも少ない財産額であったことが印象的です。

 

実地調査当日、税務署の調査官からひと通り定型的な質問を受けた後で、相続人(お子様)に対し、「近隣のA銀行B支店にお父様(被相続人)名義の預金がありませんでしたか?」という質問がされました。お子様にとってまったく身に覚えのない預金で、実際に亡くなったお父様もその支店にお口座は持っていませんでした。当然相続税の申告においても計上していないものでした。

 

 

調査官はどういった意図でこんな質問をしたのでしょうか。

 

その後の調査官とのやり取りで、実は近所(同じ街区)にお父様と同姓同名の方が住んでいたことが分かりました。調査官がピンポイントで質問した預金口座は、この同姓同名の方の口座でした。しかも偶然は重なるもので、その同姓同名の方もたまたま同時期に亡くなっていたそうです。税務署側が、「この口座がお父様の相続税申告において計上漏れであったのではないか」と、完全に誤解していたことが判明しました。

 

税務署は、調査にあたって被相続人の住所の履歴、勤務地の履歴を調べます。これは生前の住所地や勤務地の周辺の金融機関に被相続人名義の口座がないか、申告漏れがないかを確認することが目的の一つにあるようです。近隣の預金口座をしらみつぶしに調べるわけです。今回紹介した事例も、言葉は悪いかも知れませんが、このような原始的な調査手法を行っていたために生じた誤解であったと言えます。

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