日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、母の認知症に端を発した相続問題をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

解説:相続人全員の同意で遺産分割のやり直し可能

一度成立した遺産分割協議であっても、相続人全員の同意があればやり直すことは可能です。しかし、今回の事例では、対象となる遺産がすでにないわけですから、このあと裁判になっても何も解決しないでしょう。

 

それよりも心配なのは、認知症を患った母の存在です。このあと母の相続が発生した場合、どうなるでしょうか。父=夫が亡くなった際、全財産を長男が相続しているので、母の遺産はそれほど多くないと推測されますが、妹は兄に大きな不信感を抱いていますし、長男はお金にルーズな部分があるようなので、少額であっても揉める可能性はあります。このように相続の現場では、認知症はよく問題になることです。よくあるのが、被相続人が認知症になった場合です。

 

相続の相談に来る方のほとんどは、ピンピンコロリが前提で、相続対策を考えています。しかし認知症などの症状が進んでしまった場合、そこから先は、相続対策は一切できなくなってしまうということです。

 

厚生労働省のデータによれば、65歳以上の28%はすでに認知症であるかその疑いがあるといいます。相続対策よりも、認知症対策の方が緊急度、重要度が高いかもしれません。

 

認知症でよく争点になるのが、遺言書。せっかく被相続人が遺言書を残してくれたのに、「遺言書を書いたときにはすでに認知症だったから、この遺言書は無効だ!」とトラブルが起きるのです。

 

このようなトラブルが起きないよう、遺言書は公正証書遺言をおすすめします。安全性と確実性が非常に高い遺言書で、さらに作成の前後1ヵ月以内に、主治医に「認知症ではない」という診断書をもらっておくと、「認知症だ!」と否認される恐れもなくなるでしょう。

 

【動画/筆者が「相続の認知症対策にも有効な家族信託」について分かりやすく解説】

 

解説:橘慶太
円満相続税理士法人

 

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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