「目の悩み」で受診したら脳の病気が発覚…「眼底検査」の実際

「黄斑」という器官には、ものを見るのに必要な視神経が集まっていて、私たちの視界を常に支えています。そのため常に強いストレスが掛かっており、悪い影響を与える生活習慣を続けることで、病気になってしまうことがあります。今回は、はんがい眼科・板谷正紀理事長の著書『目の悩みは眼底を疑いなさい「見える」を支える“黄斑”のチカラ』より一部を抜粋し、疲れ目と間違えやすい「黄斑の病気」と、そのチェック方法を紹介します。

はんがい先生の「診察の流れ」

「見えにくくなりました」「黒いものが急に見えるようになった」などと言って当院を受診される患者さんに私はいつも必ず伝えることがあります。

 

患者さんと私の間には大きな4Kモニターがあります。そこに撮影した患者さんの眼底データを大写しにします。

 

【「見えにくくなりました」という患者さん:Aさんには…】

 

①まず、画角200度の超広角走査型レーザー検眼鏡の画像をお見せして、

 

下方を白内障の影が覆い隠し黄斑部も半ば隠れている
[図表1]患者さんにお見せする、超広角レーザー検眼鏡所見 下方を白内障の影が覆い隠し黄斑部も半ば隠れている

 

「ここに影のようなものがあり眼底が隠れています。これは白内障の濁りの影です。影が黄斑にかかり始めているため視力が低下しているようです」と説明。

 

OCT画像を大写しにして

 

白内障でノイズの多い画像だが黄斑のくぼみと平行なラインは正常に見える
[図表2]患者さんにお見せするOCT画像 白内障でノイズの多い画像だが黄斑のくぼみと平行なラインは正常に見える

 

「黄斑は、きれいなくぼみがあり正常です。4本のラインが途切れることなく平行に走っていますね。これは、光を感じる細胞が健康であることを示しています。緑内障もなく、黄斑は正常ですので、視力が落ちている原因は100%白内障にありそうです」と説明。

 

【「左目に黒いものが急に見えるようになった」患者さん:Bさんには…】

 

①左目の超広角走査型レーザー検眼鏡の画像をお見せして、

 

[図表3]超広角走査型レーザー検眼鏡の画像

 

「ここにリング状のものが見えますね。これが見えているのです。グリア環と言います。これはもともと網膜とくっいている硝子体が網膜から離れたとき現れる濁りです。視神経乳頭のまわりについていた硝子体の一部が見えているのです。

 

[図表]視神経乳頭の位置

 

この硝子体が網膜から離れることを『後部硝子体剥離』といいます。誰にでも加齢とともにおこる生理的現象で、病気ではありません。

 

後部硝子体剥離が急におきたとき、一部の方に網膜に孔があくことがあり、これが有名な網膜剥離の始まりなのですが、ご覧のようにBさんの網膜には孔があいていませんのでご心配いりません」と説明。

 

②左目のOCT画像を大写しにして

 

[図表]左目のOCT画像

 

「黄斑は、きれいなくぼみがあり、4本のラインが途切れることなく平行に走っていますので、健康です」と説明。

 

③右目のOCT画像を見せて

 

[図表]右目のOCT画像

 

「網膜の上に見えるラインが硝子体のいちばん後ろの部分である後部硝子体皮質です。右目はまだ硝子体が一部網膜とくっついています」と説明。

 

③左目のOCT画像を再度見せて

「でも、左目はもう後部硝子体皮質が見えませんね。後部硝子体剥離がおきたからです。

 

[図表]正常な黄斑とBさんの黄斑の比較と、後部硝子体剥離の図解

 

右目にはまだおきていませんので、今後左目と同じように、黒いものが見えるようになるときが来ると思います。そのときは、必ず今日のように受診して眼底の検査を受けてください」と説明。

目の検査で「脳の病気」が発覚

眼底検査を受ければ加齢性黄斑変性や黄斑浮腫だけでなく、網膜に関するほとんどすべての病気(緑内障、網膜剥離、視神経炎など)が見つかります。また、それだけではなく、高血圧症、動脈硬化、糖尿病、それに脳の疾患(脳圧亢進など)が見つかることもあります。

 

人は心の動きが目に現れやすいので「目はこころの窓」といったりしますが、それでいくと眼底はさながら「身体の窓」といったところでしょうか? 

 

誰でも歳をとればからだに不具合が出るものです。その不具合をいち早く見つけて丁寧なケアができるかどうかが、健康な老後を送れるかどうかの分かれ目になります。

 

ご自分の眼底を一度は検査してご覧になってはいかがでしょうか? 

 

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

 

 

【他の記事も見る】

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

https://eyeblog-hangai.com/
▼多焦点白内障手術無料説明会 開催中!▼
http://seminar.hangai.org/multifocal_cataractsurgery/

著者紹介

連載眼科理事長が解説!「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

板谷 正紀

幻冬舎

欧米の成人失明原因第1位でありながら、あまり認知されていない黄斑疾患。初期症状や治療法、予防法を徹底的にわかりやすく解説した革新的一冊。