子どもに「固定費ってなに?」と聞かれたときの正しい答え方

もしお子さんに「固定費ってなんのこと?」と質問されたら、あなたは答えられるでしょうか。もしかしたら「知っているつもり」になっているだけで、正しく理解できていないかもしれませんよ。軽妙なコラムで多数のファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、経済初心者のための超入門講座を開講! 第7回は「固定費」について解説します。

客がまったく来なくても「費用」は発生する

レストランの利益について考えてみましょう。客がまったく来なければ収入はゼロですが、それでも費用はかかります。店を借りる費用や、従業員の給料などですね。これを「固定費」と呼びます。

 

新型コロナの影響で、客が来ないレストランも多いようですが、そうした店でも固定費はかかっているので、赤字に苦しんでいるはずです。

 

店に客が来て料理を注文すれば収入が増えますが、一方で、材料費がかかります。このように、収入が増えると費用も増えるという部分を「変動費」と呼びます。

 

客がゼロだと、店は固定費だけ赤字になります。客が1人来ると、収入から変動費を差し引いた金額だけ赤字が減ります。客が増えてくると赤字が減り、ある所から黒字になります。この転換点を「損益分岐点」といいます。客が何人来れば黒字になるのか、という人数ですね。

 

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客がゼロだと店は固定費だけ赤字になるが、客が増えてくると赤字が減って…

「利益」の増減の変化率が、「売上」より大きい理由

あるレストランの固定費が9万9000円だとします。料理が1500円で材料費が500円だとします。客が来ないと9万9000円の赤字ですね。客が1人来ると、収入が1500円増えて費用が500円増えるので、赤字が1000円減ります。

 

客が99人来ると赤字が消えて、それ以上客が来ると黒字になりますから、損益分岐点は99人ですね。

 

客が100人来ると利益は1000円、101人来ると利益は2000円になります。客数が1%しか増えていないのに、利益は2倍になっているのです。

 

いいことばかりではありません。客数が101人から100人に減ると、利益が半分になってしまうのです。客数は1%程度しか減っていないのに。

 

これは極端な例ですが、一般に売上高の変化率よりも利益の変化率のほうが大きくなります。その理由は、固定費があるからですね。

 

固定費ゼロの会社であれば、売上高の変化率と利益の変化率は同じになります。「売上高の10%が利益だ」という場合、売上高が2倍になれば、利益も2倍になるわけですから。

 

さて、この店が食べ放題をはじめたらどうなるでしょうか。客が3000円払うと食べ放題になり、平均的な客は3皿食べるようになるとします。

 

客としては、4500円分の食事を3000円で食べられるので満足ですが、じつは店も満足なのです。収入は3000円、材料費は1500円で、差し引き1500円の儲けですから。

 

大食いばかり来店する食べ放題の店が儲かっていると聞いて、意外な感じがした読者も多かったことでしょう。固定費と変動費がわかると、食べ放題の店のこともわかる、というわけですね。

 

余談ですが、食べ放題の店についてはほかにも面白い話が多数ありますので、詳しくは別の機会に。

ガソリンスタンドの「値引き合戦」

ある島にAとBという2軒のガソリンスタンドがあり、値引き合戦でライバルから客を奪おうと両社が頑張っている、という場合を考えてみましょう。

 

どちらの店も固定費が10万円、ガソリンが100円、仕入れ値が50円だとします。2000リットル売ると損益がゼロになるので、それが損益分岐点というわけですね。

 

客が大勢いて、両店の売上合計は5000リットルだとします。両方の店が2000リットル以上の売り上げを確保できているなら問題ありませんが、そうでないとどちらかが赤字に転落してしまいます。

 

あるとき、Aが99円に値下げしました。客は全員安いほうへ行くでしょう。Aは1リットル売ると49円儲かりますから、5000リットル売れば固定費を差し引いても大儲けですが、Bは客がいないので固定費分だけ赤字になってしまいます。

 

そこで、Bは98円に値下げするでしょう。今度はBが大儲け、Aが大損ですから、次はAが97円に値下げするはずです。

 

こうして値下げが続き、70円になったところで「値下げしたほうが利益ゼロ、他社は固定費分だけマイナス」となります。両社合計では1社分の固定費がマイナスだ、というわけですね。

 

しかし、ここでは止まりません。お互いに相手より1円安く売って客を奪おうと競い合うと、理屈上は51円まで下がります。51円で5000リットル売ると5000円の儲け(固定費差引前)が出ますから、固定費を賄うには全然足りませんが、それでも売上ゼロよりはマシですから。

 

しかし、普通に考えれば、50円に値下がりすることはないでしょう。50円に値下げして相手から客を奪っても仕方ないですから。もし考えられるとすれば、相手の倒産を待つ場合です。相手が51円で売っていて9万5000円の赤字、自社が固定費分10万円の赤字であると、自社が先に倒産しかねません。

 

それなら「50円に値下げして、相手も自社も10万円の赤字となり、相手の倒産を待つ」ほうが合理的かもしれません。

 

相手が倒産すれば、島内では独占企業ですから、好きなだけ値上げができるはずです。公正取引委員会に叱られなければ、ですが(笑)。

 

今回は以上です。なお、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かいところについて厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

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