大阪・築60年以上の建物に暮らす杉山二郎さん(83歳)。月5万円の家賃を滞納し続け、その額は200万円にまで膨れ上がっていた。耐えかねた家主が強制執行の催告をしたものの、ドアを開けば「帰れ!」の一点張り。連帯保証人である二郎さんの兄は「勘弁してくれ」と取りつく島もない。八方塞りの状態が続く中、役所の担当者から一本の連絡が届いた。※章(あや)司法書士事務所代表・太田垣章子氏の書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋し、高齢者の賃貸トラブルの実態に迫っていく。

1週間後、施設に入居した二郎さんを見に行くと…

1週間後、施設を見に行くと、二郎さんはとても元気でした。清潔な服を着て、髪の毛もきれいにカットされています。

 

日が当たる明るい部屋で、とても快適そうです。

 

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「もっと早く来れば良かったわ」

 

二郎さんの穏やかな声を初めて聴きました。「もっと早く来れば」だなんて、今までのことを考えたらズッコケそうでしたが、笑顔とその言葉に救われました。同時に、涙が零れ落ちそうでした。

 

きっと目がどんどん見えなくなって、頼れる身内もいなくて、二郎さんも追い詰められていったのでしょう。お金しか頼れない、そう思って滞納を始めたのかもしれません。この時の二郎さんの心境は、今の私の年齢では想像でしか汲み取ってあげることはできません。ただこの笑顔が見られて、本当に良かった、心からそう思いました。

 

今回の案件は、たまたま施設が見つかったから良かったものの、このまま見つからないもしくは身内の身元保証人がいなくてはダメという状態が続けば、二郎さんが亡くなるか、入院するか等でないと明け渡しができなかったかもしれません。

 

今は地域包括支援センターや高齢者のサポートもいろいろありますが、必要な人に必要な情報が伝わっていない部分もあるかもしれません。現に二郎さんも、身体障害者手帳を持ちながら、サポートは受けていませんでした。

 

これからは家主がきちんとした知識を身につけることは、超高齢化社会で住まいを提供する上では欠かせないことかもしれません。

 

【前回の記事を読む】「お金は払います。それ以外は勘弁してください」滞納の壮絶

【最初から読む】4畳の下宿で「200万円」家賃滞納した「生涯独身83歳」の行方

 

<同連載>

【第1回】家賃滞納「70万円超」…窃盗を重ねる「独居老人」の行く末

 

【第2回】「もう部屋には入れないよ」73歳・独居老人に強制執行の末…

 

【第3回】消えた家賃滞納者…建物取り壊しが決定、独居老人の終着点は

 

【第4回】20万円超の「家賃滞納」で強制執行、父が急死して息子は…

 

【第5回】鬱か認知症か…80万円の家賃滞納で強制執行、急転直下の結末

 

 

太田垣 章子

章(あや)司法書士事務所代表/司法書士

 

 

老後に住める家がない!

老後に住める家がない!

太田垣 章子

ポプラ社

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