緑内障や網膜剥離になることも…「近視」の知られざる恐怖

今回は、はんがい眼科・板谷正紀理事長の著書『目の悩みは眼底を疑いなさい「見える」を支える“黄斑”のチカラ』より一部を抜粋し、「近視」が引き起こす様々な眼疾患について解説します。

近視が強くなると「目の病気」になりやすい

実は、近視は強くなると、緑内障や網膜剥離になりやすくなります。

 

このことは意外と知られていません。はんがい眼科を受診される近視の学童のお母さんとお話しすると、メガネやコンタクトレンズをどうすれば良いかは、心配されているのですが、近視が強くなると目の病気になりやすくなることをご存じない場合がほとんどです。

 

屈折値が-6ジオプター(角膜や水晶体の屈折力の単位)を超えるか、目の前後の長さ(眼軸長)が26㎜を超えるくらいに近視が強くなると強度近視といいます。強度近視は失明のリスクのあるさまざまな目の病気になりやすいため、近視を強くしないことが重要なのです。

近視の方は「緑内障」に要注意

近視は緑内障になりやすいことがわかっています。

 

緑内障は早期発見が必要ですが、近視の目は早期発見が難しいことはご存じでしょうか? 緑内障診断に重要な視神経乳頭が近視による変形をきたし、緑内障の初期変化をマスクしてしまうからです。

 

私が京都大学の緑内障外来で調べたところでは、強度の近視で緑内障の方は、20代、30代という若さで視野障害が起きている方が30%も占めていました。緑内障は高齢者の病気と思われがちですが、近視の方は比較的若年で始まる場合がかなりあるのです。

 

 

[図表1]緑内障の見え方

 

早く始まるほど残りの人生が長いため失明のリスクが高まります。できるだけ早期に緑内障を発見したいところですが、その早期発見が難しいのです。

 

緑内障は中心から離れたところから視野が欠け始めることが多いと考えられていましたが、我々は強度近視の方は早期から中心の近くが障害される頻度が高いことを明らかにしました*1

 

このため、近視の方は特に緑内障の早期発見が重要なのです。

 

私どもは、近視の方の緑内障の早期診断にはOCT(光干渉断層計)が有用であることを報告しました*2。近視の目の視神経乳頭は多様な変形が緑内障の変化をマスクしますが、OCTに映る黄斑の形は近視の方でも個人差が少ないからです。

 

[図表2]視神経乳頭

 

緑内障で失われる神経節細胞の存在する神経線維層と神経節細胞層の2層が薄くなっていることを見抜くことが決め手です。中心近くの異常も見抜きやすく、視野障害が検出されるよりも前の超早期の変化も見逃しません。

 

[図表3]黄斑のOCT画像

 

緑内障を早期発見できたら、眼圧を下げる治療を開始します。

強度の近視だと「網膜剥離」になりやすい

近視の方、特に強度の近視の方は網膜剥離になりやすいことも知られていません。

 

近視は、8歳から15歳ごろの学童期に、目が前後に長くなりすぎておきます。すなわち、目が長くなりすぎて、網膜というスクリーンがピントの位置より後ろに来てしまうのです。

 

[図表4]強度近視眼は眼軸が長くなる

 

この目が前後に伸びるとき目の壁や網膜も薄くなりますが、特に網膜の赤道部が薄くなり格子状変性と呼ばれる変化が生じます。格子状変性の中に小さな丸い孔が生じやすく、10代、20代の若年期の網膜剥離の原因になります。

30代~40代の網膜剥離は緊急手術が必要に…

これだけでは終わりません。

 

目の中を占める硝子体は加齢とともに容積が減り網膜から離れていきます。この後部硝子体剥離という加齢現象がおきるとき、格子状変性が強く引っ張られて裂けて網膜剥離になることがあるのです。

 

[図表5] 裂孔原性網膜剥離の生じかた

 

 

近視の強い目は、後部硝子体剥離が30代~40代と比較的若い年齢でおこりやすく、この年齢で網膜剥離になりやすいのです。この働き盛りの年齢でおきる網膜剥離は進行が速く緊急手術が必要です。

 

網膜に孔があいても剥離がおこる前であれば、レーザー光凝固術*3で孔の周りを凝固して網膜剥離を予防できます。目の前に屑や虫みたいなものが見える飛蚊症や光がないところでパッパッと光が見える光視症を自覚したら早めに眼底の検査を受けることをお勧めします。

 

孔があいていなければ安心できますし、孔があいていたらレーザー光凝固術で網膜剥離を予防できます。発見が遅れ網膜剥離が生じてしまったら手術が必要です。

 

[図表6]壮年期の裂孔原性網膜剥離

 

しかし、ご安心を。網膜剥離は手術で治ります。なかには見えにくくなっても放置して重症化してしまい治りにくい場合もありますが、視野が欠け始めたのに気がついたときに、すぐ手術を行えばほぼ100%治ります。視力も手術が早いほど高い視力を残せます。

 

 

*1:KimuraY,HangaiM,MorookaS,TakayamaK,NakanoN,NukadaM,IkedaHO,AkagiT,YoshimuraN.Retinalnervefiberlayerdefectsinhighlymyopiceyeswithearlyglaucoma.InvestOphthalmolVisSci.2012;21;53(10):6472-8.

*2:NakanoN,HangaiM,NomaH,NukadaM,MoriS,MorookaS,TakayamaK,KimuraY,IkedaHO,AkagiT,YoshimuraN.Macularimaginginhighlymyopiceyeswithandwithoutglaucoma.AmJOphthalmol. 2013;156(3):511-523.

*3:レーザーを用いて網膜全体に豆まき状に凝固を行う治療法。視力が回復することは望めないが、牽引性網膜剥離や血管新生緑内障による失明を予防するのが目的。

 

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
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著者紹介

連載眼科理事長が解説!「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

板谷 正紀

幻冬舎

欧米の成人失明原因第1位でありながら、あまり認知されていない黄斑疾患。初期症状や治療法、予防法を徹底的にわかりやすく解説した革新的一冊。