新型コロナ不況「リーマン・ショック」より対応が困難なワケ

これからの時代を経済的に困窮することなく生きるには、「経済センス」を磨くことが不可欠です。経済コラムで多くのファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、身近なテーマを読み解きます。第16回は、新型コロナ不況への対応がリーマン・ショックの対応より困難な理由を解説します。

リーマン・ショックの対応は、大変だが単純だった

読者の皆さんもいまだ記憶に新しいであろう、2008年9月に起きたリーマン・ショックは「従来型」の金融危機でした。金融機関の収益が悪化して金融システムが不安定になり、金融仲介機能が麻痺し、それによって実体経済に甚大な被害が発生した、というわけですね。日本のバブル崩壊のときと非常によく似ています。

 

したがって、なにが起きていて、なにをすればいいのか、大筋はわかっていたわけです。しかも、わかっていることを思い切りやればよかったわけです。いままでよりも大きな怪獣が現れたので、全力で撃破した、といったイメージですね。

 

 

具体的には、思い切った金融緩和と金融機関への公的資金注入(銀行に増資をさせて政府が引き受け、銀行を健全化させる)によって金融仲介機能を回復させたことと、減税と公共投資等によって需要を喚起したことが、対策の2本柱だったといえるでしょう。

 

あああ
リーマン・ショックのときは、やるべきことがわかっていたが…

今回は手探り状態、どこまで自粛するか悩ましいところ

しかし今回は未知のウイルスなので、自粛しないとどうなるか、自粛したらどうなるか、手探りです。しかも、思い切り自粛すれば、ウイルスには勝てても経済が死んでしまう、ということで手加減が必要なわけです。

 

これは政治家にとっては悩ましい問題でしょう。自粛が足りなければ大流行してしまう一方、自粛しすぎれば経済が大打撃を受けますから。

 

もしかすると、一部の政治家は自分の保身を考えるかも知れません。その場合には、「自粛が足りずに大流行すれば必ず批判される」一方で「自粛しすぎて経済に大打撃が加わっても、批判は免れることが可能だ」と考えるかもしれません。「自粛が足りなければ大量の死者が出ていたはずだ」といえば反論は難しいからです。

 

もっとも日本の場合は、先に欧米諸国による自粛等の影響を目の当たりにしていますから、それに学んで行動できるのは不幸中の幸いかもしれませんね。

消費が増えず先行き不透明なら、企業も設備投資には…

リーマン・ショックのときには需要の喚起ができました。「人々の所得が減ったから消費をしない」のなら、減税をすればよかったわけです。人々に現金や商品券等を配布する政策も、効果の大小はともかく、なんらかの役には立ったはずです。

 

 

また、民間の投資が落ち込んでいるのであれば、公共投資を思い切り実行することで、需要は容易に作りだせたわけです。

 

しかし今回は、人々が消費をしないのは金がないからではなく、外出できないからです。そうならば、消費税を減税しても国民全員に現金を配布しても、消費は増えないでしょう。

 

消費が増えず、先行きも不透明ならば、設備投資をする民間企業も出てこないでしょう。設備投資減税等を行っても、効果はほとんど見込めません。

 

筆者は公共投資を行うべきだと考えていますが、これも感染拡大を懸念した政府が消極的になっています。

 

つまり、新型コロナの収束宣言が出るまでは、景気の回復は見込めない、ということになりそうなのです。

 

そうであれば政府にぜひお願いしたいのは、収束宣言が出るまで飲食店等々の資金繰りを支援していただき、倒産せずに持ちこたえるように最大限の努力をしていただきたいということです。

 

企業の倒産は、経営者や労働者にとって悲惨であるのみならず、設備機械がスクラップ用に叩き売られてしまったり、企業の持つノウハウや信用等々が雲散霧消してしまったりするので、日本経済にとっても大変な損失になるわけです。

 

飲食店等は上記の苦しい選択によって「犠牲を強いられた」わけですから、ぜひとも手厚い支援をお願いしたいと思います。

収束宣言が出れば、急激に景気回復する可能性も

もっとも、明るいは話題としては、ひとたび収束宣言が出たときには急激に景気が回復するだろう、ということです。リーマン・ショック時と異なり、人々は金がないわけではないので、自粛要請が終われば自粛疲れの反動で消費は一気に回復するでしょう。

 

消費が回復し、不透明感が払拭されれば、設備投資も回復するはずです。リーマン・ショック後は、銀行の貸し渋りに懲りてトラウマに陥った企業が「借金をして設備投資をする」ことに抵抗感を感じていましたが、今回はそうではないからです。

 

人々が感染を懸念して外出を自発的に控えるだろうから消費は回復しない、という人もいますが、政府の収束宣言が出れば、「マスクと手袋をつけて警戒しながら外出する」人が増えるでしょう。

 

部品調達が困難で生産が再開できない、という不安もありますが、必須の部品を作っているメーカーに対しては、完成品メーカーが資金繰りの支援をするなど倒産防止に務めているはずですから、過度な懸念は不要でしょう。

 

筆者の考えるリスクシナリオは、金融危機です。国内でいえば不良債権が急増して銀行が貸出に慎重になる可能性があります。海外でいえば途上国からの資金引き揚げにより通貨危機が発生するリスク、景気悪化による税収減等から政府が破産するという噂が流れるリスク、などを頭の片隅に置いておく必要があるかもしれませんね。

 

最後に反省の弁です。3月15日に掲載した記事において、執筆時点では感染の世界的かつ深刻な拡大が予想できておらず、今思うと恥ずかしい限りです。大変失礼致しました。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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