文字が歪んで見えにくい…「視界の異変」に潜む病気とは?

今回は、はんがい眼科・板谷正紀理事長の著書『目の悩みは眼底を疑いなさい「見える」を支える“黄斑”のチカラ』より一部を抜粋し、誰にでも起こりうる疾患「黄斑前膜」について、マンガ・Q&A方式で解説します。

黄斑の前に膜ができる「黄斑前膜」

手紙を開いてすぐ「ごめんなさい」といわれたときは、ショックだったな!

 

ほんとうに、ごめんなさい。私はあの日、目の調子が悪くて。あとから読むわって意味でいった「ごめんなさい」がすっかり誤解されてしまって。

 

だいたい、いまどき手紙でプロポーズするなんて、時代遅れだよ。

 

ええ⁉ おまえだれ?

 

ぼくは、かほさんの黄斑だよ。

 

なんか、ぼろぼろの帽子を被った、へんなやつだな! 帽子の上には何か載っかっているし。

 

かほさんの黄斑は、いま、こんな状態なんだよ。婚約者さんの手紙が読めなくても仕方がないだろ! それに、かほさんに「一生私に付き添ってください!」っていわせるなんて許せん!

 

黄斑ちゃん、そんなに婚約者さんを責めるもんじゃないよ。まさか、かほさんが、こんな目の病気に罹っているなんて、思いもしなかったんだから。

 

あ、はんがい先生。さきほどはありがとうございました。

 

先生、かほさんの病気はどうなんですか?

 

かほさんの病気は、「黄斑前膜」という病気です。黄斑上膜といういい方をする場合もあります。この病気は、網膜の中心にある黄斑の前に付いている後部硝子体皮質という膜が病気になり、分厚くなりギュッと縮んで黄斑に悪さをするんです。黄斑が変形すると、視界が歪み、手紙の文字のような細かなものを見るのが、とても辛くなるんです。

 

その膜が、どんな悪さをするんですか?

 

ぼくの帽子を見ればよくわかるだろ?健康なときは、きれいなくぼみができてるんだけど、いまは、こんなに変形しちゃって、シワまでよっている。このせいで、かほさんの視野は歪んでしまっているのさ。

原因は「加齢」によるものが多いけれど…

かほさん、ほんとうに辛かったんですね。でも、どうしてこんな病気がおこるんですか?

 

私も知りたいです。

 

人間の目は、ある程度年齢を経ると、後部硝子体剥離という現象がおきます。簡単にいうと、それまで網膜とぴったりくっついていた硝子体が縮小して、網膜から離れるんですね。そのときに、硝子体の一部が黄斑の上に膜として残ってしまうと考えてください。

 

後部硝子体剥離については、黄斑円孔の解説で詳しくふれているので、そこも読んでね。

 

後部硝子体剥離がおきるとき、網膜の表面や血管が軽く傷ついて、細胞が傷口から残った膜の周りに集まるんです。その結果、黄斑の上に残った膜は、少しずつ厚みを増して縮んでいくため、黄斑も変形したりシワがよったりするというわけです。ほとんどの黄斑前膜は、後部硝子体剥離後におこるもので、高齢者の病気なのです。

 

でも、私はまだ30歳だわ。

 

そうですよ。かほが高齢者の病気になるなんでひどい。

 

ちょっと待ってください。まだ説明の途中です(タジタジ)。実は、黄斑前膜は30代でもおきるんです。まず、近視が強い人は後部硝子体剥離が若くしておこるから、若くても黄斑前膜はおこりえます。それと、実は、後部硝子体剥離がおきていなくてもおこる黄斑前膜が、10%程度あるんです。

 

私、近視が強いわ。25歳の時、網膜に小さな孔があいて、レーザーで治してもらったことがあるの。これも、「近視が強いためだね」と、眼科の先生にいわれたのを忘れられないわ。

 

そうなんだ、知らなかった。ごめんね。

 

まさに、それが今回の黄斑前膜の原因かもしれません。網膜の他の病気が引き金になって、黄斑前膜が生じることがあります。網膜に孔があく網膜裂孔や網膜円孔、目に炎症がおきるぶどう膜炎、寄生虫など原因はさまざまです。かほさんは、後部硝子体剥離が、まだおきていませんので、網膜円孔とその治療が原因になった可能性が高いと思います。これは、かほさんのOCT画像です。

 

 

黄斑のくぼみがなくなって、中心が分厚くなってる。シワがよってるのもわかるね。

 治療は「硝子体手術」で行う

この病気は、何か薬を飲めば治るんですか?

 

残念ながら、いまのところ薬による治療法はみつかっていません。

 

ええ⁉

 

安心してください。手術をすれば治りますよ。硝子体手術を行います。黄斑の前にはった膜を細いピンセットで網膜からはがす手術です。

 

さっき先生から説明を受けて、私は手術することにしました。

 

手術をしないと、どうなるのですか?

 

この病気は、緑内障や糖尿病網膜症のように、治療しないで放っておくと失明するようなことはありません。でも、視界に膜がかかったようになり、見たいところが歪んだりするわけですから、常に不快感が伴います。膜がさらに収縮すると黄斑の変形が強まり、歪みや視力低下が進んでしまいます。

 

これから結婚式とか、いろいろあるでしょ。また大事なところで、文字が読みづらくなったら困るでしょ。

 

そうだね。はんがい先生、よろしくお願いします。

 

おまかせください。

 

 

【同じく硝子体手術で治る疾患「黄斑円孔」のマンガ、Q&Aはこちらから!】

 

黄斑疾患の原因と病状をわかりやすく解説!続きは書籍にて。

『目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ』

(幻冬舎メディアコンサルティング)

 

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
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https://hangai.org/cataract-seminar/

著者紹介

連載眼科理事長が解説!「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

板谷 正紀

幻冬舎

欧米の成人失明原因第1位でありながら、あまり認知されていない黄斑疾患。初期症状や治療法、予防法を徹底的にわかりやすく解説した革新的一冊。