子どもに「減価償却ってなに?」と聞かれたときの正しい答え方

もしお子さんに「減価償却ってなんのこと?」と質問されたら、あなたは答えられるでしょうか。もしかしたら「知っているつもり」になっているだけで、正しく理解できていないかもしれませんよ。軽妙なコラムで多数のファンを持つ経済評論家の塚崎公義氏が、経済初心者のための超入門講座を開講! 第5回は「減価償却」について解説します。

高価な機械の購入費を、決算で全額計上してしまうと…

会社が決算で利益を計算するとき、「売上」から「費用」を差し引いてその金額を求めます。その年に購入した鉛筆の代金も、買ったときの費用として計上されます。実際には、鉛筆の半分は年内に使い、残りの半分は翌年使うかもしれませんが、そんな細かいことを考えるのは大変ですから、普通は考慮しないのです。

 

しかし、10年使える大きな機械を買った場合はどうでしょうか。その代金をすべて費用として計上したら、その年の決算は大赤字になってしまうかもしれません。会社の会計では、そんな事態を避けるための工夫がなされます。それが「減価償却」です。

 

高額な商品の代金を少しずつ計上していく減価償却
大きな機械を買った場合、代金の全額を費用として計上してしまうと…

 

大きな機械を買った場合の代金は、買ったときに費用として計上するのではなく、「10年使えるのならば、10分の1ずつを毎年の費用として計上」とか「100万個の製品を作れるから、製品を1個作るごとに1円を費用に計上」といった会計処理が行われます。

 

仮に、100万円の機械を使って100万個の製品を作れるとします。その場合、「製品を1個作るごとに機械がすり減って、機械の価値が1円分ずつ下がってしまう」と考えることができます。それを費用として計上しよう、ということです。

減価償却によって、費用と現金にズレが発生するワケ

そうなると、製品の値段を決めるときに、材料費と人件費等に加えて「機械がすり減った費用」として1円を上乗せする必要があります。製品1個あたりの材料費と人件費の合計が9円だとすると、10円で売ることになります。本当は少しだけ儲けを上乗せした値段にするのでしょうが、その話は本稿では忘れましょう。

 

その場合、材料費や人件費は現金の支出ですが、減価償却は現金の支出を伴いません。過去に支払い済みの機械がすり減ったというだけで1円の現金が入ってくるわけですから。そうなると、現金の出入り(1円の入り)と利益(ゼロ円)がズレることになります。

 

1年目の終わりに100万円の機械を買ったとしましょう。その際、機械購入代金として、100万円の現金が出て行きます。この分は、間違いなく現金が減りますが、利益が100万円減るわけではありません。100万円が費用になるのは、機械が動き出した2年目からの10年間です。

 

2年目に10万個の製品を作って売ると、収入は100万円ですが、材料費と人権費は90万円なので、手元に10万円の現金が残ります。3年目以降も同様です。

 

この会社は利益が常にゼロですが、買った年に現金が100万円出ていき、翌年から10万円ずつ入って来ます。「利益がゼロなのに、金庫の現金がどんどん増えていく」というのが、減価償却のわかりにくいところです。

 

現金で買う場合には、金庫内の現金が増減するわけですが、銀行から借りる場合には100万円借りて、毎年10万円ずつ返していくことになるでしょう。10年後に機械が壊れたときに、再び銀行から借金をして新しい機械を買うことになるはずですね。

 

銀行としては、そうした借り手が10社あると、毎年1社に100万円を貸し、毎年10社から10万円ずつ返済を受けるので、現金の出入りはゼロだし、貸出金残高も一定だ、ということになるわけです。

生産量を絞っても「減価償却」は予定通り

さて、この会社は毎年10万個を製造・販売して、10万円の減価償却を費用として計上しているわけですが、景気が悪くて9万個しか売れないので、9万個しか作らなかったらどうなるのでしょうか。

 

その場合には、機械はあまり磨り減りませんが、それでも錆びついたり旧式になったりして機械の価値は下がるかもしれません。したがって、決算としては予定どおり10万個生産したものとして、10万円を費用とします。

 

そうなると、困ったことが起きます。売上は90万円で材料費と人件費は81万円ですが、減価償却が10万円だと1万円の赤字になってしまうのです。

 

そんなとき、銀行はどうするでしょうか? ここからは少しむずかしいかもしれませんが、ご理解いただければ筆者としてうれしいです。

 

まず、赤字の会社に金を貸しておくのは不安ですから「返してくれ」というのが普通でしょうね。しかし、使っている中古の機械を買ってくれる人は簡単には見つからないはずです。無理に売ろうとすると非常に安い値段で買い叩かれるかもしれません。

 

そんなことならば、無理に返済を求めずに生産を続けさせたほうがいいかもしれません。決算は毎年1万円の赤字ですが、現金は毎年9万円入って来ます。売上90万円で材料費と人件費が81万円ですから。

 

それで借金を返済してもらえばよいのです。貸した金の全部は返ってこないかもしれませんが、「大部分は返ってくる」と期待して待つことができるでしょう。

 

本稿は以上です。なお、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もありえます。ご理解いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

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