眼の生活習慣病「加齢黄斑変性」…タイプ別の治療法とは?

加齢とともに発症するリスクが増加する黄斑の病気、「加齢黄斑変性」。今回は、はんがい眼科・板谷正紀理事長の著書『目の悩みは眼底を疑いなさい「見える」を支える“黄斑”のチカラ』より一部を抜粋し、「加齢黄斑変性」が起こる原因を、タイプ別に解説します。

「萎縮型加齢黄斑変性」には治療法がない…

加齢黄斑変性には萎縮型(ドライタイプ)と滲出型(ウェットタイプ)の2種類があります。

 

1つは、進行はゆっくりだが、治療法がない萎縮型加齢黄斑変性(ドライタイプ)です。この萎縮型加齢黄斑変性は、先程から触れてきた黄斑の土台にある守護神のうち、視細胞を守っている網膜色素上皮が傷んで消失していくことによっておきます。

 

網膜色素上皮が傷んで消失するため、脈絡膜からの酸素や栄養が光センサーである視細胞にいきわたらなくなり、視細胞がゆっくりと障害され死んでいきます。そのため視界の真ん中に、見えない範囲が徐々に広がります(中心暗点)。欧米人には多くて問題になっていますが、日本人に比較的少ないのがこのタイプです。

 

現在、世界中で治療法の研究が行われていますが、有効な治療はまだ確立されていません。進行の速度を少しでも遅らせるために、禁煙や食生活などの生活習慣改善を行ったり、抗酸化サプリメントを服用するなどして、抗酸化体質に改善していくことをめざすべきでしょう。

 

[図表1]萎縮型加齢黄斑変性の眼底写真

 

 

[図表2]萎縮型加齢黄斑変性のOCT画像

治療法はあるが、進行が速い「滲出型加齢黄斑変性」

もう1つのタイプである「滲出型加齢黄斑変性」は、黄斑の守護神である脈絡膜の血管から、新しい血管(脈絡膜新生血管)が生えてくることによっておきます。以前は難病でしたが今では治療法があります。

 

しかし、進行が速く、時に重症化しますので、早期治療が必要です。なぜ新生血管が生えてくるかというと、黄斑が低酸素状態になるからです。

 

黄斑は酸素消費量が多いため、もともと光の多い場所では酸素供給が間に合わず低酸素になりやすい存在です。加齢とともに守護神の力が衰えてくると網膜色素上皮に老廃物の沈着が増えていき、脈絡膜からの酸素の供給がうまくいかなくなり黄斑は常に低酸素の状態になるのです。

 

低酸素状態が続くと、人のからだは低酸素を解消しようとして新しく血管を作ろうとして血管内皮増殖因子VEGFが過剰につくられます。過剰なVEGFは脈絡膜新生血管を生み出してしまいます。「新しい血管ができて酸素の供給が増えればいいことじゃないか」多くの人が、そう思われるかもしれません。

 

ところが、それがまったく違うのです。新しく生えてくる血管は本来血管があってはならない網膜と守護神である網膜色素上皮の間へ侵入します。生まれたてであるため血液成分が漏れて黄斑が剥離したりむくんだりして黄斑は傷んでしまうのです。

 

網膜の視細胞はか弱い存在です。視細胞は水浸しになると機能が低下し、新生血管から出血が起きると脈絡膜からの酸素や栄養が途絶えて死んでしまうのです。

 

[図表3]滲出型加齢黄斑変性の眼底写真

 

[図表4]滲出型加齢黄斑変性のOCT画像

脈絡膜新生血管は2つのタイプがある

より正確にいいますと、脈絡膜新生血管は最初にまず網膜色素上皮の基底膜であるブルッフ膜の中へ新生します(タイプ①:脈絡膜新生血管)。

 

新生血管は幼若であるため血液成分である血漿が漏れ出し、網膜色素上皮の下に溜まったり(色素上皮剥離)、網膜色素上皮を越えて黄斑部の網膜の下に溜まり網膜剥離を起こしたり(漿液性網膜剥離)、網膜の中に溜まったり(黄斑浮腫)して、ものが歪んで見えたり、視力が落ちたりします。

 

この、タイプ①:脈絡膜新生血管は、やがて網膜色素上皮を突き破り網膜の下に伸長してタイプ②:脈絡膜新生血管になります。このタイプ②:脈絡膜新生血管は、より激しく漏れをおこしたり、血管が破れて出血したりするなど、激しい破壊的な変化を起こします。これを滲出性変化といいます。

 

滲出性変化は黄斑に強い障害をもたらします。そのためこのタイプの加齢黄斑変性を滲出型加齢黄斑変性と呼びます。同じ加齢黄斑変性でも日本人はこのタイプを発症することが多いのです。

 

[図表5]タイプ別症例

 

抗VEGF薬の登場でコントロール可能に!

滲出型タイプは急に歪んだり、視界の中心部分が見えなくなったりします。かつては治療の方法がなく難病として恐れられました。滲出型の黄斑変性は進行が速いのです。治療を受けないでいると多くの場合、数カ月後には視力が0・1以下になってしまいます。

 

現在では新生血管ができる原因となる血管内皮増殖因子(VascularEndothelialGrowthFactor:VEGF)というタンパク質を抑え込む抗VEGF薬が登場したおかげで、かなりコントロールできる病気となりました。

滲出型黄斑変性もさらに3種類にわかれる

やや専門的になりますが、滲出型の黄斑変性には「典型加齢黄斑変性」(AMD)のほかに、伸びた先の血管が袋状になる「ポリープ状脈絡膜血管症」(PCV)と、網膜内の新生血管が脈絡膜の血管と結合する「網膜血管腫状増殖」(RAP)といわれるタイプがあります。

 

じつは「典型加齢黄斑変性」が"典型"なのは欧米での話で、日本人にはポリープ状脈絡膜血管症が多いのですが(典型―3割強、ポリープ状―5割強、網膜血管腫状―1割弱)、このタイプは袋状の部分に血液が溜まってあるとき突然に破裂するので大量出血になりやすく、緊急手術を要することもあります。

 

さらに最近では、日本人の加齢黄斑変性には欧米人とは異なり脈絡膜が分厚くなって起きるタイプが多いことがわかってきました。まだまだ目が離せない病気の分野です。

 

【加齢黄斑変性」ってどんな症状?マンガ・Q&Aはこちら】

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
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著者紹介

連載眼科理事長が解説!「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

板谷 正紀

幻冬舎

欧米の成人失明原因第1位でありながら、あまり認知されていない黄斑疾患。初期症状や治療法、予防法を徹底的にわかりやすく解説した革新的一冊。