年間約130万人の方が亡くなり、このうち相続税の課税対象になるのは1/10といわれています。しかし課税対象であろうが、なかろうが、1年で130万通りの相続が発生し、多くのトラブルが生じています。当事者にならないためには、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが肝心です。今回は、2人の姉と弟、そして弟の嫁を巻き込んだトラブルを、円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

気の強い「2人の姉」と気弱な「末っ子」

今回ご紹介するAさんは、先代から事業を継いだ三代目です。

 

 

父から会社を継いだときは時代の潮流にのり、業績もうなぎ上りでした。しかし昨今のIT化の波で、Aさんの会社の業界は時代遅れとなり、同業他社は次々と倒産に追い込まれていきました。それでも、Aさんの会社はなんとか持ちこたえ、ギリギリの経営を続けていました。

 

「わたしの代で会社を潰していては、あの世で、父や祖父に何を言われるかわからないですからね。ギリギリまでがんばろうかと思っています」とAさんは笑います。

 

そんなAさんには、2人の姉がいました。とても気が強く、言いたいことははっきりと主張する、自分の意見を決して曲げない――そんな人でした。

 

「上の姉とは8歳、下の姉とは3歳、離れているのですが、子どものころ、何度泣かされたことか……そのときの力関係は、大人になっても変わらないですね」

 

すでに他界していますが、Aさんの両親も姉の気の強さに負けることもしばしばだったそうです。

 

「進学するときや、結婚するとき、結構、両親と揉めたんですよ。特に上の姉が結婚するときはひどかった。姉の夫は自分で会社をやっている人なんですが、業績が芳しくなくて。苦労することが目に見えているので『結婚は絶対ダメ!』と両親は猛反対したんですが……」

 

Aさんの上の姉である長女は、結局、両親に黙って入籍をしてしまったそうです。またAさんの下の姉である次女が結婚するときも、両親はいい顔をしていなかったとか。

 

「下の姉の夫は、上の姉の夫とはまったく逆で、結婚当初は無職でした。『仕事に就くから結婚させてくれ』と挨拶にきていましたよ。両親は、何を言っても無駄だなと、何も言わなくなっていましたけど」

 

姉の夫はそれぞれ問題があったので、Aさんの両親は姉夫婦との付き合いは最小限に留めていたそうです。会社を継いだAさん自身も、姉夫婦とはそれぞれ一定の距離を保っていました。

 

そんなAさんに悲劇が襲います。健康診断にひっかかり、精密検査を受けたところ、がんがみつかったのです。しかも進行性のもので、かなり厳しい状況でした。

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