新型コロナ「自覚症状なし」での検査がデメリットしかない理由

これからの時代を経済的に困窮することなく生きるには、「経済センス」を磨くことが不可欠です。経済コラムで多くのファンを持つ経済評論家・塚崎公義氏が、身近なテーマを読み解きます。第12回は、重症者以外は新型コロナの検査を受けない方がいい、という話です。

新型コロナ感染の検査を受けたくてたまらない心理とは

新型コロナが世界中で流行しています。症状がなくても罹患している場合があるということなので、不安に感じている人も多いでしょう。自分が罹患していれば、いつか重症化するかもしれず、周囲の人々を罹患させてしまうかもしれないわけですから、検査を受けて結果を知りたいと思うのは自然なことです。

 

しかし、罹患している確率が非常に低いとしても検査を受けたいでしょうか? 罹患している確率はどれほどでしょうか? この記事が掲載される時点で判明した日本の罹患者は1,500人前後でしょうが、検査を受けていない罹患者もいるでしょうから、まったくの勘で罹患者が1万人だとします。日本人をおよそ1億人とすると、およそ1万人に1人ですね。

 

確率1万分の1で罹患しているものを、時間と金をかけて検査して結果を知りたい、というのは合理的とは思われません。さらに問題なのは、検査のために病院の待合室で何時間も待たされる間に罹患するリスクもあることです。なんといっても、病院の待合室は最も患者と近づく可能性が高い場所ですから。

 

さらに問題なのは、検査結果が陰性だったとしても安心はできないという点です。検査が絶対的に正確だとはいい切れませんし、検査時はウイルスの潜伏期間中であとから増殖したかもしれませんし、訪れた病院の待合室で罹患したかもしれないからです。

 

つまり、陰性だと聞いても完全に安心できるわけではなく、「1万分の1の確率で罹患している恐怖」から「1万分の1より少しだけ低い確率で罹患している恐怖」に変わるだけなのです。

 

そんなことのために検査を受けたいとは、筆者は思いません。筆者が重症者である場合を除いては。

 

検査を受けたがる人が多いのは、人間は非常に小さな確率を実際より大きく感じるものだからです。飛行機が墜落する可能性は非常に小さいですが、それでも怖いから乗りたくない、という人がいるのと同じことですね。

 

安易な検査はかえって混乱を招く
安易な検査はかえって混乱を招く恐れがある

間違って「陽性」と診断された場合のリスクは甚大

今回の新型コロナウイルスによる肺炎は新しい病気であるため、完璧な検査方法が確立しているわけではないようです。仮に、100回に1回は間違えるとしましょう。1億人が検査を受けたとして、なにが起きるでしょうか。

 

罹患していない9,999万人のうち、99.99万人が陽性と出て、おそらくは隔離されるでしょう。本当に隔離されなければいけないのは1万人しかいないのに。

 

つまり、「1万分の1の確率で罹患しているから検査を受けて結果を知りたい」と思った人が、1万分の101の確率で隔離されることになるわけです。

 

しかも、隔離された無症状者が「ウイルス撃退特効薬」を処方してもらえる、というわけでもなさそうです。まだ新型コロナウイルスを撃退する特効薬は発見されていないので、熱が出たら解熱剤、呼吸困難なら人工呼吸器、といった対症療法が中心のようですから、無症状者はなにもしてもらえないようなのです。

自分の「万が一」ばかり心配すると、医療現場は大混乱

筆者は無症状ですが、もしかしたら罹患しているかもしれず、周囲に感染させてしまうかもしれません。それなのに検査を受けないのは申し訳ない、という気持ちもあります。しかし、検査を受けると周囲にさらなる大きな迷惑をかけるので、受けないことにしているのです。

 

検査には時間と人手がかかります。1億人が検査を受けると、長い時間がかかるでしょう。その間に重症者が死亡したりしては大変です。したがって、重症者から先に検査を受け、検査体制に余裕があれば次に軽症者、無症状者が受けるという順番をつけるべきです。

 

おそらく日本には、101万人を収容する隔離施設はないでしょう。それならば、筆者が急いで検査を受けて陽性と判定され、数少ない隔離施設を占領してしまうと、あとから検査を受けた重症者が使うべき隔離施設が使えなくなってしまうかもしれません。それは申し訳ないので、検査を自粛しているわけです。

 

隔離ではなく自宅待機ということであれば、隔離施設が不足することはないのでしょうが、自宅で隔離されていれば、今度は家族など、周囲に多大な迷惑と心配をかけることになってしまいます。

 

上記のように考えると、筆者が利己的に自分のメリットとリスクだけを考えても受けるべきではないし、他人への迷惑の最小化ということを考えても受けるべきではない、ということになるわけです。

 

検査を受けたいという人の気持ちは十分理解できますが、筆者の考え方をご理解いただけば、そうした気持ちも少しは和らいでくるものと期待しています。

 

末筆ながら、新型肺炎で亡くなった方々のご冥福をお祈り致します。また、罹患されている方々には、お見舞い申し上げるとともに、各位の一刻も早い回復をお祈りしております。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係ありません。

 

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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