銀行、新型コロナ不況の「胸算用」…中小企業支援で得をする?

これからの時代を経済的に困窮することなく生きるには、「経済センス」を磨くことが不可欠です。経済コラムで多くのファンを持つ経済評論家・塚崎公義氏が、身近なテーマを読み解きます。第11回は、借り手が新型コロナの影響で資金繰りに困っているならば、銀行は支援して倒産を防ぐべきだ、という話です。

苦しい中小企業のため、政府が資金繰り支援策を策定

まず、今次新型コロナ不況によって資金繰りが苦しくなった中小企業に関して政府が各種支援策を決めていますので、資金繰りに困った中小企業におかれましては、ぜひとも取引金融機関と相談されることをお勧めいたします。

 

それはそれとして。銀行は自らの利益を考えても、借り手の資金繰りを支援すべき場合が多いと思われますので、以下では政府の支援策のことは忘れ、銀行の利害について考えてみたいと思います。

銀行にとって、一時的な資金繰り難は支援するほうが得

借り手が一時的な資金繰り難に遭遇したとき、銀行としては資金繰りを支援して倒産を防ぐほうがお得なケースが多いはずです。第一に、借り手が倒産すると回収できる金額が少なくなること、第二に、借り手を見殺しにしてしまうと銀行の評判が下がり、自行と取引してくれる借り手が減ってしまうことが挙げられます。

 

借り手が倒産すると、持っている資産は二束三文で投げ売りされ、銀行が回収できる金額は小さくなってしまうことが一般的です。企業が存続していれば、企業の資産は利益を生み出す源泉となるはずなのに…です。

 

もうひとつもったいないのは、企業の持つノウハウや信用力、顧客リスト等々が雲散霧消してしまうことです。企業が存続していれば、これらも利益の源泉となり得たでしょうに。

 

一方で、銀行が借り手の資金繰りを支援して倒産を回避すれば、そうした資産等々が将来の収益を産み、銀行への返済額が倒産した場合よりも多くなることが多いでしょう。

 

通常の赤字企業は「いつ黒字化するか見通しがつかないから支援できない」かもしれませんが、今回は半年か一年程度で新型コロナが収束し、状況が元に戻ることが期待されますから、通常の赤字企業とは異なる扱いをすることが合理的なわけです。

 

銀行にとっては「評判」も重要です。企業が取引銀行を決める際には「わが社が傾いたときにすぐに見放す冷たい銀行ではなく、支援してくれる温かい銀行を選びたい」と考えるからです。

 

したがって、仮にその借り手との関係だけを考えれば見放したほうがいいと思っても、評判悪化が中長期的にもたらす損失を考えると、支援する方が合理的だ、というケースも多いはずです。

 

合理的
見放すより、支援した方が合理的なケースも

長期化・深刻化リスクをどう判断するか?

さて、新型コロナ不況が長期化かつ深刻化するリスクについてはどう考えればいいでしょうか。長期化かつ深刻化するとわかっていれば、早めに見放すほうが銀行の損失は少ないでしょうが、短期的な不況だとわかっているとすれば、支えるほうが銀行の損失は少ないでしょう。あとは、長期化・深刻化する確率がどれくらいか、ということで経営判断をするしかないでしょうね。

 

ちなみに、上記は借り手の状況が比較的よい場合であって、借り手の状況によっては、見放さざるを得ない場合もあるでしょう。収入がほとんど途絶えて資金繰りに行き詰まり、多額の追加融資をしないと生き残れない、といった場合には、銀行としても躊躇するでしょうから。

 

余談ですが、万年赤字で黒字化が見込まれない借り手であっても、銀行には借り手を支援するインセンティブがあり得ます。借り手企業の赤字の主因が減価償却である場合には、キャッシュフロー的には資金が潤沢で、それを用いて銀行借り入れを返済することが可能かもしれないからです。

 

黒字化の見込めない企業に銀行が融資を続けるインセンティブについては、別の機会に詳述することとしましょう。

地銀にとっては、地域経済を守ることも自行の利益に

銀行が借り手を見放すと、その借り手が倒産し、失業が増え、地域経済にダメージを与えます。そうなると、ほかの借り手が赤字に転落して倒産する可能性が高くなります。

 

一方で、借り手を助けると、倒産が減り失業が減り、地域経済が活性化します。そうなると、設備投資をする借り手が増えて貸出が増やせるかもしれません。

 

地方には、大きな市場占有率を誇る地銀が存在している場合が多いので、借り手の繁栄が自行の繁栄と連動しているようなケースも多いはずです。

 

多くの銀行が多くの企業に融資している大都市圏の場合には、そうした効果は見込みにくいかもしれませんが、それでも系列の企業グループの痛手になるような場合には、借り手を支えるインセンティブとなるでしょう。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係ありません。

 

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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