視界が歪む、目がかすむ…増加する「黄斑疾患」の原因とは

「視界が歪む」「目がかすむ」など目に関する悩みには、失明につながる「黄斑」の病気が隠れている可能性があります。早期発見・予防のために、「黄斑」の知識を身に付けましょう。本連載は、はんがい眼科・板谷正紀理事長の著書『目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ』より一部を抜粋し、代表的な黄斑疾患の原因と症状について解説します。

わたしたちの「見える」を支えている黄斑

本記事を執筆するにいたった動機は、黄斑が人に果たした役割がとてつもなく大きいにもかかわらず、医学用語としては「黄斑=黄色い斑点」とあまりにも地味な名称で、一般に知名度が低いことを残念に思ったことです。

 

最近でこそ、「加齢黄斑変性」という病気がメディアでも頻繁に取り上げられるようになり、その病名の一部分である「黄斑」は聞き覚えがある方が増えているかもしれません。

 

しかし、黄斑こそが人を作り上げたと信じる私にとっては、黄斑はまだまだ残念な低い知名度。おしゃれするのも、お化粧をするのも、色鮮やかにはっきりと見る力があるからで、黄斑の仕事なのです。

 

文字の誕生から始まる文明と科学の進歩は、黄斑の細部まではっきり見える力があったればこそできたのだと思います。高い機能を獲得し、高速エンジンを回し続けている黄斑は、それゆえ病気にもなりやすいのです。

 

しかも、黄斑の病気は多種多様です。黄斑が病気になると見たいところが見えなくなったり、歪んで見えたりします。

 

あなたの目の悩み、「黄斑」の病気かも…
あなたの目の悩み、原因は「黄斑」かもしれません

 

みなさんの生活を振り返ってください。スマホ、新聞、標識、買い物、運転、挙げたらきりがありません。現代生活は見えることを前提に成り立っています。この大切な黄斑についてもっと知っていただき、大切な黄斑を生涯守るための知識をお伝えしたいと思います。

世界が美しいと感じられるのは「黄斑」のおかげ

人が春に咲き誇る桜や夏の澄み渡った青い空を見て、美しいと感じられるのはなぜでしょう? それは、私たちの目の奥に「黄斑」があるからです。

 

黄斑を持っている生物は、哺乳類では私たち人間を含む高等霊長類だけです。色や形を正確に認識できること、それにより細かな作業ができること、美しいものを見てきれいだと感じられること、これらがあってはじめて人類は高度な文明や文化を築けたのだと私は考えています。つまり、私たち人間が人間らしい存在になれたのは、黄斑があったからこそといえるのではないでしょうか。

 

目の重要性は誰しも認識していますが、黄斑についてはあまり知られていません。私が本記事でとくに知っていただきたいのは、黄斑の存在とその重要性です。あなたは今この文章を目で読んでいます。この表現は決して間違いではないのですが、正確ではありません。

 

ひと口に「目」といっても、いろいろな部分があります。白目の部分もあるし、黒目の部分もあります。このように水を向けると、ほとんどの人が「黒目の部分で見ている」と答えます。さすがに「白目で見ている」という人はいません。けれども、まだ正確ではありません。

 

鏡の前に立って、自分の目をのぞいてみてください。黒目の部分にも、こげ茶色の部分(虹彩)と黒ぐろとした瞳の部分があります。黒い瞳は、さらに深い部分に通じていそうですが、いくらのぞき込んでも、これ以上は見ることができません。

 

実際にあなたが世界を見ている部分は、その瞳孔からわずか2センチほど奥まった場所にあるのですが、その構造と病的変化を詳しく見ることができるようになったのは、私が開発に参加した光干渉断層計(OCT)が実用化されたつい最近のことです。

 

黄斑は「網膜」の中央にある、ごま粒ほどの部分です。ここには色素が集まっていて、ぽつんと黄色く見えるので、黄色い斑=黄斑という名前がついています。黄斑の中心には、さらに小さいくぼみがあります。ほんとうに小さなくぼみで、あなたが紙に縫い針の先端を、ちょこんと触れたほどの小ささです。この部分は中心窩と呼ばれ、ものを見るのに重要な働きをする視細胞が集中しています。

 

こんな小さな存在によって、あなたはこの世界を見ているのです。あなたは黄斑の存在を、この記事を読むまで知らなかったかもしれません。それでも黄斑は、あなたが何かを見ているときには、いつも仕事をしているのです。

 

どうか、あなたの目の奥にあるけなげな黄斑の存在を知ってください。そして、そのがんばりを知ったからには、いたわってあげてください。

[図表1]黄斑のしくみ

「見えにくい」と感じたら、チェックする習慣を

今、日本では黄斑の病気になる人がとても増えています。病気の原因はさまざまです。肉食中心の欧米式の食生活が進んでいること、パソコンやスマホで目にストレスがたまりやすくなっていること、運動不足や不規則な生活習慣の人が増えていることなどなどです。

 

しかし、いちばんの原因は「加齢」です。日本人の平均寿命はどんどん伸びていて、女性は87歳、男性は81歳に達しています。いずれも過去最高を更新しています(2020年現在)。これは大変に喜ばしいことですが、歳をとると人間の体は機能が高く毎日がんばっている部分からガタがきてしまいます。その典型が黄斑であり、だからこそケアが必要になるのです。

 

黄斑が病気になると、どうなってしまうのでしょうか? 黄斑があるからこそ見えてきた世界が、これまでのようには見えなくなってしまいます。

 

黄斑の病気にはいろいろな種類があります。その多くは、まずあなたがいちばん見たいところ、つまり視野の中心が歪んだり、欠けたり、黒い影が出たりすることからはじまります。そのまま放置しておくと、しだいに歪みがひどくなり、視野の中心が黒く塗りつぶされて見えなくなる、中心暗点が現れてきます。

 

それでも何もしないと、最悪のケースでは失明してしまいます。ただ覚えておいてほしいのは、こうした症状は、まず片方の目でおきるので、症状がごく軽いうちは、気がつきにくいということです。

 

人間の脳は、正常なほうの目の画像を採用して、実際に見えている像を修正してしまうのです。ですから、普段の生活のなかで「なんか目が見えにくい」「目がかすむ」と感じたら、片目ずつ見え方をチェックする習慣をつけてください。チェックするにはアムスラーチャートを使うといいでしょう。

 

【チェックの方法】

1.まず、手のひらなどで片眼を覆います。

2.アムスラーチャートを目から約30㎝離します。

3.開けている目で、アムスラーチャートの中心を見つめます。

4.格子に歪みがないか、どこか見えない部位がないかを調べます。

 

[図表2]アムスラーチャート

 

アムスラーチャートによるチェックでこんな症状があったら、なるべくはやく眼科にいきましょう。失明につながる黄斑の病気がかくれているかもしれません。

 

[図表3]黄斑の病気の初期症状

欧米の成人失明原因1位は「黄斑疾患」

欧米では、すでに黄斑の病気が後天的な失明原因の1位になっています。日本ではまだ4位ですが、最近の増え方からするといずれ1位になってしまうのは避けられないと思われます。もはや「国民病」といってもいいでしょう。それなのに、黄斑の存在すら知らない人のなんと多いことか。私はこの現状に危機感を抱かずにはいられません。

 

黄斑を守れば、あなたはこれまで通りに世界を見ることができます。黄斑を損なえば、あなたはこれまでのように世界を見ることができません。

 

あなたはこれからも、この素晴らしい世界を自分の目で見たいと思いますか? 答えが「イエス」なら、まずは黄斑について知ってください。黄斑の病気について知ってください。知ることでこれから黄斑にいい生活を心がけることができます。「おかしい」と感じたときにすぐに診察を受け、早期に治療が開始できるかもしれません。

 

知ることは備えることの第一歩です。これからもあなたが世界を見続けるために、私は声を大にしていいたいと思います。黄斑を守りましょう!

 

「黄斑の仕組み」Q&A・マンガを読む

 

板谷 正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/
▼多焦点白内障手術 無料個別相談会 開催中!▼
https://hangai.org/cataract-seminar/

著者紹介

連載眼科理事長が解説!「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ

板谷 正紀

幻冬舎

欧米の成人失明原因第1位でありながら、あまり認知されていない黄斑疾患。初期症状や治療法、予防法を徹底的にわかりやすく解説した革新的一冊。