※本記事は、『地方勤務医という選択』(医療法人南労会紀和病院理事長 佐藤雅司著)から一部を抜粋・再編集したものです。

地方勤務で磨くコミュニケーション力

高度急性期医療を主とする都市部の大病院では「治る病気」を治す医療が中心なので、患者と密な関係を築く必要がありません。治ればおしまいという一期一会に近い関係であり、付き合いはあくまで短期間に限られるので、最低限のコミュニケーションがとれればこと足りるのです。

 

一方、「治らない病気」を抱える患者とのお付き合いは長期にわたります。時には30 年以上も一人の患者を支えることが地方の病院では珍しくありません。20代の患者がやがて結婚して子供を連れてきたり、孫を連れてきたりもします。

 

そういった長い付き合いを円滑に続けるためには、コミュニケーション能力が欠かせません。患者の話をしっかり聞いて理解し、時には共感したり価値観を共有したりできて初めて信頼関係を築けます。

 

医療を必要とする患者は多様です。年齢や性別、経歴が違えば価値観はそれぞれ異なります。人によって理解力に差があるのはもちろん、医師や病院に対して不安や不信感を抱いている人もいます。

彼らに寄り添い信頼関係を構築するのは容易なことではありませんが、QOLの維持や向上を実現するためには彼らがどんなことに幸福を感じるのかを知る必要があります。

 

例えば、おいしいものを食べるのが幸せという人と、毎朝愛犬と散歩するのが幸せという人では、同じ糖尿病だったとしてもQOLに対する考え方は異なります。前者はある程度食べることを前提とした血糖値コントロールが医療の目的となりますが、後者の場合は歩く能力の維持を主目的とする糖尿病治療を考えるべきです。患者がどんなことに幸福を感じるのかをよく理解することで、どのようにしてQOLを維持すればよいのかが見えてきます。

 

中には、人生の中で何を重視しているのか自分でも分からない患者もいるので、それを一緒に探すのも医師の仕事です。日頃から密なコミュニケーションを重ね、信頼関係を築いていれば、見つかる可能性は高まります。

 

信頼し合える関係を構築するためには、家族とのコミュニケーションも欠かせません。時には家族が延命治療の要不要など、重要な決定を担うこともあるので、円滑に治療を進めるためには患者の家族と気軽に話せる関係を築くのが理想です。

 

地方の病院では患者と接する年月が長く、機会も多いので、自然とスキルが磨かれます。また、患者を含む地域社会と医師を含む病院との距離が近いのも特徴です。

 

都市部では失われて久しい交流が地方にはまだまだ残っており、医師にとっては年齢や経歴などがまったく違う人たちとの付き合い方を学ぶ教材が、あちこちにあると言えるでしょう。

 

今後は、医者が患者に寄り添う医療が求められる?

 

 

佐藤雅司
医療法人南労会紀和病院理事長

 

 

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秋山 哲男

幻冬舎メディアコンサルティング

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