子のいない夫婦…夫の死後、義理の兄から来た「不義理な連絡」

いつの時代もなくならない相続トラブル。特に、子どものいない方が亡くなった場合、相続の権利を主張し、親族間で醜い争いになることが少なくありません。そこで本記事では、『円満相続をかなえる本』(幻冬舎MC)より、具体的な事例と解決策を紹介します。

葬儀にも出なかった義理の兄から突然手紙が…

NさんとMさんは長年連れ添った仲の良いご夫婦でした。ともにご高齢で、Mさんが亡くなられたときの相続財産は、Mさん名義のご自宅と、わずかな預貯金だけでした。二人の間に子どもはおらず、また、Mさんのご両親もすでにお亡くなりになっていましたので、Nさんは当然Mさんの財産をすべて相続できるものだと思って過ごしていたのです。

 

そうしたところ、Mさんの葬儀にも出席をしなかったMさんのお兄さん(Oさん)から突然手紙が送られてきました。

 

義理の兄が手紙を記した
義理の兄が手紙を記した

 

その内容は、「相続財産の一部を分けてほしい」というもの。さて、Mさんと長年連絡を取っておらず、葬儀にも参列しなかったOさんに、Mさんの財産を相続する権利はあるのでしょうか?

 

結論から申し上げますと、OさんはMさんの財産の一部を相続する権利があります。

 

人が亡くなったときに、誰が亡くなった人の財産を相続するかは民法に定められています。民法の定めにより、ある人が亡くなったときに相続人となる人のことを「法定相続人」といいます。

 

民法によると配偶者は必ず相続人となり、そのほかに子がいれば子が相続人となります。子や孫がいなければ、親や祖父母が相続人となり、その全員がいなければ、兄弟姉妹が相続人となります。

 

これをNさんのケースに当てはめますと、NさんとMさんの間には子が(孫も)いませんでした。また、Mさんはご高齢であったため、ご両親もすでにお亡くなりになっていました。そのためMさんの法定相続人は、配偶者であるNさんと、Mさんの兄弟姉妹ということになります。

 

[図表1]相続関係図

 

Mさんは、兄のOさんと二人兄弟であったため、Mさんの法定相続人はNさんとOさんです。なお、OさんがMさんの葬儀に参列しなかったことは、直ちにOさんが法定相続人であることを否定するものではありません。

 

それでは、Oさんが相続人になるとして、Oさんはいくら相続することができるでしょうか?

 

これも民法に定められており、誰がどれくらいの相続分を有しているかは法律で決まっています。まず、配偶者と子が相続人となる場合は2分の1ずつ、配偶者と親の場合はそれぞれ3分の2と3分の1ずつ、配偶者と兄弟姉妹の場合はそれぞれ4分の3と4分の1ずつとなります。

 

[図表2]民法で定められた相続割合

 

これをMさんのケースに当てはめますと、相続人は配偶者であるNさんと兄であるOさんの2人ですので、相続財産のうちNさんが4分の3、Oさんが4分の1ということになります。つまり、OさんはNさんに対して、相続財産のうち4分の1に相当するものを請求することができることになります。

 

例えば、Mさんの相続財産のうち、ご自宅の価格が2000万円、預貯金の額が400万円だったとした場合、合計額2400万円の4分の1に当たる額、つまり600万円がOさんの相続分です。ご自宅はNさんが今後も生活をしていくうえで必要なものであり、売却をして換金しないとすると、相続財産である預貯金400万円に加えて、Nさん自身の預貯金から200万円をOさんに渡さなければなりません。

 

Nさんにもし預貯金がなかったら支払うことができず、ご自宅を売却しなければならなくなってしまうかもしれません。

 

あるいは仮に、Nさんにぎりぎり200万円の預貯金があったとしても、それを手放してしまっては今後の生活が苦しいものとなってしまいます。このケースでは幸い、亡くなったMさんが生前、生命保険に加入しており、Mさんの死亡保険金の受取人をNさんにしていたため、その支払われた保険金で、NさんはOさんに相続分に相当する金銭を渡すことができました。

 

しかし、お金の都合はついても、NさんからするとOさんに対して思うところもあり、渡す、渡さないで、Oさんと少し言い合いになってしまったようです。

「すべてNに相続させる」という遺言を書くべきだった

〈考察〉

 

さて、このケースにおいて、どうすればNさんとOさんの争いを防ぐことができたでしょうか? その一つの答えが遺言です。もし仮にMさんが、「私の財産はすべてNに相続させる」という遺言を書いていたら、Mさんの財産は、Nさんが不動産も預貯金もすべて相続することになります。

 

ところで、遺言により、相続財産を受け取ることができない、あるいは少ししか受け取ることができない相続人がいるときは、「遺留分(いりゅうぶん)」に気をつけなければなりません。遺留分とは、「相続人が相続財産から受け取れることを法律が保障している一定の相続分」のことをいいます。

 

遺留分がある法定相続人は、配偶者、第一順位相続人、第二順位相続人です。配偶者とは法律上婚姻関係にある相手方のことをいい、第一順位相続人とは子などの直系卑属(ひぞく)のことをいいます。また、第二順位相続人とは親などの直系尊属のことをいいます。

 

さて、第三順位相続人である兄弟姉妹には遺留分がありません。Mさんのケースにおいては、相続人は配偶者であるNさんと兄であるOさんのみですので、Nさんには遺留分がありますが、Oさんには遺留分がありません。ですので、この遺留分のことを加味しても、もしMさんが、「私の財産はすべてNに相続させる」という遺言を書いておいていたなら、Oさんから遺留分を請求されることもなく、Mさんの財産は文字通りNさんが相続することができたことになります。

 

亡くなったMさんとしても、何十年も連絡を取っていなかったOさんに、自分の財産を相続させたいと思っていたかどうかはわかりませんが、自分が亡くなると、相続財産はすべて当然のように妻であるNさんが相続すると思い込んでいたかもしれません。

 

[図表3]遺留分の相続順位と相続割合

 

お子さんのいないご夫婦は、ご自身が亡くなった後に誰が相続人となるのかを把握しておき、ご自身が望む結果となるように対策をしておいてはいかがでしょうか。また、Nさんのように配偶者が財産の名義人になっているときは、配偶者が亡くなった後のことを考えて、配偶者に対策をしてくれるように促すことも大切なことだと思います。

 

 

石川 宗徳/森田 努/島根 猛/佐藤 良久/近藤 俊之/幾島 光子

 

汐留司法書士事務所 代表 司法書士

26歳で司法書士試験に合格したのち、登記、相続、裁判、それぞれを得意とする複数の事務所に勤務。独立後は士業の専門家集団である汐留パートナーズグループに参画し、ネットワークを強みに、相続に関するコンサルティングに力を入れる。

著者紹介

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本記事は、2017年9月22日刊行の書籍『円満相続をかなえる本』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

円満相続をかなえる本

円満相続をかなえる本

石川 宗徳,森田 努,島根 猛,佐藤 良久,近藤 俊之,幾島 光子

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