高齢者の「家賃滞納」問題。本来、法律に基づき退去させることも可能だが、財産の少ない高齢者への強制執行に、苦しむオーナーも少なくない。そこで本連載では、章(あや)司法書士事務所代表・太田垣章子氏の書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より、高齢者の賃貸トラブルの実例を挙げ、その実態に迫っていく。

 

鮎川さんが乗って帰ってきた自転車は、長屋と隣の家とのフェンスの隙間に次々と置かれていきます。狭い敷地に建っている長屋なので、置けるスペースは限られていて、あっという間に隙間がなくなるほど自転車で埋め尽くされてしまいます。そうすると次からは自転車の2段重ね。自転車の上に、自転車が。さながら自転車のテトリスのようでした。

 

山積みの自転車。
山積みの自転車。

 

そもそもこの自転車、鮎川さんはなぜ乗って帰ってくるのでしょうか。無造作に積まれて使われていない状況から推測すると、「欲しかったから」「乗りたいから」という理由ではなさそうです。

 

盗難届が出された自転車を捜すため、警察の方は何度もこの自転車館を確認しに来られました。重なりあった中から探し出すのは至難の業ですが、それでも何台かは埋もれていたのです。ただその自転車が、誰かが盗んでその場に置いたのか、それとも鮎川さん自身が盗んだのか、決定的証拠もないため逮捕はされず警察も様子を見るということでした。

「出ていけなんて!」から1年、自転車積みが始まった

敷地の反対側は細い路地になっていて、通る人々から「積み上げられた自転車のせいで見通しが悪い」などの苦情まで来るようにもなりました。

 

警察がしょっちゅう自転車を確認しに来る、近隣からもクレームが来るでは、家主もたまったものじゃありません。何とか退去させられないかという相談を受けました。

 

話を聞いてみると、鮎川さんはこの長屋が建てられた時からの賃借人。40m2ほどの部屋に、母親と二人で住んでいました。

 

 

次ページは:「すぐに出ていけとは何たることか」

 

老後に住める家がない!

老後に住める家がない!

太田垣 章子

ポプラ社

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