「通知なし」で戸籍は破棄される…「家系図」をどうつくるか?

いま、経営者の間で「家系図づくり」が静かなブームになっています。一見、経営者と家系図と聞くと、関係ないことのように思えるでしょう。しかし歴代の経営者の教えや功績を大切にする業歴の長い企業では、「経営者の先祖が何者であったのか」「経営者の先祖が何をしたのか」を後世に伝えるために、家系図が用いられているのです。今回は、家系図の基礎知識から作り方まで紹介していきます。

「家系図」は相続・事業承継でも役に立つ

信用調査機関の調査によると、業歴100年以上の老舗企業は日本全国に約3万3,000社(2018年10月時点)もあります。企業を継続していくには、経営者が業績を重ね、それを次世代に承継していくしか方法はありません。だからこそ、経営者は先祖から伝わる教えや功績を大切にし、「もっと先祖のことを知りたい」という探求心を強くするのでしょう。経営者の間で家系図が人気なのは、そのような背景があるのです。

 

実は家系図づくりは、欧米諸国で大変人気で、ライフワークとして取り組む人もいます。自分の先祖を遡ることで、色々な人種や民族との関係性を知り、「自分がどうしてここに存在しているのか?」という哲学的疑問が晴れていくから、といわれています。

 

また家系図は遺産相続においても役に立ちます。相続が発生したときに、思わぬところから相続人が現れてトラブルになった、という話を聞いたことはないでしょうか? 相続は被相続人(=亡くなった方)との関係性で、相続割合が決まります。相続人は何人いて、優先順位はどのようになっているのか。身内との関係性をスムーズに把握するために、家系図は役に立つのです。

 

事業承継は事業の相続とも言えます。特に事業承継が問題になることが多い中小企業の経営者は、家系図の作成を検討してみてはいかがでしょうか。

家系図づくりに必要な4つの情報源

家系図づくりには、先祖に関わるさまざまな情報を集めなければなりません。では何を参考に情報を集めていけばいいのでしょうか。代表的なものをみていきましょう。

 

戸籍

家系図づくりで、まず初めに行うのが戸籍調査です。戸籍は家系図づくりにおいて、最も重要で信頼性のある情報となるでしょう。スムーズにいけば150年~200年前(江戸時代後期から明治時代)の先祖まで辿ることができます。また先祖の戸籍に載っている情報から、家族関係や兄弟関係もわかり、家系図に広がりを持たせることができます。

 

家紋

家紋が一般に広がったのは江戸時代といわれていますが、家紋によって家柄や地位を推測することができます。もし自分の家の家紋がわからない場合は、墓石や位牌などに書かれていることが多いので見てみるといいでしょう。同じ苗字でもまったく違うデザインの家紋を使用していることもあります。自分の家だけでなく、親族の家紋も調べていくと、一族の情報がよりクリアになるでしょう。

 

過去帳

現在の戸籍で辿れるのは、近代日本まで。それより前の家系を調べるなら、「過去帳」などの、いわゆる「昔の戸籍」にあたる情報を調べる必要があります。過去帳は仏具のひとつで、故人の戒名や俗名、死亡年月日、享年などを記しておく帳簿です。現在の戸籍のように役所で保管されているものではなく、地域ごとに寺院を中心に存在します。そのため戸籍で最後に辿り着いた情報から、先祖が住んでいただろう地域の菩提寺などに足を運ぶ必要があります。たとえ先祖の菩薩寺がわかったとしても、必ず過去帳が存在するとは限らず、また閲覧の許可が下りない場合もあります。閲覧できた場合は、戸籍ではわかりえない情報まで遡れる可能性が開けるでしょう。

 

現地調査

先祖の所縁のある土地を訪れ、現地の人たちに話を聞いて回ります。たとえ有力な情報が得られなくても、先祖に所縁のあった土地を直に感じることができる経験は、かけがえのないものになるはずです。基本的に戸籍調査が終わった後に、その段階で一番古い先祖の所縁の土地から出向いていくのが、現地調査の効率的な始め方です。

保管期限は150年まで…「古い戸籍」は告知なく廃棄

戸籍閲覧のチャンスは……
戸籍閲覧のチャンスは……

 

戸籍は現在の本籍地(多くの場合は現在の居住地)の役所に保管されています。先祖たちの戸籍も、それぞれが住んでいた土地に保管されています。戸籍法が改正される昭和30年より前の戸籍(=改正原戸籍)には、当時の家制度をふまえた家単位の記載がされています。つまり家族のほか、祖父や孫、兄弟の配偶者やその子どもまで記載されているのです。そのため古い戸籍を取得できれば、数世代前まで一気に判明する可能性がでてきます。

 

保管中の戸籍や除籍は、役所に申請して謄本を取得し、見ることができます。

 

では戸籍はいつまで保管されているのでしょうか。現在の戸籍は、戸籍に記載されている全員が死亡したり、他の役所の管轄に転籍したりしない限り、永遠に保管されます。除籍は、除籍となった年度から150年で廃棄されます。改正原戸籍も同様です。

 

保存期間は平成22年に80年から150年に改正されました。平均寿命が延びたことによる改正でしたので、今後、さらに平均寿命が延びれば、保存期間も延びる可能性はあります。保存期間が過ぎた除籍・原戸籍は完全に破棄され、見ることはできなくなります。戸籍の破棄に通知義務はありません。保管期限が過ぎれば、その当日や役所の年度末などに、誰にも通知されることなく破棄されます。

 

破棄の対応は役所ごとに異なる場合もありますが、戸籍法に規定されているため、期限の切れた戸籍謄本等を取得できることはありません。

 

このように、現在、確認できる戸籍が、子孫の代でも確認できるとは限りません。特に古い戸籍は、確実に破棄されてしまいます。家族と家業のルーツを探り、引き継いでいくためには、1日でも早く戸籍を確認するほうが良いかもしれません。

100年企業戦略研究所は、「“経営の新常識”を作り、日本の未来を切り拓く」という株式会社ボルテックスのミッションを推進し体現していくことを目的に2018年に設置された社内シンクタンク。日本に数多く存在する長寿企業の事業継続の秘訣を研究・分析し、100年続く企業づくりに寄与する優れた知慧や叡智を多くの企業経営者の方々に広くご提供することを使命としている。
https://100years-company.jp/

著者紹介

連載中小企業経営者におくる「100年企業」を目指すためのノウハウ

※本連載は、株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が運営するウェブサイト「100年企業戦略ONLINE」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら