白内障手術後、最も快適に過ごせる「眼内レンズ」の選び方

白内障手術の技術進歩は目覚ましく、手術に使用する眼内レンズも非常に進化しています。いまでは眼鏡などを使用することなく近方も遠方もはっきりと見えるようになるレンズが登場し、患者は数ある眼内レンズのなかから最もライフスタイルに合うものを選択することが可能です。本連載では、年間1500件もの白内障手術を手掛ける、アイケアクリニック院長の佐藤香氏が、白内障治療に関する疑問を、Q&A方式でわかりやすく解説します。

劣化や破損のリスクなし…眼内レンズは「一生モノ」

 

Q:眼内レンズに寿命はありますか?

 

A:眼内レンズの寿命を心配する必要はありません。

 

20~30代でアトピー性白内障や糖尿病白内障を発症して手術を受ける患者さんにとっては、気になることなのでしょう。「これからずっと眼内レンズを入れていても、大丈夫ですか?」と質問されることがあります。

 

もちろん地球上にある物質ですから、いつかは劣化するでしょうが、眼内レンズの寿命は少なくとも人間の寿命よりはるかに長いと考えられています。

 

眼内レンズが誕生してまだ50年ほどですが、先天性白内障を発症した小児の患者さんにも使用が認可されています。このことから考えても、目に入れたレンズが劣化して壊れてしまうようなことはないと思っていただいて、差し支えありません。

 

手術で入れた眼内レンズは劣化や湖沼の心配がない
手術で入れた眼内レンズは劣化や故障の心配がない

術後、メガネが不要になる「多焦点眼内レンズ」

Q:単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズはどのように違うのですか?

 

A:焦点を合わせることができるのが1箇所か、あるいは複数箇所かの違いがあります。単焦点眼内レンズは名前のとおり、1点の距離にだけ焦点が合うように作られています。

 

その1点は「近方(30~50cm)」と「遠方(5ⅿ)」のいずれか、患者さん自身が希望されるほうを選びます。

 

近方を選んだ場合、遠方を見るときは焦点が合わずにぼやけるのでメガネが必須です。反対に、遠方を選んだ場合は近方を見るとき、メガネで視力を補わなければなりません。

 

他方の多焦点眼内レンズは、複数の距離に焦点を合わせることができます。近方も遠方もよく見えるようにピント調節ができ、必ずしもメガネを併用する必要はなくなります。

 

多焦点眼内レンズを使用された方のほとんどは、メガネなしで日常生活を送ることができているというデータがあります。

 

1949年、イギリスの眼科医リドレーが発明した初の眼内レンズは単焦点眼内レンズでした。その仕組みは今日までほとんど変わっていません。多焦点眼内レンズが日本で初めて認可されたのは2008年のことです。以来、今日まで驚異的なスピードで進歩を遂げてきました。

 

最初に開発された多焦点眼内レンズは近方と遠方にピントが合う2焦点眼内レンズでしたが、その後、近方と遠方のほかに「中間(60cm~1ⅿ)」も選択できる3焦点眼内レンズが製品化されました。

 

さらに50cm以上の距離すべてに焦点を合わせることのできる「焦点深度拡張型眼内レンズ」が登場しました。このレンズは多焦点眼内レンズの弱点といわれた、まぶしさなどの違和感が軽減されたレンズです。

 

ヨーロッパやアメリカをはじめ、世界各国で研究・開発が進められ、多焦点眼内レンズは「見える範囲の拡大」とともに「より質の高い見え方」を追求して今日を迎えています。

 

単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズ、どちらを選ぶかは患者さんの判断が最優先されます。信頼できる眼科医に詳しい説明を聞き、自分の術後の日常生活が最も快適になりそうな眼内レンズを見つけることが重要です。

近方・中間・遠方…すべてがクリアに見える3焦点

Q:2焦点眼内レンズと3焦点眼内レンズはどう違いますか?

 

A:焦点を合わせられる場所が2箇所か3箇所かの違いがあります。2焦点眼内レンズは「近方(30~50cm)」と「遠方(5m)」のうち、2箇所に焦点(ピント)が合うようにできています。

 

近方については30cm、40cm、50cmのいずれかの距離に合わせられるものがあります。これに対して3焦点眼内レンズは、「近方」「中間」「遠方」の3箇所すべてに焦点を合わせることができます。焦点の合う距離が多いため、メガネをかけなくてもクリアな視界を手に入れられる可能性が高まります。

 

しかし、当初は3焦点眼内レンズにも欠点がありました。夜間は光にまぶしさ(ハロー)やにじみ(グレア)を感じやすいという点です。夜に車を運転すると、対向車のライトや街路の照明がまぶしくてハレーションを起こしたように感じることもありますので、3焦点眼内レンズは車を運転する人には向かないといわれてきました。

 

現在ではハロー・グレアを抑える工夫がなされた3焦点眼内レンズが登場しています。そのタイプを選択すれば、夜間も問題なく運転することができます。

 

【白内障ってなに? 手術件数月間300件の熟練ドクターがわかりやすく解説!】

「ライフスタイル」に合う眼内レンズ選びがポイント

Q:3焦点眼内レンズはたくさんありますが、どう選べばいいのでしょうか?

 

A:自分の見たい場所に合わせた選び方をするといいでしょう。

 

たとえば近方については、30cm、40cm、50cmなど、中間については、60cm、70cm、80cmなど、レンズによって焦点距離が異なっています。

 

近方に関していえば、読書をするときとパソコンを使うときでは焦点距離が異なりますので、ライフスタイルによって合うレンズが異なります。また、夜間、車の運転をすることが多い方にはハロー・グレアの少ないレンズが向きますし、柔らかい見え方を好むか、コントラストのはっきりした見え方を好むかでも、合うレンズは異なってくるでしょう。

 

 

佐藤 香
アイケアクリニック 院長
アイケアクリニック銀座院 院長       

 

アイケアクリニック 院長
アイケアクリニック銀座院 院長 

集中力を要する緻密な作業を得意とし、特に最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。
まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。
日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケアー「トータルアイケア」の提供を目指す。
現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌などさまざまなメディアに取り上げられている。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載スゴ腕ドクター佐藤香の白内障治療Q&A

年間1500件の白内障手術を手掛けるスゴ腕ドクター佐藤香院長の 白内障治療Q&A

年間1500件の白内障手術を手掛けるスゴ腕ドクター佐藤香院長の 白内障治療Q&A

佐藤 香

幻冬舎メディアコンサルティング

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