欧米の失明原因トップ「加齢性黄斑」に白内障手術が役立つ事実

技術が進歩し、昔では断らざるを得なかった患者でも、安心・安全・スピーディに手術を行えるようになりました。しかし、そんな現在でも白内障手術に対する誤解や、事実とは真逆の「目の健康を害しかねない思い込み」をしている人が少なくありません。本連載では、年間1500件もの白内障手術を手掛ける、アイケアクリニック院長の佐藤香氏が、白内障治療に関する疑問を、Q&A方式でわかりやすく解説します。

いまや糖尿病患者でさえ日帰り手術ができる時代

 

Q:糖尿病だと手術は受けられないのでしょうか?

 

Aかつては重度の糖尿病を患っている方の場合、血糖値が高く、免疫力が低下しているため、手術を断られることがありました。

 

たとえ安全性の高い日帰り手術であっても、「切開創の治りが遅い」「化膿しやすい」「傷口から感染しやすい」などのリスクが考えられたためです。

 

しかし、白内障手術は日々進歩しています。当院ではわずか2.4㎜という極小の切開のみで手術を行います。血糖値の高い方でも感染症のリスクを抑え、安全に手術を受けられるようになりました。気軽な日帰り手術も可能です。

 

手術が進歩し、
血糖値が高い人でも安全に手術が受けられるようになった

 

ただし、血糖値が高い状態で手術を行うと、糖尿病網膜症の症状が進行する可能性があります。そのため血糖値が高い方は、術前の網膜症検査の評価や、術後の経過観察を注意深く行うことが大切です。

 

網膜症が進行している場合は、目の状態にもよりますが、レーザー治療やステロイド薬、抗VEGF薬を投与する治療を行ってから白内障手術を実施することもあります。

 

また、糖尿病白内障の場合はしっかりと事前に検査をして、合併症のリスクに備えた治療計画を立てることが重要です。

失明もありうる…糖尿病患者は「網膜」の合併症に注意

一般に加齢性白内障は進行が緩やかですが、糖尿病を患っている方が白内障を発症すると、若い方でも進行が早まる傾向にあります。特に症状が現れていなくても、急激に悪化する可能性も考えられるのです。

 

さらに糖尿病網膜症は、目の奥にある網膜の病気です。そのため白内障で水晶体が濁っていると、網膜をうまく観察できずに糖尿病網膜症が進行してしまう恐れがあります。仮に網膜に出血があったり膜が張ったりしてしまうと、そこから網膜剥離を引き起こすことも考えられます。また、網膜剥離は失明を招く場合もあるため大変怖い合併症の1つです。

 

糖尿病網膜症の方は定期的に眼底検査を受けて、病気が進行しているか、異常が起きていないかなどを観察することも大切です。正確な眼底検査を行うためにも、白内障手術で水晶体の濁りを取り除いておくことが役立ちます。

 

【白内障ってなに? 手術件数月間300件の熟練ドクターがわかりやすく解説!】

「白内障手術がコワい疾患を誘発する」という事実誤認

Q:白内障の治療を受けると加齢黄斑変性にかかりやすくなるというのは本当ですか?

 

Aそんなことはありません。安心してください。

 

加齢黄斑変性は、加齢によって目の「黄斑」が変性し、視界が歪んだり、視力障害が起きたりしてしまう病気です。黄斑は網膜の中心部にあり、視細胞が集まって視力の大部分を出している部位です。

 

加齢黄斑変性は欧米では以前から失明原因の第1位になっている怖い病気ですが、白内障の手術によって誘発されるということはありません。加齢黄斑変性の原因として紫外線暴露が指摘されています。そのことから、

 

●白内障→水晶体が濁っているので紫外線が通りにくい?

 

●白内障の手術後→水晶体がきれいになり光が通りやすくなるので、紫外線も通りやすい? →白内障の手術はやめたほうがいいのでは?

 

と考える人がいると思いますが、まったく見当違いな心配といわざるを得ません。むしろUVカット効果のある眼内レンズを入れることになるので、目にはよい影響を与えることになります。

 

白内障も黄斑変性も加齢性の疾患なので、白内障になっている方は黄斑変性症になる可能性が高いのです。一度、検査を受けることをおすすめします。

「飛蚊症、悪化した?」→別の病気が隠れている可能性

Q:白内障手術をすると飛蚊症の症状が強くなるというのは本当ですか?

 

A白内障手術で飛蚊症が悪化することはありません。しかし、白内障手術を受けた結果、症状が顕在化して気になってしまうことは考えられます。

 

飛蚊症は、目を動かすと一緒に黒い点や線などが動いて見える症状を指します。黒い虫が眼前を飛んでいるように感じるため、この名がついたといわれています。

 

白内障手術を受けると、一時的な炎症で飛蚊症を感じやすくなることがあります。この場合は、術後数日で自然に症状が収まりますので心配はありません。

 

もう1つ、「もともと飛蚊症があったのに、手術前は白内障で目が霞んでいたので気にならなかった」という場合もあります。こちらは長引くようなら軽視せず、眼科で原因を探してもらいましょう。

 

というのも網膜剥離や網膜裂孔など、深刻な病気の初期に飛蚊症が起きることがあるからです。白内障手術後の定期検診の際、主治医に症状を伝えて相談することが必要です。

 

 

佐藤 香
アイケアクリニック 院長
アイケアクリニック銀座院 院長

 

アイケアクリニック 院長
アイケアクリニック銀座院 院長 

集中力を要する緻密な作業を得意とし、特に最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。
まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。
日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケアー「トータルアイケア」の提供を目指す。
現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌などさまざまなメディアに取り上げられている。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載スゴ腕ドクター佐藤香の白内障治療Q&A

年間1500件の白内障手術を手掛けるスゴ腕ドクター佐藤香院長の 白内障治療Q&A

年間1500件の白内障手術を手掛けるスゴ腕ドクター佐藤香院長の 白内障治療Q&A

佐藤 香

幻冬舎メディアコンサルティング

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