日本人「緑内障の発見が遅れ、気づいたら失明」が多すぎる

年齢を重ねれば、老眼や白内障なども始まり、視力の衰えをよりいっそう感じることでしょう。「年だから仕方がないか…」と、納得してしまいそうになりますが、思わぬ病気を発症している可能性に、気づいているでしょうか。本連載では、はんがい眼科・板谷正紀院長の書籍『「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して、眼病の知識をわかりやすく解説します。

ゆっくりと訪れる緑内障…失明の危機を防ぐには

◆白内障手術で狭隅角を開放隅角に

 

たとえば閉塞隅角緑内障や狭隅角のように、隅角(前房の周辺部にある部分を指します)が閉じていたり狭くなって房水の流れが悪くなり、それが原因で眼圧が高くなっている場合は、白内障手術が有効になります。閉塞隅角症や狭隅角は、白内障や加齢などが原因で水晶体の厚みがまし、虹彩を圧迫することで隅角がどんどん狭くなり、房水の流れが悪くなったり、流れなくなったりして眼圧が上がることになるのです。

 

しかし、この厚くなった水晶体を取り出して眼内レンズに置き換える、いわゆる白内障手術をおこなえば、それまで水晶体の圧迫で隅角に押し付けられていた虹彩は元の位置に戻り、開放された状態に戻ります。そうなれば房水の流れもよくなり、眼圧も下がっていくわけです。

 

これは緑内障と白内障を併発している場合ですが、白内障の患者さんによっては、狭隅角の状態ではあっても、まだ緑内障を発症していない方がいます。こうした患者さんは、なるべく早く白内障手術をうけることによって狭隅角を開放隅角の状態にすることをお勧めしています。

 

この段階でつぎにふれるOCTによる網膜の検査と視野検査を受け、緑内障のダメージが見つからなければ、この患者さんは一生、閉塞隅角緑内障(狭隅角緑内障)による失明のリスクを回避できたことになるのです。

 

◆緑内障による失明がなくならない訳

 

これだけ多くの効果的な緑内障点眼が開発され、これだけ手術法が研究され新しい手術デバイスが開発されてきたのに、国内における失明原因に占める緑内障の割合は増えています。なぜでしょうか? 私が考える第1の原因は、ハイリスク緑内障の識別が不十分であること、第2は早期発見が不十分であること、第3は長寿になりすぎていること(良いことですが)です。1と2の解決に努め、3の長寿は目がちゃんと見える健康寿命を伸ばしたいものです。

 

緑内障で失明してしまう例が後を絶たない
緑内障で失明してしまう例が後を絶たない

 

◆ハイリスク緑内障とは?

 

まず、ハイリスク緑内障の特徴は以下のようです。

 

① 若いのに視野障害が出ている→守るべき残りの人生が長すぎる

② 中心部の視野障害が強い→視力を失うリスクが高い

③ 進行が速い

④ 落屑緑内障、続発緑内障→視野障害進行が特に速い

⑤ 正常眼圧緑内障に閉塞隅角緑内障が併発した場合(混合緑内障)

⑥ 血管新生緑内障→眼圧コントロールが難しい

⑦ 強度近視眼の緑内障→①と②が起きやすい

 

緑内障と診断したら緑内障点眼薬で治療を開始するのは当然です。それでも失明が減らないのは、ハイリスク緑内障の認識が足りず、ハイリスク緑内障の目に対して治療の強さが足りないことが考えられます。

 

緑内障の点眼治療は多剤併用と言いまして、必要に応じて複数の点眼薬を併用します。使用する点眼薬が足りていない可能性があります。あるいは、緑内障手術を行って、もっと眼圧を下げるべきところ手術に踏み切れていないのです。

 

どうしてこのようなことが起こるのでしょうか? ひとつは多くの緑内障点眼薬を使用すると副作用もいろいろ起こりますし、手術も一時的に見えにくくなったり具合の悪い術後合併症が起こる問題があります。患者さんにとって辛い問題が今起こります。一方、緑内障で見えなくなるのはかなり先の未来なのです。

 

目の前の患者さんが平均的な寿命を全うされたとして、その寿命のなかで生活に有用な視機能を失ってしまわれるというリスクを明確に認識できないと、今目の前の患者さんに辛抱を強いる治療を行うことがためらわれてしまうのは当然ではないでしょうか? 未来を読むハイリスク緑内障の識別こそが重要なのです。

開放隅角と閉塞隅角

 

早期発見が重要なのに、診断が遅れてしまうワケ

◆早期発見こそがすべて

 

緑内障は網膜の神経節細胞という神経細胞が減っていく病気です。この細胞は網膜が得た視覚情報を脳へ送る電線の働きをしています。視野障害が検出されたら神経節細胞の約50%が失われているとされています。

 

すなわち、早期の緑内障でも残り50%の細胞を守る闘いになります。しかし、往々にして私に紹介いただく患者さんは、かなり進行した視野障害となっていて残り5%を守るような厳しい闘いを行っています。そのたびに思うのは、早期発見の重要性です。なぜ、早期発見ができないのでしょうか? 私が考える理由は次のようなものです。

 

① 目が見えている人は眼科に行く機会が少ない

② 結膜炎の症状で眼科に行っても保険診療の制約のため緑内障の精査はしないところが多い

③ 早期診断が難しい

④ 特に、近視の目は緑内障早期診断が難しい

⑤ 検診は眼圧と眼底写真撮影しかしない

 

まず、眼圧が高くなる緑内障は、眼圧さえ測定すれば発見できますが、日本では眼圧が正常な緑内障の方が圧倒的に多く、眼圧で発見できる緑内障は一部なのです。すなわち、眼底検査と視野検査で診断する必要があるのです。

 

しかし、視野検査は時間がかかる上に費用も発生しますので眼底検査で緑内障を疑わない限り行われません。ところが、これまでは眼底検査で緑内障の早期診断が難しいことが多かったのです。

 

眼底検査では視神経の入り口である視神経乳頭に起きる緑内障による変化を見つけます。しかし、視神経乳頭の判定は眼科医によってバラバラなのです。つまり、それくらい難しいと言うことです。さらには、近視がある方の視神経乳頭は近視特有の多様な変形が多いため、緑内障による変化を見つけることが容易でなく、なかには判定不能の目もあります。

 

私は、京都大学時代にOCT(眼底三次元画像解析)を用いた緑内障の早期発見の研究を行ってきました。OCTを用いると視野異常が検出される前の超早期の緑内障を発見することも容易にできますし、近視による視神経乳頭の変形が強い目でもOCTで緑内障の変化を簡単に見つけることが可能となります

 

*Nakano N, Hangai M, Nakanishi H, Mori S, Nukada M, Kotera Y, Ikeda HO, Nakamura H, NonakaA, Yoshimura N. Macular ganglion cell layer imaging in preperimetric glaucoma with speckle noisereducedspectral domain optical coherence tomography. Ophthalmology. 2011;118:2414-26.Nakano N, Hangai M, Noma H, Nukada M, Mori S, Morooka S, Takayama K, Kimura Y, Ikeda HO,Akagi T, Yoshimura N. Macular imaging in highly myopic eyes with and without glaucoma. Am JOphthalmol. 2013;156:511-23.

 

 

板谷正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

 

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

https://eyeblog-hangai.com/
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著者紹介

連載眼科院長が教える!ライフスタイルに合わせた「白内障手術」ガイド

「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術

「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術

板谷 正紀

幻冬舎

白内障を治せば人生が変わる!ずっと忘れていた「見える喜び」を取り戻せば、人生は、もっともっと楽しくなる。