多くの中高年が直面する「親の介護」問題。老人ホームへの入居に抵抗を持つ人も多く、「親の面倒は子どもが見るべき」と親族一同考えがちだ。しかし、フリーライターの吉田潮氏は、著書『親の介護をしないとダメですか?』(KKベストセラーズ)にて、「私は在宅介護をしません。一切いたしません」と断言する。親孝行か、自己犠牲か。本連載では、吉田氏の介護録を追い、親の介護とどう向き合っていくべきか、語っていく。

 

後に、介護職の知人に聞いた話では、そこは「離職率が高く、利用料値上げが頻繁すぎるワースト施設」で有名とのこと。入居者が亡くなるから空きが出るのだと勝手に思っていたが、利用料を払えずに退所する人も実際には多いのだ。

 

入居時は払えても、度重なる利用料の値上げに音を上げる。特に、子供が親の介護代を負担していて、にっちもさっちもいかなくなるケースもあるそうだ。やはり子供は金を出しちゃいけない。今よりもさらに大変な時代となる自分の老後に蓄えておくべきである。

 

次第に、母も「そんなに急かすなんて胡散(うさん)臭いわね」と疑い始めた。また、最初から、ひとり厳しい意見をもっていたのが姉である。「経済的に不安なら、特養でいいと思う」と言い切っていたのだ。

 

たった4軒の見学で痛感した「経済的な壁」

このほかにも、認知症専門のグループホームやサ高住も見学したが、いずれも父には合わないと肌で感じた。

 

グループホームは認知症でも自立した人、身の回りのことがある程度できる人、特に女性に向いている。入居者は洗濯物を畳んだり、食事の準備をしたりと、できることは任せられるという。

 

 

父のように、家事を一切しない・したことがない人は厳しい。その施設長の女性にも父の体の状態を話したが、「お父様のような方はちょっと難しいかもしれませんね。うちは機械浴もないので……」とやんわりとお断りに近い返事をいただいた。

 

サ高住は、さらに自立している人でなければ無理な施設だ。介護スタッフが常駐というが、常に見守っているわけではない。普通のマンション住人と管理人の関係のようなものだ。

 

言わなければ歯も磨かない、ひとりで風呂も入れない、トイレすらおぼつかない父は、生きていけない。素敵インテリアに広めの個室ではあるが、言ってしまえばただの豪華なマンション。金額も月25万以上はかかってしまう。オプションを入れたらもっとかさむ。

 

たった4軒の見学でも肌で感じるものがある。見えてくるものもあった。なんといっても経済的な壁だ[図表]。

 

[図表]有料老人ホームと特別養護老人ホームの違い

 

サ高住や有料老人ホームでは、月額最低でも20万円以上かかる。ただし、初めに入居金を払うとその額に応じて、月額利用料が安くなるシステムもある。例えば、300万円払えば月額が18万円に、600万円払えば月額が13万円に、1000万円払えば月額は10万円に、といった形だ。年金収入額は少なくても、貯金だけはある人、あるいは家を売却してお金を用意できる人には、このシステムがあるという。

 

最初にこのシステムを聞いたときは感心したし、父にもチャンスがあるかも、と思った。が、父は病気を患(わずら)っているわけではないし、そう簡単には死なないはず。5年、10年、下手したら20年は生きると考えると、どうだろう。貯金をはたいて父を有料老人ホームに入れたとしても、さらに長生きするであろう母の暮らしは不安しかなくなってしまう。

父の生活か、母の安寧か…子供には何ができる?

◆父の年金の話

 

ざっくりぶっちゃけると、父の年金収入額は企業年金と厚生年金で、月に約23万円ある。月額20万のホームなら入れる、と思うかもしれない。ただし、父を高額な施設に入れれば、母の生活が苦しくなる。

 

親の介護をしないとダメですか?

親の介護をしないとダメですか?

吉田 潮

KKベストセラーズ

多くの中高年が直面する「親の介護」問題。『週刊新潮』の「TVふうーん録」コラムニストで、フジテレビ「Live News it!」コメンテーターの吉田潮さんが、自分の父が「認知症」となった体験をもとに、本音を書き下ろしました。 …

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