収益性に限らぬ意外な効果…企業×ゲストハウス事業の可能性

「ゲストハウス事業投資」は、個人の投資家だけでなく企業からも注目を集めています。今回は、ゲストハウス事業の活用法についてご紹介いたします。

収益性のほか、社内交流や福利厚生に活かしてES向上

株式や仮想通貨、投資信託など、多くの投資対象がありますが、常にそのメリットの多さから高い人気を誇るのが不動産投資です。なかでも昨今のシェアリングエコノミーやインバウンドの活発化により注目されているのが「ゲストハウス事業投資」。実は個人の投資家だけでなく、「企業」が事業の一部として、ゲストハウス事業を開始する場合もあります。果たして、そこにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

 

①外食業界×ゲストハウス事業

 

現在、非正社員を中心に人手不足に悩まされているのが飲食店業界です。帝国データバンクの調査によると、非正社員不足を抱える企業の割合は78.3%で、他業界と比べて3年連続1位を記録しています。

 

単位:% 注:2019年10月の矢印は2019年10月と2018年10月との増減、   2018年10月の矢印は2018年10月と2017年10月との増減を表す 参考:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2019年10月)」
[図表]従業員が「不足」している上位10業種 単位:%
注:2019年10月の矢印は2019年10月と2018年10月との増減、
  2018年10月の矢印は2018年10月と2017年10月との増減を表す
参考:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2019年10月)」

 

ゲストハウス事業で解決できる課題は大きく三つ考えられます。一つは、急激な高まりを見せる宿泊需要への施策として、ホテル・旅館事業と比べて基幹ビジネスの知見を活かせるという点です。一棟貸しが主流のゲストハウス事業では、点在する戸建て施設を同時にリモート管理・運営するという点で、外食事業での多店舗展開のノウハウを応用しやすく、一極集中型の集客スタイルであるホテル事業と比べて、親和性が高いと言えるからです。

 

二つ目は、ES(従業員満足度)の課題を改善できる点です。飲食店にとって、CS(顧客満足度)の向上はとても重要な観点です。しかし最近は、ESの向上にも精力的に取り組むことで、従業員の離職率低下及び業績の向上を図る企業が増えています。

 

ESの専門家として様々な業種を支援してきたESコンサルタントグループの代表である志田貴史氏によれば、社員間・組織間の適切なコミュニケーションや組織風土への従業員共感度などから測れる「企業風土の最適性」が、ES向上を図る重要なファクターであると述べています。つまり、組織の運営・経営陣とその他従業員の間の交流が必要不可欠なのです。

 

しかし、飲食店を運営する企業のほとんどが本社―支店の組織形態であり、さらに定休日が無い営業スタイルの場合、本社・支店間の密な交流・意見交換が日常的におこなえる環境ではありません。ゲストハウス事業により自社物件を所有することで、お客さまの宿泊施設としてだけでなく、社員旅行・社内研修などの際に活用することができます。

 

その結果、社内交流あるいは福利厚生の側面から社内のES向上に貢献すると考えられます。

 

三つ目は、点在する同社の外食施設との連携により、基幹事業と抱き合わせで収益化できる可能性が高いという点です。非常駐型ゲストハウスの「食事なし・素泊まり」という特徴を生かし、外食事業との連携による顧客獲得も見込めると考えます。「泊まれるレストラン」として人気がある、フランス発祥のオーベルジュのように、提供する料理の魅力で集客することも可能です。

低価格かつユニークなツアー提供が可能に

②旅行業界×ゲストハウス事業

 

訪日外国人の増加・業界規模の拡大など、インバウンド需要の増加で旅行業界も盛り上がりを見せています。競合他社との差別化・新規顧客獲得などの目的から、個々の観光客向けにオリジナルのツアーをコーディネートすることも増えているそうです。その際、自社で宿泊施設を保有することで、ゲストハウス自体の収益だけでなく、低価格かつユニークなツアー提供が可能になり、基幹ビジネスの収益増にも繋がります。

 

こちらは、沖縄ツーリスト株式会社が実際に富山県でオープンした「職人に弟子入りできる宿」です。元料亭として使用されていた古民家をゲストハウスに転用し、地元の3名の工芸作家や陶芸家、仏師らの作品が展示されています。ベッドアンドクラフトに宿泊すると、地元の職人に弟子入りしてワークショップに参加できるというユニークなサービスも話題を呼んでいます。

 

参考:トラベルニュース「沖縄ツーリスト、富山・砺波に『職人に弟子入りできる宿』開業」

参考:沖縄ツーリスト「宿泊施設 “職人に弟子入りできる宿”ベッドアンドクラフト『巴(ともえ)』オープン 」

 

企業製品を置いて商品認知・購買を高めつつ、CSに貢献

③メーカー業界(衣料品・家具など)×ゲストハウス事業

 

各企業で製造・販売している商品とゲストハウス事業のコラボレーションにより生まれる効果もあります。

 

ゲストハウス事業による最大のメリットは、施設内に自社製品を置いたり製品イメージをベースに施設デザインをしたりすることで、日本中・世界中から訪れるゲストへの、企業・製品認知及び販売促進につながることです。

 

とりわけ話題となったのが、女性インナーウエアブランドとして高い人気を誇る株式会社ワコールホールディングスの事例です。

 

ワコールは2018年4月より、町家をリノベーションした計4軒の宿泊施設を京都市にオープンしました。コンセプト、ロゴデザイン、ネーミングなどに多くのクリエイターが参加している点でも注目されました。

 

 

ワコールの事業は、女性を美しくするというのが最大のテーマで、「美・健康・快適さ」を提供し続けていくことが大きなミッションの一つだと言います。そして、今回の町家事業はワコールの事業領域にかなり重なる部分があり、美は施設の美しさに共通し、健康は心のゆとりであり、さらに美と健康が快適さにもつながっていると語っています。

 

宿泊施設「京の温所(おんどころ)」では、昨年期間限定で“ここちよい眠り体験”宿泊プランを実施しました。この宿泊プランは、9月3日の“睡眠の日”に合わせた特別プランで、ワコールのナイトウェアブランド「睡眠科学」のパジャマやカフェインレスのハーブティなど、ここちよい眠りのためのアイテムが施設内に用意されました。このようなプランを用意することで、企業商品と出会う機会を創出し、商品認知・購買につなげるとともに、宿泊施設としての満足度向上も見込めます。

 

 

参考:日経X TREND「ワコールが町家を改修して宿泊施設に、本業のブランド価値生かす」
参考:PRTIMES「ワコールがプロデュースする京町家宿『京の温所(おんどころ)』『睡眠科学』のパジャマ付き、期間限定“ここちよい眠り体験”宿泊プランを販売 」

親和性が低そうでも、相利共生の可能性は大いにある

ゲストハウスが基幹事業の活性化を生み出しながら、基幹事業によりゲストハウス事業を支えるという相互作用の関係性を実現できるかもしれません。

 

このように、企業テーマやミッションとゲストハウス事業との親和性を見出し、新規事業としてスタートさせることで、さらなるブランドイメージや企業イメージの向上及び、収益化が期待できます。

 

いかがでしょうか。一見、自社事業と親和性の低そうなゲストハウス事業も、あらゆる業界・企業にメリットをもたらす可能性が大いにあります。

 

基幹ビジネスに課題を感じている人も、新規事業をスタートしたいと考えている人も、一度ゲストハウス事業を検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

浅見清夏

ハウスバード株式会社 代表取締役

 

ハウスバード株式会社 代表取締役社長

●青山学院大学 卒(在学中、上海・復旦大学に留学)
●アクセンチュア(株)戦略コンサルティング本部勤務
●中国・上海にて、幼児教育事業 レインボーバード幼児教室を起業後、ヤマトキャピタルパートナーズに売却
●政府系VC・産業革新機構にて投資サイドで勤務

著者紹介

連載木造住宅をレトロモダンな「一棟貸切旅館」に…古民家再生投資のノウハウ

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