「価値は上がり続ける」バブルが魅せた土地神話に翻弄された男

不況の渦から抜け出せない日本。一昔前の輝かしい日本経済を知らない世代が、随分と多くなったものです。「あの頃はよかった…」と考えがちですが、こと投資という観点から考えると、多くの負の側面が指摘されている時代でもあります。本記事では、東京アーバンコンサルティング株式会社代表の相馬耕三氏が、不動産投資の失敗事例を紹介します。

バブル期に購入した不動産の多くが「塩漬け」状態

土地神話時代といわれたかつてのバブル経済下では、多くの資産家が不動産によるキャピタルゲインを得ていました。不動産の価値は絶対に下がらない、上がり続けるだけだと信じられていた時代です。ところが、バブルがはじけた瞬間に不動産の価値は大幅に下落し、不動産オーナーのもとには借金と、売ったとしてもろくな値段のつかない不動産だけが残りました。

 

東京都渋谷区に住むAさんも、不動産に悩まされた一人です。Aさんは、親から相続した〝御殿〟と呼ばれるような大きな住宅と、1000平方メートルを超える敷地を所有していました。

 

バブルも終わりかけの1990年、「所有不動産を放ったらかしにしておいても、固定資産税が負担になるだけ」と、財閥系の大手ハウスメーカーなどのすすめで、Aさんはその敷地にRC造・エレベーター付きの立派な賃貸マンション(25部屋)を建てました。金融機関からの借り入れは5億5000万円です。

 

都心部への通勤が30分ほどの立地で住環境も良いため、建築後間もなくは1部屋当たり月35万~50万円で満室が続き、順風満帆かと思われました。

 

しかしバブル崩壊後、環境は激変しました。1部屋当たりの家賃は2年ごとの更新のたびに下がり続け、最終的には半分にまでなりました。それでも空室を埋めることができず、月々の賃料収入が借入金の返済額にも満たない持ち出し状態になってしまったのです。

 

そうこうしているうちにマンションは築20年となり、中小規模の修繕だけでなく、大規模修繕も考えなければならない時期に差し掛かってきました。しかしAさん自身も年老いてきて、子ども世代にとって何が得な選択かという正しい判断ができなくなりました。配偶者と二人のお子さんも不動産の知識がないために、的確なアドバイスができません。

 

周囲の誰もが正しい判断をすることのないままマンションは老朽化し、この状態のままでAさんが亡くなってしまうと、負担は子どもの代に残ってしまいます。Aさんは、子どもたちに相続税と老朽化したマンションの経営という負担を背負い込ませてしまうわけにはいかないと、悶々とした毎日を過ごしています。

 

不動産仲介業者からは「建て替えるのも費用がかかるので、損を出しても売却して税金を減らしたほうがいい」、税理士からは「借金があればむしろ相続税対策になるから残しておいたほうがいい」などと様々な意見が出てきて、誰を信じればいいのかわかりません。

 

結果的に、悩みながら税金だけを払い続けることになり、そのうちキャッシュが底をついて銀行からも差し押さえを受けるはめになります。いつか価値が上がったり、入居者が増えたりするのではないかという淡い期待もあるのかもしれませんが、とりあえず所有しておくしかない不動産こそ、「塩漬け」状態だといえます。

 

「誰を信じればいいのかわからない」
「誰を信じればいいのかわからない」

「持つも損」「売るも損」で手の打ちようがなくなる

「塩漬け」は投資の世界でよく使われる言葉ですが、不動産業界での「塩漬け」は本来、「瑕疵(かし)のある物件」など市場に出すことができないものを指します。

 

「塩漬け」といわれる問題不動産となれば、まず市場性の制約から相場水準である正常価格を大幅に下回る特別価格でしか売れません。さらに、銀行や企業などが担保として所有していれば、不良債権の解消のためにはそれらの同意が必要なため、対処のしようがない状態となってしまうのです。

 

Aさんの例のように「持つだけで損になってしまうが売ることもできないでいる」ような不動産も、活用方法を間違えて塩漬け状態にしてしまった、と見てよいでしょう。

 

地価や建物を含めた不動産価格が緩やかにでも上昇するならば、対策の打ちようはいくらでもあります。しかしバブル崩壊以降、総じていえば地価や不動産価格は下がり続けているのです。Aさんも手をこまねいているだけで、まさに打つ手を見出せませんでした。売却することも、有効に使うこともできないままになってしまったのです。

 

特に建物は、年月の経過とともに確実に物理的、機能的減価等が発生するため、古くなりすぎると運用が難しい資産といえます。

 

このような不動産の塩漬け状態は全国各地に見られます。たとえば大阪地方の日帰り温泉のある、紀伊半島のリゾート地の多くは自然が多く残り住環境も良く、生活の利便性も高いため、バブル期には宅地分譲地にしたり、別荘地としての分譲が行われていました。ところがバブル崩壊後、それらの土地は市場価値が大きく下がり、いわばバブルの残骸をさらしているような状態になりました。

 

人口の減少と老齢化が進むとともに、ますます住宅が都心の一部に集中し、従来から過疎化が進んでいた市町村の土地は価値を失っていくことになったのです。こうなってしまうと、土地を所有する資産家の力だけで立ち直らせることはできません。いったん塩漬けになった土地は、大手デベロッパーなどの力を借りても簡単に甦らせることはできないのです。

 

「なぜ、所有している不動産を何の対策も取らずに放っておいたのか」と他人から言われることもあるかもしれませんが、多くの資産家にとっては「手の打ちようがなかった」というのが本当のところでしょう。

東京アーバンコンサルティング株式会社 代表取締役社長

1967年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、三菱信託銀行入社。本店不動産部配属となり、不動産仲介・鑑定・開発・各種コンサルティング業務に従事する。その後、米国ロサンゼルス支店融資課長、次長、本店国際不動産コンサルティング業務担当部長等を歴任し、1991年に米国三菱信託銀行(ニューヨーク)会長兼社長に就任。
95年、英国系国際不動産コンサルティング会社である日本ナイトフランク株式会社代表取締役社長に就任。97年に東京アーバンコンサルティング株式会社を設立、現在に至る。
不動産鑑定士。不動産カウンセラー(日本不動産鑑定協会)。不動産コンサルティング技能資格(国交省所管)。宅地建物取引主任者(国交省所管)。不動産専門調停委員(東京簡易裁判所)。

著者紹介

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相馬 耕三

幻冬舎メディアコンサルティング

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