子どもは本来、学ぶことが大好きです。好奇心旺盛な幼児期に、適切な教育を受けさせることが重要となります。本連載では、25年前から幼児教育に取り組んでいる株式会社コペル・代表取締役の大坪信之氏が、子どもに「学ぶことの楽しさ」を教える方法を解説します。本記事では、「スルースキル」の重要性について見ていきます。

物事をスムーズに運ぶ「スルースキル」

ストレスは、健康にも精神衛生上にもよくないことはご存じだと思います。

 

ストレスは、人にとっては不快であるため、ストレスを感じるような困難なことが起こったとき、人は全力で立ち向かおうとするものです。

 

でも、いつも真正面から受け止める必要はありません。ときには、理不尽で攻撃的な言葉や態度を無視したり、聞き流したりしたほうが、大きな論争を回避して、物事がうまく進むこともありますよね。

 

こうした判断を的確に行い、物事をスムーズに運ぶ能力を「スルースキル=鈍感力」と呼びます。

 

一般的に、子どもなど、社会経験の少ない人はスルースキルが低く、感情的になってしまうことが多いそうです。

 

子どもは感情的になってしまうことが多いが…
子どもは感情的になってしまうことが多いが…

 

ストレス社会で生き抜くには、嫌なこともぐっと我慢して、何事もなかったかのように「スルー」することも大切ですよね。

 

そして、このスルースキルと脳の働きの関係がある研究によって判明しました。

 

脳の働きがよい人の脳の使い方の違いは、どこにあるのでしょうか?

 

アメリカのロチェスター大学の教授、マイケル・メルニック氏らが行った研究によると、IQの高い人は物事への集中力が高いということが判明しました。

 

メルニック氏らは、被験者を対象に標準的なIQテストと視覚テストを実施しました。

 

視覚テストの内容は、パソコンのモニター上を左右に移動する黒と白の棒の動画を見てもらうという簡単なものです。

 

棒は小、中、大の3つの大きさで現れ、表示される場所も画面中央の限られた部分から画面全体とさまざまです。

 

被験者には、この棒が左右どちらに動いたかをできるだけ早く識別してもらい、研究者たちは識別するまでにかかった時間を計測しました。

 

その結果、IQが高い人ほど棒の大きさや表示される画面の領域が小さいときに、棒の動きを識別することができたことがわかりました。

 

一方、棒の大きさが大きい場合では、IQの高い人ほど、反応が遅いという結果になりました。

 

これに対して、研究を行ったメルニック氏は、「過去の研究からも、IQの高い人ほど、大きな画像の検出が苦手だということが判明しています」と語ります。研究者らは、その理由について、ほとんどの状況においては、背景を抑制する働きは、視覚情報を処理するために、不可欠であるためとしています。

 

言い換えると、車を運転する、自転車をこぐ、道を歩くといった日常の場面において、大切なのは、背景の部分よりも前景の小さな物体の動きであるということ。

 

つまり、IQの高い人はそうでない人よりも集中力が高く、気が散ること(実験では背景の動き)をうまく処理する能力に長けているということが判明したのです。

脳の働きがよい人=不要な情報のスルースキルが高い

背景の動きを処理できることが、頭のよさを測る唯一の指標とはいえませんが、研究を行ったメルニック氏は「このテストはとても単純ですが、IQの測定に密接に関係しています。何が脳をより効率的に動かすのか、つまり、より頭がよいのかを明らかにするための手がかりになるでしょう」と述べています。

 

脳の働きがよい人は、注意を惹く目先の情報に惑わされず、大事な情報だけを選択して認識することができる人のことなのですね。

 

この結果から、IQの高い人のほうが必要な情報をうまく処理する能力に長けている=スルースキルが高いといえるのです。

 

一流の人が、人格的に優れているのは、このことからも納得できます。

 

子どものストレスをすべてなくしてあげることはできませんが、スルースキルを身につけさせてあげることが、ストレスを取り除いてあげることになるということですね。

 

 

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    本連載は、株式会社コペルが運営するウェブサイト「コペル」の記事を転載・再編集したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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