「警察官が多い街ほど犯罪が多い」…統計に騙されない考え方

これからの時代を経済的に困窮することなく生きるには、「経済センス」を磨くことが不可欠です。経済コラムで多くのファンを持つ久留米大学教授の塚崎公義先生が、身近なテーマを読み解きます。第4回は、統計の因果関係を正しく理解することで、株価が景気の先行指標となる理由等を学びます。

「警察官が多いから犯罪が多い」わけではない

「警察官が多い街ほど犯罪が多い」というのは事実です。しかし、「警察官が多い街ほど犯罪が多いから、警察官を解雇しよう」という主張は間違いです。理由は「警察官が多いこと」が「犯罪が多いこと」の原因ではないからです。

 

「警察官が多い街ほど犯罪が多い」理由はふたつあります。

 

第一は、「犯罪が多い街は税金が入ると警察官を雇うが、犯罪が少ない街は税金が入っても警察官を雇わずに公園を作るから」です。原因と結果が逆なのですね。

 

第二は、「人口が多い街は警察官も犯罪も多いから」です。東京と久留米を比べれば、絶対に東京の方が警察官も犯罪も多いですよね。

 

このように、AとBが似ているという場合、AがBの原因である場合(子が親に似ている)だけではなく、BがAの原因である場合(親が子に似ている)、ほかに原因があってAもBもその結果である場合(兄弟だから似ている)、他人だが偶然似ている場合、などがあるので、注意が必要です。

因果関係を見誤ると、統計にあっさり騙される

因果関係をしっかり考えられないと、「統計使い」に騙されることになりますから、気をつけたいものです。嘘つきな人が統計を使って他人を騙そうとする場合もありますが、そればかりでなく、話している本人が因果関係を誤って理解している場合もあるようです。

 

話者が自分で信じているだけに、聞き手が信じやすいということもありますが、読者自身が話者になるときにも、因果関係を間違えて恥をかかないように気をつけましょう。

 

たとえば、「医者が少ない街ほど病人が少ないから、医者を減らせ」という主張は、おそらく誤りです。「病人が少ないから医者が少ない」のかもしれませんが、「医者が少ない街からは、病人は引っ越していき、元気な人だけ残っている」のかもしれませんね。

 

「アイスクリームが売れる日は水の事故が多いから、アイスクリームを禁止しよう」というのも誤りです。気温が高い日はアイスクリームが売れると同時に、水遊びをする人が増えるので水の事故も増える、というだけのことですから。

 

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アイスクリームの売上と水の事故の関係性とは…?

あとから動く景気が原因で、先に動く株価が結果!?

株価は景気の先行指標だ、といわれます。株価が上がると景気がよくなり、株価が下がると景気が悪くなる、というわけです。

 

「株価が上がると株主の財布の紐が緩むので個人消費が増えて景気がよくなる」といったことは皆無ではありませんが、日本の場合には個人で株を持っている人は多くないので、そうした影響は小さいでしょう。

 

じつはこれは、あとから動く景気が原因で、先に動く株価が結果なのです。投資家たちが半年後の景気を予想して、景気が上向きそうなら株を買うわけです。予想が当たれば、株価が上がった半年後に景気がよくなる、というわけですね。

 

もっとも本件に関しては、景気が原因であるという以外に、外国に原因がある場合もあります。たとえば、米国でリーマン・ショックが発生すると、株価はすぐに下落しますが、景気が悪化するのは対米輸出が減ってからなので、株価下落が景気悪化に先行することになる、というわけですね。

 

こうなると、因果関係を判断するのは人工知能ではなく、「人間の常識と勘」ということになりそうですね。

原因でもあり結果でもある、という場合も

賃金上昇率の高い国は、企業が人件費を売値に転嫁しますから、物価が上がりやすくなります。物価が上がると労働組合が賃上げを要求しますから、賃金上昇率が高くなります。

 

こうした悪循環でインフレが加速していく可能性があるため、各国の中央銀行はインフレの芽を早めに摘み取っておこうとするわけですね。最近の日本の状況を見慣れている若者には違和感があるかもしれませんが(笑)。

 

好循環も、もちろんあります。物(財およびサービス、以下同様)が売れると、企業が物を増産するために人を雇います。雇われた人は給料が入るので物を買います。販売好調が生産増の原因であり、生産増が販売好調の原因となっているわけですね。

「景気の予想屋」と「財務省の御用学者」の見方の違い

以下は余談です。経済成長率の高い国は、税収が増えるので財政赤字が減る傾向にあります。これが、筆者を含めた景気の予想屋たちの常識だと思います。

 

しかし、財務省の御用学者の眼からは、「緊縮財政で財政赤字が減ったから長期金利が下がって経済成長率が高まったのだろう」と見えるかもしれません。

 

理論的には、後者も十分可能です。そこで、筆者は担当している財務省の新人研修で「後者を支持できるようにマインドを訓練しなさい。そうしないと、財務省で出世できないから」と冗談をいうことにしているわけです。

 

ただ、財務省にお願いしたいのは、「だから日本でも緊縮財政をすれば経済成長率が高まる」などと考えないで頂きたいのです。日本は、緊縮財政をしても金利がこれ以上下がりませんから、成長率を高める効果は見込めないからです。

 

本稿は、以上です。

 

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塚崎 公義

久留米大学教授

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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