視界がゆがむ、ぼやける…中高年は「視細胞の死滅前」に対応を

目の病気は誰だって怖いもの。年齢を重ねれば、老眼や白内障なども始まり、視力の衰えをよりいっそう感じることでしょう。「年だから仕方がないか…」と、納得してしまいそうになりますが、思わぬ病気を発症している可能性に、気づいているでしょうか。本連載では、はんがい眼科・板谷正紀院長の書籍『「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して、眼病の知識をわかりやすく解説します。

「視界のゆがみ」の改善は「早期手術」が鍵

◆網膜の表面に張った膜が原因の黄斑前膜(上膜)

 

加齢による「後部硝子体剝離」などをきっかけに、網膜の表面に膜が張ることがあります。その膜が網膜を絞り込むように引っ張り、網膜の中心部分にある黄斑(おうはん・・・網膜の中心にある、視細胞が密集している部分)を分厚くしたり、皺を寄せたりして黄斑を変形させるのが、黄斑前膜または黄斑上膜という病態です。黄斑の変形のために、視力低下や見え方のゆがみなどの症状があらわれます。

 

このまま放置しても自然に良くなることはなく、徐々に悪化していきますので、黄斑前膜を除去するために黄斑円孔同様、硝子体手術を行います。

 

手術をうけることによって見えにくさが改善します。多くの場合、週単位のスピードで視力は改善します。ただ、ゆがみはゆっくりと改善します。ゆがみが残ったり、ゆがみの方向が変わったりすることもあります。

 

手術のタイミングが早いほど、視力の回復は速く、術後2週間で1.2になることも稀ではありません。ゆがみも早期に手術を行うほど消失しやすくなります。

 

黄斑前膜は放置すると悪化することがあり、手術を受けることで視力低下の可能性がなくなります。またゆがみも早期に手術を行うほど消失しやすくなります。ですからつぎのようなタイミングで黄斑前膜手術を受けることをお勧めしています。

 

① 黄斑前膜による視力低下、ぼやけなどの症状がある場合

② ゆがみがある場合

③ 黄斑のかたちが崩れたとき

 

手術では、硝子体手術によって硝子体を切除し、細い膜剝離用鑷子を用いて網膜前膜を取り除きます[図表1]。黄斑円孔の手術の方法とほぼ同じですが、違いは、通常は空気やガスを入れる必要がないので体位制限がないことです。通常の症例であれば、平均30分前後の手術時間になります。

 

[図表1]
[図表1]

中高年では進行がはやい「裂孔原性網膜剝離」

網膜に孔が開き、土台から剝離するのが「裂孔原性網膜剝離」です。剝離している網膜は、土台から栄養や酸素をもらえないため、光を感じる視細胞が死んでいきます。網膜の中央の黄斑まで及ぶと視力が低下します。

 

さらに放置すると網膜剝離は網膜全体に及び(全剝離)最後は失明に至ります。ときには剝離が治りにくい増殖硝子体網膜症が続発し、やはり最後は失明します。失明を防ぐためには、できるだけ早く網膜を手術して、ふたたび土台に貼り付けてやる必要があります。

 

裂孔原性網膜剝離には、若い人におきるタイプと中高年におきるタイプがあります。若年のタイプは進行がゆるやかですが、中高年に起きるタイプは、進行が早く緊急性が高いのですぐに手を打つ必要があります。いずれのタイプも網膜にできた孔から硝子体液が網膜の裏側に入り込んで網膜剝離が進みます。

 

黄斑部の剝離がおきて一定時間がたつと徐々に視細胞は死滅し、網膜がもとにもどっても視機能のもどりは悪くなっていきます。網膜剝離の治療で緊急性が高い理由の1つはそのためです。

 

手術にはまず強膜内陥術(強膜バックリング)と呼ばれる方法があります。これは目の壁である強膜にシリコンスポンジやシリコンバンドと呼ばれるバンドを孔のあいた位置に糸で縫い付けて裏打ちする方法です。これによって網膜の孔の周囲が持ち上げられて網膜と土台がくっつきます。つぎに孔の周りを熱凝固または冷凍凝固で固め孔を閉鎖します。

 

もうひとつの方法としては硝子体手術による治療があります。最近は若い人の網膜剝離を除いてほとんどが硝子体手術で治療するようになってきました。まず網膜に孔を開けた原因である硝子体をできるかぎり切除します。

 

その後、網膜の下に溜まった液を抜きながら眼内を空気またはガスに置き換え、網膜の孔の周囲をレーザーで光凝固して網膜裂孔を閉鎖します。術後下向きをして空気またはガスで孔を押さえます。孔をひっぱっている硝子体をいかに切除するかが成功の鍵です。

 

[図表2]
[図表2]

 

[図表3]
[図表3]

近視・遠視…「屈折の違い」と病気は関連している

ところで、網膜剝離や網膜分離症といった病気は、近視の人に多いのをご存知でしょうか。

 

多くの近視は眼球が前後方向に長く伸びることによっておこります。強度近視は、ほとんどがこのタイプです。網膜が耐えられないほど伸びきると、さまざまな病気がおこるのです。

 

たとえば、伸びきって薄くなった網膜には網膜剝離がおきやすくなります。さらに網膜が引きのばされると、網膜が裂けてしまう網膜分離症や、黄斑の中心に孔があく黄斑円孔が起きやすくなるのです。網膜分離症を放置すると、治りにくい黄斑円孔網膜剝離になることもあります。

 

また近視の人にこうした眼底疾患がおこりやすいように、遠視の人には閉塞隅角緑内障がおこりやすいといわれています。自分の目の屈折とかかりやすい病気の関連を覚えておくとが大切です。

 

 

板谷正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

https://eyeblog-hangai.com/
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著者紹介

連載眼科院長が教える!ライフスタイルに合わせた「白内障手術」ガイド

「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術

「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術

板谷 正紀

幻冬舎

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