不動産投資において、最大のリスクは「空室」ではなく「家賃滞納」であるといっても過言ではありません。本記事では、株式会社CFネッツ代表取締役兼CFネッツグループ最高責任者・倉橋隆行氏監修の書籍『賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法』(プラチナ出版)より一部を抜粋・編集し、実例とともに「賃貸トラブル」の予防策や解決法を具体的に解説します。

 

その後、借主Tからは、支払も連絡もないまま、通知書に記載した支払期日を過ぎましたので、賃貸借契約を解除しました。通常、賃貸借契約の借主に対し、契約解除の通知書を送ったものの、滞納家賃の支払はなく、契約解除日を過ぎても、まだ借主が建物に居座っているという場合、建物明渡の請求と滞納家賃の請求の民事訴訟を提起します。

 

裁判所へ提起する際は、当社が訴えている内容を記載した訴状と、その証拠となる証拠書類のコピー、証拠説明書、当社の資格証明書、建物の全部事項証明書、建物の固定資産評価証明書、必要分の切手と収入印紙を、裁判所へ提出します。

 

ちなみに、訴状一式の提出は郵送でも問題ありませんが、初めて訴状を提出する方は、実際に裁判所に持って行ったほうが、書記官から「ここが違いますよ」とか、「こういうふうにしたほうが良いですよ」と教えてもらえますため、裁判所へ持って行くことをお勧めします。

 

訴状を郵送したあとは、裁判所の担当書記官から、連絡があるので、それを待ちます。

 

裁判所は、訴状や証拠書類等の内容を見て問題がなければ、事件を受理します。事件受理されれば、裁判所の担当書記官から「〇月〇〇日に、第1回目の口頭弁論を、裁判所での〇〇〇号法廷で行います」という連絡が来ます。裁判所は被告に対し、それと同じ「〇月〇〇日に第1回目の口頭弁論を行います」という呼び出し状と、当社が作成、提出した訴状一式を郵送します。

 

この第1回目の口頭弁論の日時が決定した日から、第1回目の口頭弁論が行われる日までの間に約1ヵ月くらいの期間があります。もし、裁判所が被告に対し発送した呼び出し状と訴状一式を、被告が受け取らなかった場合や、受け取るのが遅くなった場合は、口頭弁論の日時が約1ヵ月ほど延期されます。

 

そのため、裁判所での口頭弁論が行われる日が、こちらが裁判所へ民事訴訟を提起した日から、2ヵ月先であったり、3ヵ月先であったりすることがあります。その点も見越して早目早目に手を打っておかないと、滞納家賃が膨れ上がりますので注意が必要です。

口頭弁論を「無断欠席」してしまうと…

さて、世間一般でイメージされる「裁判=口頭弁論」の流れですが、「滞納している家賃を支払え、建物を明け渡せ。」という内容のため、通常、次の2パターンとなります。

 

1 被告が答弁書を提出せず、口頭弁論を無断欠席した場合は、こちらの主張が認められる→勝訴判決

2 被告が口頭弁論へ出てきて、「私が悪かったです。すみませんでした。これから分割で滞納家賃を支払います」と言って、話し合いがまとまった場合→和解成立

 

この判決もしくは裁判上の和解成立で、債務名義取得となり、ここで初めて強制執行や差押が可能となります。

 

判決言い渡しから控訴するまでの2週間の期間を「控訴期間」といいますが、これは〝判決が言い渡された日から2週間"ではなく、裁判所が原告被告へ郵送した判決書が、原告被告それぞれへ到達してから2週間となります。原告被告のどちらかが、裁判所が送った判決書の受け取りが遅れますと、控訴期間は延びます。そのため、家賃を滞納している借主である被告が、裁判所から送られてくる判決書をなかなか受け取らないと、その間、滞納家賃はさらに膨れ上がります。

 

今回の借主Tのケースに戻りますが、第1回目の口頭弁論が裁判所で行われましたが、借主Tは、答弁書を提出せず、また無断欠席しました。被告(=借主T)が答弁書を出さず、口頭弁論を無断欠席しますと、裁判所は原告(=当社)の主張を被告(=借主T)が認めたと判断します。これにより、この第1回目の口頭弁論の日をもって、終結することとなりました。

 

余談になりますが、もし、皆様が、いきなり身に覚えのないことで被告となって、裁判所から口頭弁論の呼び出し状や訴状が郵送されてきた場合、理不尽な内容だとか、全く知らないことだといって、口頭弁論を無断欠席してしまうと、原告の主張がそのまま認められてしまいますので、必ず裁判所での口頭弁論へ出るとか、もしくは裁判所から郵送されてくる呼び出し状には、〝あなたの言い分を書いてください"という「答弁書」も同封されていますため、「原告の主張はおかしいです。私は、全く身に覚えがありませんため争います。主張は追ってします。第1回目の口頭弁論は都合により欠席します」といった答弁書を裁判所へ提出しておけば、通常、第1回目の口頭弁論で終結するということはありません。裁判所を通じて訴えられた場合は、必ず何かしらの反応をしておかないと、原告の主張がそのまま通ってしまいますので、気をつけてください。

 

さて、借主Tは無断欠席しましたので、口頭弁論はその日で結審となり、「建物を明け渡せ。」「滞納家賃を支払え。」「建物明け渡しまでの損害金を支払え。」という内容の判決が言い渡されました。

 

判決書(図表1)が、裁判所から借主Tへ送達されてから2週間、借主Tからは控訴が出ることはなく、控訴期間満了となりました。なお、控訴期間が満了して、判決が確定したからといって、貸主が勝手に、室内の荷物を撤去処分することは、「自力救済」にあたり、違法行為となります。建物明け渡しの手続も、建物所在地を管轄する地方裁判所へ強制執行の申立てをする必要があります。

 

[図表1]実際の判決書
賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法

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