物が見えにくい…実は体の病?目の手術で「重度の糖尿病」判明

目の病気は誰だって怖いもの。年齢を重ねれば、老眼や白内障なども始まり、視力の衰えをよりいっそう感じることでしょう。「年だから仕方がないか…」と、納得してしまいそうになりますが、思わぬ病気を発症している可能性に、気づいているでしょうか。本連載では、はんがい眼科・板谷正紀院長の書籍『「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して、眼病の知識をわかりやすく解説します。

白内障の手術前の採血で「重度の糖尿病」が判明

◆事前の採血でHbA1Cがなんと14

 

私が手術をしたある比較的若い白内障の患者さんの症例です。

 

白内障手術をされる患者さんは高齢の方も多いので、体の状態を診るため、手術前には採血や心電図など入念な検査をします。糖尿病になると白内障になりやすく、糖尿病網膜症など白内障以外の目の病気を併発するおそれもあるので、血糖値の検査は欠かせません。そこでこの患者さんの採血をしてみたら、糖尿病の指標となるHbA1Cがなんと14という異常に高い値がでました。

 

HbA1Cは、「ヘモグロビンエーワンシー」と読みます。これは「血糖値の通信簿」ともいわれる数値で、食事をとるかとらないかですぐに数値がかわる単純な血糖値の検査結果とちがって、過去2から3カ月の血糖値がどうだったかを示してくれる便利な指標です。最近では健康診断などでもこの数値に注目することが多くなったので、名前ぐらいは聞いたことがあるでしょう。

 

HbA1Cは基準値が6で、それを越えると糖尿病が疑われます。8を越えると毛細血管の流れが滞るなど合併症が進行し、手足のしびれなどの症状も出てくるといわれています。10を越えると入院も必要とされているので、この患者さんの14という数値は途方もないものです。すぐにでも糖尿病の治療をはじめないと、それこそ命にかかわります。さっそく内科の先生を紹介しました。

 

◆白内障は他の病気と関連している場合が多い

 

重度の糖尿病がみつかったこの患者さんも、血糖値が落ち着いてから手術を行いました。幸い「糖尿病網膜症」という病気は確認されませんでした。瞳が開きにくいのがややリスクで万全の準備を整えましたが、結果はまったく問題なく標準的な白内障手術をおこない、すっかり視力を回復しました。こうした重度の糖尿病の患者さんでも、診療科間連携を行い全身の状態を管理下に置くことで、白内障手術をおこなうことは可能なのです。

 

最近ではガンや心臓病などを患っている人でも、積極的に白内障手術をするようになりました。目がよくみえるようになることで、日常生活に意欲が生まれ、それが病を治そうという気力につながると考えられているのです。

 

それはさておき、この患者さんの白内障が加齢だけによるものか、あるいは重度の糖尿病が原因の併発型白内障なのかは判断できませんが、白内障が単純に白内障だけにおわらず、ほかの目の病気はもちろん、全身の病気と関連している場合が多いことはよく知られていることなのです。

 

◆糖尿病網膜症、緑内障などの疾患と白内障の関係

 

たとえば先の例の患者さんのように重度の糖尿病の人は、白内障になりやすい傾向があります。

 

糖尿病によって併発する目の病気で、もっとも恐いのは糖尿病網膜症です。以前はこの糖尿病網膜症をみつけるには、診察用の顕微鏡(細隙灯顕微鏡)で眼底をみたり、眼底写真を撮ったりする以外に方法がなかったので、白内障があると眼底が検査しにくく経過観察の妨げになる場合がありました。

 

同じことは緑内障にもいえました。白内障によって水晶体ににごりがあると緑内障視野検査が十分におこなえません。視野が狭くなったり欠けたりする症状の進行をうまく観察できなくなるのです。こうした症状は白内障でもおきますから、白内障が進んだのか、緑内障が進んだのかわからなくなるのです。

 

もちろん最近では、OCTという検査機器があるので、白内障で水晶体がにごっても眼底の状態は正確に把握できるようになりました。それでも、緑内障の人がはやめに白内障手術をした方がいいことにかわりはありません。

目の見えにくさの原因は「白内障」だけではないかも?

先の例では白内障手術の術前検診で、コントロール不良な糖尿病がみつかったのですが、白内障の陰にはもっと怖い目の病気がかくれている場合があります。加齢による見えにくさは老眼だけが原因ではありません。それと同じことが、白内障と他のもっと怖い目の病気との関係にもいえるのです。

 

人間の目の見えにくさの原因は、大きく分けると、カメラのレンズに当たる部分(角膜と水晶体)の異常とフィルムに当たる部分(網膜と視神経)の異常の2つになります。もっとも、目のレンズである水晶体は、傷つきやすい「ふくろ」にお菓子のグミのような弾力のある物質が充塡されているものですから、カメラのレンズのハードなイメージとはかなり違うのですが。

 

それはともかく、カメラのレンズに当たる部分の異常には白内障のほか角膜の病気や瞳孔、虹彩の異常などがあります。もうひとつのフィルムに当たる部分の異常には日本人の失明原因となる疾患がずらっとならんでいます。これが緑内障と眼底疾患といわれるもので、日本人の失明原因は、ほとんどがこれです。なかでも、もっとも怖いのが緑内障です。それについては、本連載「日本人の失明原因、ダントツ1位は「緑内障」…早期発見が鍵」で詳しく説明しています。

 

板谷正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

https://eyeblog-hangai.com/
▼多焦点白内障手術無料説明会 開催中!▼
http://seminar.hangai.org/multifocal_cataractsurgery/

著者紹介

連載眼科院長が教える!ライフスタイルに合わせた「白内障手術」ガイド

「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術

「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術

板谷 正紀

幻冬舎

白内障を治せば人生が変わる!ずっと忘れていた「見える喜び」を取り戻せば、人生は、もっともっと楽しくなる。