子どもに「株式会社ってなに?」と聞かれたときの正しい答え方

もしお子さんに「株式会社ってなに?」と質問されたら、あなたは答えられますか? もしかしたら「知っているつもり」になっているだけで、正しく理解できていないかもしれませんよ。軽妙な経済コラムで多数のファンを持つ久留米大学教授の塚崎公義先生が、経済初心者のための超入門講座を開講! 原則として毎月最終金曜日(プレ金)の掲載です。記念すべき第1回は「株式会社」の定義とそのしくみについて解説します。

子どもの質問に「ゼロ回答」とならないように…

塚崎公義(久留米大学教授)がお送りする「経済初心者のための〈超入門〉講座」シリーズがはじまりました。このシリーズは、「初心者のために、わかりやすく経済のしくみを説明する」ことを目指したものです。

 

経済学の初心者が子どもに質問されたとき、「ゼロ回答」をしなくてすむように…ということを考えながら書いていきます。初心者の皆様はもちろんですが、そうでない方々にとっても、「理解しているつもりでも、子どもに質問されると答えられない」ケースがあるはずです。そうした場合にもお役に立てれば幸いです。

 

なお、わかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。あらかじめご了解いただければ幸いです。

株式会社のメリットを、パン屋の経営を例に解説

私が100万円を出してパン屋を作るとしましょう。100万円でパンを仕入れて、それを110万円で売って、10万円儲けよう、というお店です。私がすべて決めて、儲けはすべて私のものになるのだから、話は簡単です。100万円が110万円になるならば、悪い話ではありません。

 

しかし、万が一パンがまったく売れなかったら、私は100万円の損をすることになり、とても困ってしまいます。「仕入れるパンの量を減らして、1万円分だけ仕入れて1万1000円で売る」という選択肢もありますが、そのために店番のアルバイトを雇うのでは、効率が悪すぎです。

 

次に、100人のサラリーマンが1万円ずつ出し合って、パン屋を開くとします。「みんなが出し合った100万円でパンを仕入れて、これを110万円で売り、儲けを分け合おう」というお店です。

 

その場合、仕入れるパンの種類をだれが決めるのか、儲かった時や損したときにどうするのか、といった決めごとが必要ですが、その際に便利なのが「株式会社」というしくみなのです。

 

皆から1万円ずつ集めてパン屋を開く
100人のサラリーマンが1万円ずつ出し合ってパン屋を開くとします。

皆でお金を出し合うことで、リスクが軽減できるしくみ

株式会社は、会社を作るときに1万円出した人に「株券」を1枚渡します。株券の持ち主を「株主」といいます。株主について、重要なことが3つあります。

 

(1)会社が儲かったら、「一株あたり何円」という計算をして、利益を山分けする。山分けのことを「配当」と呼ぶ。

 

(2)会社が解散するときには、持っているものを全部売って、借金を全部返したあと、残りを「一株あたり何円」という計算をして、株主で山分けする。

 

(3)社長の選挙では、1株あたり1票の投票権がある。

 

上の例では、みんなが1万円出しているので、みんなが平等に分け合いますし、投票権を1票ずつ持っていますが、もし2万円出した人がいれば、1万円出した人の2倍受け取れるし、2票ぶん投票できるわけです。会社を作るときにお金を2倍出したのですから、それは当然なのです。

 

素晴らしいのは、パンが全部売れ残ってカピカピになってしまっても、各自の損は1万円ですむ、ということです。「会社を作るときに1万円出したのに、株主に戻ってくる金はゼロである」、というだけなのですから。それに「1万円のパンを売るためにアルバイトをひとり雇う」といった非効率なことはしなくていいのです。

 

しかも、社長の選挙では、金儲けのうまそうな人に票が集まるから、その人が上手に儲けて、皆に多額の配当が渡ることが期待できるのです。

 

この例のように、パン屋は儲かる可能性を秘めつつも、下手をすれば大きく損をしてしまう可能性もある事業です。そんなときにはみんなでお金を出し合えば、「成功した場合の儲けは少ないけれど、なんといっても大損をするリスクがない」というメリットがあります。

スケールの大きな事業も、株主の力で実現可能に

パン屋よりさらにメリットが大きいのは、たとえば「100万円で宝探しの旅に出る」場合です。

 

「多分失敗するが、成功すれば何億円も儲かる」というとき、ポンと100万円出せる人は少ないでしょう。しかし「1万円なら出してもいい」という人は多いでしょう。そうした人々からお金を集めて宝探しの旅を実現させましょう、というのが、株式会社の醍醐味なのです。

 

「100億円で鉄道の線路を敷いて儲けよう」という場合も、株式会社は便利です。100億円出せる人は滅多にいませんが、「100万人のサラリーマンが1万円ずつ出し合って、株式会社を作る」ということであれば、実現可能だからです。

「会社」は、人間と同じように「契約者」になれる

会社は人間ではありませんが、人間と同じように「契約」をすることができます。銀行に預金したり、銀行から借金したりすることもできます。それは「会社の財産」は「株主の財産」「社長の財産」とは別のもの、という扱いを受けているからです。

 

会社が契約するときには、社長がサインすればいいので、100人全員がサインする必要はありません。それも便利なしくみです。お店を借りるとき、アルバイトを雇うとき、銀行から借金するとき…などに、100人が全員サインするのでは面倒ですから。

 

会社が銀行から借金するとします。そして、私が社長だとしましょう。会社には手も足もありませんから、契約書にサインをするのは社長である私ですが、この場合に気をつけなければいけないのが「社長のサインの仕方」です。

 

ABC銀行様、100万円借りました。
            塚崎公義

 

このように書いて「塚崎」という印を押すと、会社ではなく私が借りたことになってしまいます。そうなると、返済期日に銀行が私のポケットの財布から100万円を受け取ろうとするので、大変困ったことになります。

 

ABC銀行様、100万円借りました。
  塚崎パン株式会社 社長 塚崎公義

 

と書いて、「塚崎パン株式会社の印」という印を押せば、私ではなく会社が借りたことになり、返済期日には銀行が会社の金庫から100万円を受け取ろうとするため、私は安心です。

 

契約書にサインするのは私ですが、私個人が借金をするのか、会社が借金をするのか、借りるときにハッキリさせておかないといけない、ということです。場合によっては、私個人が会社から借金をする場合もあるかもしれません。そんなときは、余計にサインに気をつけなければならないわけです。

 

本稿は、以上です。

 

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塚崎 公義

久留米大学教授

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

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