老後の必要資金は1億円だが…大抵の人は心配無用である理由

まさに現実となった「人生100年時代」。金融庁による年金2000万円問題と相まって、多くの方が自助努力による資産形成の重要性を感じたことでしょう。とはいえ、将来の生活資金不足に恐れおののく必要はありません。対策を怠らなければ、ほとんどの人はつらい老後生活と無縁でいられるのですから。久留米大学の塚崎公義教授による「老後資金を考える」シリーズ、記念すべき第1回目です。

高齢夫婦の年間生活費×32年分=だいたい1億円

日本人の平均寿命は順調に伸び続け、人生100年時代はまさに現実のものとなりました。もちろん、長生きできるのをうれしく思う方も多いと思いますが、同時に、実際の生活を考えたとき、老後資金はいくら必要になるのかは、頭の痛い問題でもあります。

 

世間では「老後資金は1億円必要」という話もまことしやかに語られていますが、現実にはどうなのでしょうか?

 

夫婦二人の毎月の生活費を25万円とすると、1年間で300万円必要です。60歳で定年を迎えるとして、60歳女性の平均余命は29年ですから、医学が進歩することを考え、かつ平均より少しだけ長生きした場合に備えるとして、32年分の生活費を計算すると、9600万円になります。これに、万が一の場合に備えた400万円を加えると、1億円になります。この400万円は、何事もなければ遺産として相続され、葬儀代になると考えましょう。

 

つまり、「老後資金は1億円かかる」というのは、本当です。しかし、普通のサラリーマンは何とかなるので、怯える必要はありません。

 

一体どういうことでしょうか?

 

老後資金の不安は尽きないが…。
老後資金の不安は尽きないが…。

不足分の生活費を「細々と稼ぐ」だけで大丈夫

「老後資金は1億円かかる」というのは、「自分の貯金通帳に1億円入っていることが必要」という意味ではありません。

 

仮にそうならば、高齢者のほとんどは破産しているはずです。いまの高齢者のなかで「現役サラリーマンだった時に1億円の貯金を持っていた」という人はほとんど皆無でしょうから。

 

厚生労働省によると、標準的なサラリーマンと専業主婦という夫婦であれば、65歳になると、年金が月額で約22万円受け取れます。そうなると、不足額は毎月3万円ということになりますから、32年間で1152万円です。葬儀代を加えても1500万円程度でしょう。年金支給額が少しずつ減っていくことを考えて、2000万円としておきましょう。

 

サラリーマンには退職金(あるいは企業年金等)が出る場合が多いでしょうし、少しは遺産も入るかもしれませんから、2000万円という金額は、普通のサラリーマンにとって「何とかなる」数字だといえます。

 

仮に現役時代に貯金がゼロ(住宅ローン残高と金融資産が同額)であったとしても、何とかなりそうですし、現役時代から老後のための蓄えをしている人なら一層安心でしょう。

 

もっとも、60歳で定年を迎えた場合、65歳になるまでは、働いて生活費を捻出する必要があります。定年後再雇用でも転職でも起業でも、細々と生活費を5年間稼げるように頑張りましょう。

 

むずかしいことではありません。高度成長期には55歳で定年になっていたわけですが、平均すれば今の60歳は当時の55歳よりはるかに元気です。しかも、労働力不足ですから、高齢者でも仕事が見つかる可能性は高いでしょう。

「長く働き、できるだけ稼ぐ」「生活を見直す」

いかがでしょうか。「頑張れば何とかなりそうだ」と感じた読者が多いのではないでしょうか。まずは、その安心感が何より重要です。知らなければ不安に怯えるだけですが、「自分がどれくらい頑張れば何とかなりそうか」がわかれば、それだけで不安は相当和らぐはずです。

 

「頑張らなくても何とかなる」と感じた人はいいとして、「頑張れば何とかなる」と考えた人は、頑張りましょう。「どれくらい頑張れば何とかなるのか」という見当がついていると、頑張っているときの安心感が違いますから、目標を立てて頑張りましょう。

 

「長く働いてできるだけ稼ぐ」「生活を見直す」が基本です。「運用で儲けて老後資金の不足を補おう」と考えると、運用に失敗した時の打撃が大きいですから、老後資金の運用は欲張らずに安全運転を心がけましょう。

 

初回は、全体像を大雑把に捉えてみました。個人差も大きいでしょうし、細かい事は端折って書きましたが、何となくのイメージを持っていただけたのであれば、筆者として幸いなことです。細かいことは次回以降の連載で記していきます。原則として毎週土曜日の掲載を予定していますので、御覧いただければ幸いです。

自営業なら「強み」を活かし、自助努力を怠らずに

上記はサラリーマンに関する記載でしたが、自営業者は少し状況が異なります。年金がサラリーマンより少ないのです。夫婦ともに40年間国民年金保険料を払い続けても、老後に受け取れる年金は夫婦合計で月額13万円ですから、サラリーマンより大きく見劣りしていますね。

 

加えて、退職金も企業年金もありませんから、長く働くこと、若い時から老後資金の貯蓄に励むことなどが、サラリーマン以上に必要です。

 

もっとも、自営業者は定年がありませんから、元気な間は長く働くことができます。また、iDeCo(個人型確定拠出年金)の上限金額が大きいなど、税制上の優遇措置も豊富ですから、自助努力を怠らなければ何とかなる場合が多いでしょう。

 

サラリーマンと比べると、自営業者は個人差が大きいですが、どのような方であっても、本シリーズで基本的なことをご理解いただければ、きっと役に立つと思いますので、よろしくお願い致します。

 

 

本稿は、以上です。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義

久留米大学教授

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義氏の「人生100年時代」を生きる資産管理・資産形成術

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧